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ルガリスは、ついに男爵令嬢のテマラに手を出し浮気をした。
試験結果が悪すぎて、補習を受けなくては留年するとルガリスのテマラは、同じようなことを先生から言われたことで意気投合して、自分たちのことを妬んでいるんだと言い合い、そこからいい雰囲気になったようだ。

しかも、学園の空き教室で事に及んだらしく、授業が終わって帰ろうとする生徒たちは、2人が離れれば痛む誓約魔法が発動して、ギャーギャーと煩く騒いで、何事かと人だかりが出来た。

するとあられもない格好の2人がいて、生徒も、先生も、信じられない顔をした。


「信じられない!」
「婚約者がいるのに浮気かよ」
「しかも、授業に出もしないで、最低だわ!」


非難轟々だが、痛みで2人はそれどころではない。


「誓約魔法がかかってるから、離れるのは無理ですよ」
「はぁ!? どうにかしろ!」
「女神様が証人になってる魔法です。解呪出来るとしたら、かけた本人のみでしょう」
「なら、すぐに呼べ!」
「女神様を? ここに呼べと?」
「私を誰だと思っているんだ!」
「そうよ! 国王になるのは、彼なのよ! 女神とやらが来るべきよ!」
「は? なれないわよ。王位継承権がないもの」
「「え?」」


そう言うと2人は、ポカンとした。間抜けな顔をした。

それを聞いていた生徒たちも、先生も、何を今更という顔をしていた。


「は? 王太子じゃないの? 第1王子なんでしょ?」
「彼は、妾の子供で、王妃の子供じゃない」
「嘘をつくな! 私に王位継承権がないだと? そんな馬鹿げたことがあるか! 第1王子の私が、そんなわけ……」
「なら、国王に聞いたらいい。浮気した時点で、婚約は破棄されることになってますから、妹にも、私にも関係ないことですけど」


テマラは、何やら考えていたかと思うと今度は、呆れることを言い出した。


「なんだ。じゃあ、いらない」
「は?」
「さっさとこの変な呪い解いてよ」
「誓約魔法よ。だから、解ける人間が居ないって言ってるでしょ」


説明するのも面倒だったので、先生方に見るにたえない格好をしている2人を馬車に乗せて王宮に行かせた。

2人は馬鹿だ。王子は、成人する前に廃嫡となり、せっかくの聖女との婚約をなしにしてしまった。


男爵は娘がしたことに激怒した。彼は熱心な聖女支持者だったようで、聖女に無礼を働いた娘を許せずに勘当して、爵位を返上しようとしたが、ディーテは返上までしなくていいと思いとどまらせた。


平民となった2人は、結婚するほかなかった。女神の誓約魔法を反故に出来る人間などいない。夫婦として、生活しなくてはならないが離れれば痛みが襲う。まともに働くなど無理に等しい。

見かねた親バカの国王が手を貸そうとするとますます痛みが酷くなるようで援助なしで、どうにかするしかなかった。


その後、妹とパニューラは、浮気なんて絶対にしないと言いきる令息たちとそれぞれ婚約した。
あの、女神の誓約魔法のかかった書類にも怯むことなくサインし、それから半年以上経って、結婚の誓約魔法書類にもサインした。

さすがに結婚の方は、少しは躊躇うかと思ったが、それもなかった。


「これで、お互い浮気出来ないから安心出来る」
「え?」
「これがあれば、パニューラは浮気出来ないだろ?」
「する気がないけど?」
「お前は、自分がモテてるの知らないだけだ」


(そっか。どっちにもメリットはあったのね)


誓約魔法付きの婚約と結婚が、人気となった。
ちょっかいをかけた方にも、制裁が加わるようにもなっていて、この国では、浮気率が他と比べて格段に低くなり、おしどり夫婦が多い国として有名になっていく。


魔導師だったパニューラは、転生して女神とタッグを組んで、聖女となった妹を守ることに成功した。
一度の浮気も許すことなく、今度こそ自分自身も幸せになることが出来た。

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