前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら

文字の大きさ
48 / 99
第2章

22

しおりを挟む

そんな留学生たちを学園の生徒たちは、一人でいようとも、三人が揃おうとも、留学生を眺めて固まる者が多かった。

そんな風に見惚れるのは、全員ではない。妖精の血を宿す者以外だとフィオレンティーナだけが、見惚れて固まることはなかった。

ただの人間は耐性がないせいで、そうなりやすいのだが、フィオレンティーナは例外だったようだ。

そんなの慣れっこな留学生たちは熱烈な視線を気にもしていなかった。

3人は、見かけるたびに生き生きとしている妖精たちのことが不思議であり、同時に心が和んだ。

キャトリンヌは、我がことのようににこにこして、あっちにふらふら、こっちふらふらとしているのも、いつものことになっていた。


「今年は、当たりでしたね」
「そうだな」
「理事長が、あれだけ力説していたのですが、正直なところ、期待してなかったんですよね」


留学生たちは、庭でランチをしていた。リュシアンとジョスランは、キャトリンヌに巻き込まれてピクニックをしているところだった。

校内で食事するより、外で花を見ながらの方がいい。この国では、外で食事をしないようだが、3人にとって天気がいい時は、外で食べることは普通なことでしかなかった。


「この花たちを見ていられるなら、向こうで勉強が少しくらい遅れてもいい」
「確かにそうですね」


それにリュシアンの言葉にジョスランは頷きながら、同意した。

キャトリンヌは、にこにことハンカチと花を見ていた。その周りには妖精たちが集まっていた。


「子爵家の庭も期待してたんですけどね」
「庭師が代わったとはいえ、あんな酷いのは初めてだ。近づく前に行く気がなくなった」


キャトリンヌとジョスランは、わざわざ見に行くとなり、リュシアンも期待して出向いたが、あり得ないほど酷かった。それこそ、直に見る前にやめてしまうほどだった。

そんな話をしているとキャトリンヌが、フィオレンティーナを見つけたようだ。


「フィオレンティーナ!」
「?」


ハンカチと花を見ていたキャトリンヌが、駆け出すのにリュシアンは不思議な顔をした。ジョスランは、すぐに婚約者を追いかけることなく、にこにこしたままだった。それも、珍しいことだ。

声をかけられて、呼ばれた令嬢がそちらを見た。

キャトリンヌが、ハンカチを見せていた。それを見て、二人は何やら話をしていた。その周りに妖精が集まっていた。


「誰だ?」
「キャトリンヌが、気に入った方ですよ。子爵家のご令嬢だそうです」
「……人間に見えるが?」
「そうですね。でも、妖精たちは……」


フィオレンティーナの周りには、妖精たちが飛び回っていた。

キャトリンヌも飛び跳ねるほど、フィオレンティーナと話せて喜んでいた。それは、妖精たちと全く同じだった。

そんな光景をトゥスクルム国で見ることになるとはリュシアンは思いもしなかった。


「……好かれてるな」
「えぇ、妖精たちにずいぶんと気に入られているようです。血の一滴も妖精とは無縁なようなのに珍しいですよね」
「……」


キャトリンヌは、フィオレンティーナを引っ張って来ていた。そんな姿も珍しいとばかりにリュシアンは見つめていた。従妹が、そんなことをするのは、よほど懐いた者にしかしない。


「こんにちは」
「こんにちは。フィオレンティーナさん」


キャトリンヌだけでなくて、彼女の婚約者であるジョスランも、フィオレンティーナを気に入っているようだ。それも、珍しいことだった。


「フィオレンティーナさん、こちら、私たちと同じ留学生のリュシアン・ラングラード様です」
「初めまして、フィオレンティーナ・アルタヴィッラです」


リュシアンは、頭を下げただけだった。

妖精の血の一滴も流れていないのにキャトリンヌや妖精が懐いていることが不思議でならなかった。


「フィオレンティーナ、ハンカチ、見せた!」
「この間の色合いも、柔らかで素敵でしたけど、この色合いも可愛らしいですね」
「えへへ」


フィオレンティーナにそう言われたキャトリンヌは、幸せそうにしていた。

ジョスランは、すかさず補足した。


「それ、キャトリンヌが育てた花でキャトリンヌが染めたんですよ」
「え? そうなんですか?!」
「うん! 上手く、できた。珍しい」
「キャトリンヌは、そういうの苦手だからな」
「むぅ~」


リュシアンの珍しいという言葉にキャトリンヌは、ぷくぅ~と頬を膨らませた。

フィオレンティーナは、それを見せてくれたことに喜び、礼をのべていた。

それにキャトリンヌは益々嬉しそうに満面の笑顔になった。そんな笑顔を隣国で見せることにも、リュシアンは驚かずにはいられなかったが、婚約者のジョスランは驚いてはいなかった。

ただ、キャトリンヌが喜んでいるのが嬉しくて仕方がない顔をしていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。

潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様

ともボン
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです 【あらすじ】  カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。  聖女の名前はアメリア・フィンドラル。  国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。 「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」  そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。  婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。  ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。  そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。  これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。  やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。 〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。  一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。  普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。  だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。  カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。  些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

処理中です...