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第2章
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しおりを挟む(まずい。それが、知れ渡ったら、今度こそ、部屋に閉じ込められるだけじゃ、済まなくなる)
ぎゅっとフィオレンティーナは手を握りしめて眉を顰めた。
妖精たちは、それを見てジェズアルドに物申して騒いでいた。
それだけで、ジェズアルドは察したようだ。
「そうか。あそこの庭師が、あんな見事なのを作れるとは思っていなかったんだ。何度教えても、ヘマばっかりして……こいつより、駄目な奴だったんだよ」
「俺より……それ、相当じゃん」
「悪ぃが、この案を使わせてもらえるか?」
「それは構いません」
「お嬢さんのことは、内緒にしとく。だから、これからもいいアイデアが思いついたら教えてくれねぇか?」
ジェズアルドは、頼むと頭を下げた。フィオレンティーナも、コルラードですら、それに驚いていた。
「っ、いいんですか?」
「あぁ、構わねぇよ。むしろ、こっちから頼む。ここの花たちの良し悪しで、隣国からの留学生の数が変動すんだ。すぐに帰られたら、困るんだ。それで、最近は学園長もピリピリしててよ」
「……」
フィオレンティーナは、そんなことで?という顔をした。
コルラードの顔が、強張っていた。余程なのだろう。
(でも、そんなのもっと前からわかっていたはずなのに。これ以上にしろってこと??)
フィオレンティーナは、素朴なようできちんと手入れが行き届いているのにと不思議に思っていた。
「今年は、お嬢さんの家の庭を見て、留学先の理事長が掛け合ったらしいから、いつもより多く来るんだ。だから、ここをよくしておかねぇと留学期間を短縮して、来たら即帰るなんてことをされれたら困るんだ。俺だけの首ならいい。でも、俺の下で働いてる連中みんなの首も簡単に切られちまう。んなことになったら、他で雇ってもらえるのも難しくなっちまう。留学生をすぐ帰らせたなんて言われりゃ、次の仕事なんて見つかりゃしねぇしな」
「……」
(そんなのあんまりだわ)
フィオレンティーナは、庭師たちが困ると聞いて、俄然やる気になった。
何より、フィオレンティーナは花たちの良し悪しで留学生たちが帰ってしまうことに驚きつつも、せっかく留学して来るなら楽しんでもらいたいと思ってもいた。
(お花が、そんなに好きな人たちってことよね。どんな人たちなんだろ?)
フィオレンティーナは、隣国のことをよく知らなかったため、そんなことを思っていた。勉強に来るのではなくて、花を見に来るようなものだ。
それでも、隣国から留学してほしいのだということまではフィオレンティーナにもわかった。
そこから、フィオレンティーナは親方とコルラードと学園の隅々まで見て回り、あーでないこーでもないとジェズアルドがして来たことなどを聞いた。
その話は、フィオレンティーナにはとても勉強になるもので、メモを取りながら話を熱心に聞いた。それに気を良くしたジェズアルドは、感心していた。
「俺は、それなりに弟子を取って来たが、お嬢さんほど熱心に聞いて来た奴はいなかった」
コルラードだけとなって、そんなことを聞いたのだ。コルラードも、あそこまでなことに驚いてしまった。
「妖精たちが、気に入るわけだ」
ジェズアルドの言葉にコルラードも、同意して頷いた。
そんなことがあって、すぐにフィオレンティーナは図書館で花のことや留学生たちの住む国について調べあげた。
(妖精の血を引く人たち……? この世界に妖精がいるの?!)
そこで、初めてフィオレンティーナは妖精のことを知ることになった。
それこそ、フィオレンティーナに気づいてもらおうと必死になってアピールしている妖精たちが多くいたが、それにフィオレンティーナは気づいていなかっただけで、周りには常に妖精たちがいた。
それもこれも、フィオレンティーナが妖精の血を引く者でないせいに他ならなかったが、妖精の存在に気づいてくれただけでも、妖精たちはお祭り騒ぎだったのを見聞きしたのは、妖精の血を引く者だけだった。
「なんだ?」
「留学生たちが来るらしいから、そのせいで盛り上がってるのかもな」
生徒たちは、妖精たちのお祭り騒ぎを見て、そんなことを思っていた。
「……妖精たちが、すげぇな」
ジェズアルドは、コルラードにそんなことを言った。二人は、何となく何を喜んで騒ぎ立てているかに心当たりはあった。
「あのお嬢さんが、無理しなきゃいいが」
いいアイディアを頼みはしたが、留学生たちが短期間の留学を帰らずに過ごしてくれることになると思っていた。
それ以上のものを作り上げるには、もう日にちがなさすぎると思っていたのだ。
「もっと時間があれば、長期間でも留学していたいものを完成できるんだろうがな」
「……」
ジェズアルドが何を言いたいのかが、コルラードにもわかって切ない顔をしていた。
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