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第1章
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しおりを挟む子爵家のガーデンパーティーは、瞬く間に人々の話題にのぼることになった。貴族のみならず、平民たちの間でも有名になっていた。
それまでは、センスが悪すぎる貴族として有名だったようだが、庭のセンスとガーデンパーティーのセンスは、ピカイチみたいに言われることになった。まぁ、最初は似たりよったりの反応だった。それが、いい意味で話題にのぼるようになり、あまりにも褒めちぎる面々が増えていくので気になって子爵家の庭師をしているダヴィードにこっそりと庭を見せてもらったりして、本当だと貴族以外にも広がっていくのに大した時間はかからなかった。
子爵夫人は人生で絶賛されることもなければ、人々の話題の中心にいい意味でいたことが、ただの一度もなかったフィオレンティーナの母親は、有頂天になるのも早かった。母だけでなくて、父や双子の妹のチェレスティーナも、親子だとわかるような反応をしていた。
フィオレンティーナだけが、両親や妹と同じ反応はしなかった。フィオレンティーナが庭の世話やガーデンパーティーの準備をしていたが、それを彼女は絶賛してほしかったわけではない。庭の花々を愛でてみんなに愛でてほしい。それで、癒されてほしいと思っているだけで、それだけだった。その温度差が、ガーデンパーティーを開くたび、開いていっていたが母親たちにそれが伝わることはなかった。
フィオレンティーナがそれを1人でやっていることを知らないままなせいで、フィオレンティーナは部屋に閉じこもったまま家族とも顔を滅多に会わせない変わり者と思われたままだった。
フィオレンティーナの母親が次に開催されるガーデンパーティーの話を至るところで聞かれるまでになるのは、すぐのことだった。
「次は、いつガーデンパーティーをやるの?」
「あー、そうね。好評だったから、近々またやろうかなとは思っているけど……」
「そうなの。都合を必ずつけるわ。ぜひ、また誘ってちょうだい」
「そう言ってもらえるのは嬉しいわ。でも、誘ってほしいと言って来ている方々も多いから、前回来られた方は……」
そんな風に言うと何かしらを融通するとか。母に招待してもらうために貢ぎ物をちらつかせるようになっていた。そんなことをする貴族が急に増え出したのだ。
そんなことをされたことのない母は、わかりやすく凄い浮かれまくっていた。そうなるとガーデンパーティーをやらないなんて選択肢は彼女にはなかった。彼女じゃなくても、好評な時はやり続けるのが貴族だった。それを知っている母は、今がその時だとばかりに使用人に言いつけるだけで、彼女が頭を悩ませたのは、誰を呼ぶかのみだった。
使用人は、ガーデンパーティーをやると言う日時と人数をフィオレンティーナに伝えるだけで、再び何も手伝うこともせず、その準備に何かとフィオレンティーナがおわれるようになった。
(年に一度あるかないかのガーデンパーティーだったのに。またやるなんて……)
貴族や平民たちに評判が評判を呼んでいる状態になっていることをフィオレンティーナはよく知らないまま、ガーデンパーティーの準備に奔走することになった。
母の方は、子爵家のガーデンパーティーに呼んでもらおうとする貴族の夫人たちが必死になって母とチェレスティーナに媚を売るように競い合うようになった。特にチェレスティーナは、母よりちゃっかりしているというより、酷いとしか言いようがないことをしていた。図に乗るのが、母親よりも輪をかけて酷かった。
何せ、姉のフィオレンティーナの衣装代やら何やらを使って、買い物をしていたせいで、人の物を取るということに優越感を感じるのを覚えてしまっていたことが影響していたようだが、フィオレンティーナはそんなことを知りもしなかった。
「それ、素敵ね」
「あ、これ?」
「私も、ほしかったけど、売り切れていたのよね」
「っ、あの、よかったら、あげるわ」
チェレスティーナは、同じ年頃の令嬢にそうやって物をもらうようになっていた。本当は、売り切れてなどいないが、嘘ばかり言っては、狙ったものや狙っていなくとも、身につけている物を貰っていた。
「あの、今度のガーデンパーティーにお母様と私を参加させてくれないかしら?」
「ん~、そうね。でも、次のガーデンパーティーはもういっぱいになってるから……」
無理よとそう言いたそうにしながら、チェレスティーナはチラッと視線を別のものに向けた。話している令嬢の身につけている他の物を目ざとく見つけていた。
それは令嬢がチェレスティーナに見つけられたくなくて手で必死に隠していた物だったが、見つかってしまったことで焦っていた。
「あ、これは……」
「それ、これより素敵ね」
「っ、これは、お父様のお土産で……」
ペンダントを見ていることに気づいて、父親が買ってくれたお土産だからと躊躇う素振りを見せると……。
「そうなの。なら、仕方がないわね。今回は、遠慮してちょうだい」
「ま、待って! これもあげるわ! だから、今度のガーデンパーティーと次のガーデンパーティーも、私とお母様を呼んで!」
「……そこまで言うならもらってあげる。お母様には、ちゃんと伝えておくわね」
「えぇ、お願い」
そんな風にして、色んな令嬢から賄賂をもらっていた。それは、チェレスティーナだけでなくて母親も同じだったが、流石につけているものを欲しがることは母親の方はしなかった。
その代わり、身につけている同じ物よりもお値段のするものを貢がせて、ガーデンパーティーに参加できるように取り計らうことをしていた。
そんなことをしてでも、参加したいと思わせる魅力が、あの庭にはあった。その魅力を生み出しているのが、雇った庭師と使用人たちが準備しているお菓子や飲み物だと思ったままで、注目の的になっていることにすっかり浮かれていた。
「本当にいつ見ても素敵ね。一体、どこで庭師を見つけて来たの?」
「ぜひ、家の庭も見てもらいたいものだわ」
ガーデンパーティーが頻繁に開かれるようになり、貴族の間ではすっかり子爵家の庭のことが話題にのぼらない日はなくなった。
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