完璧な姉とその親友より劣る私は、出来損ないだと蔑まれた世界に長居し過ぎたようです。運命の人との幸せは、来世に持ち越します

珠宮さくら

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「エウフェシア。教えてくれてもいいでしょ? もう、婚約者にはあなたが選ばれたんだもの」
「……そんなに知りたいの?」
「えぇ、知りたいわ」
「聞かせてちょうだい」


アルテミシアとイオアンナだけでなくて、他の令嬢たちも目を輝かせてエウフェシアを見た。どうして、その話をしてくれないのかと言わんばかりの顔で、エウフェシアが意地悪をしているかのようにされている状況の中で、試練を受けている時は聞き流せていたのが、どうやっていたのだろうかと思えてならなかった。


(何十回と、ううん。何百回と同じことをされても、聞き流せていたのに。今の私には、無理みたい。よく、何もしないままで繰り返せていたものだわ)


自分がしていたことなのに他人がしていたかのようなおかしな感覚がしていて、エウフェシアは自嘲気味に笑いたくなった。

以前の自分が、どんな人だったのかがエウフェシアにはわからなくなっていた。試練を受ける前の自分に戻れるのなら、戻りたいと思うかというとエウフェシアは……。


(あそこまで頑張って、戻りたいなんて答えを持つなんて変よね。……花鶏に会えたのは嬉しいけれど、それ以外は……)


しつこく聞いて来る姉たちにエウフェシアは、我慢することができなくなってサラッと何でもないように答えていた。


「殺されたの」
「え?」
「何度も、何度も、出来損ないだと言われて、婚約者や周りに馬鹿にされてあざ笑われて、それでも耐えて、耐えて、耐え続けた。おかしなことにあそこで死ぬたびにループした。そのたび、誰も味方になってくれない世界で、何度ループし続けているうちに現れたのが、花鶏よ。あそこにいた人たちは、みんな私に殺して捨てて来いって言った。それを拒んだら、また殺された。最後に私を殺したのは、お姉様だった」
「っ、」
「それとここにいる人たちが、私を押さえつけて動けないようにした。イオアンナ様は、見ているだけで助けてくれようとしなかった。そんな時でも、私は助けを求めなかった。私のことより、花鶏のことが心配でならなかった」


そんな話をしたせいで、お茶会は静まり返っていた。


(まぁ、そうなるわよね)


エウフェシアは、顔色悪くなる面々を見渡した。そんな話をされるとは誰一人として思わなかったのだろう。


「逆に聞きたいのですが、皆さんはどんな試練を受けられたの?」


純粋にそれが気になった。エウフェシアは出たくとも出れなかったのだ。


(さっさと戻って来た方法を知りたいわ。戻って来れたからよかったけれど、鳥が出て来なければ私は終わりがわからなかった。あんな世界、もう二度と閉じ込められたくない)


するとこの場の雰囲気の悪さにいたたまれなくなったのか、1人、また1人と話し始めたのは、当たり障りのないことだった。


「どんなって、普通に生活していただけよ」
「そ、そうよ。王太子と婚約して、それなりに頑張っていたわ」
「そうそう。頑張っているのに出来損ないだと周りに散々言われるのよね」
「あれは、酷かったわよね」
「……」


(そこは、同じなんだ)


エウフェシアは、そんなことを思うだけだった。あまり参考にならないことにつまらなそうな顔をしていた。

そんなことを言った令嬢たちは、ちらっとアルテミシアとイオアンナを見たことには気づかなかった。彼女たちの試練の世界では、2人に勝てないと思わせられるようなことを言われていたようだ。

アルテミシアとイオアンナは、お互いにはぐらかしたことを言って差し障りのないしか、口にしていないようにエウフェシアには見えた。

この中でずば抜けて優れていると評判だったのは、アルテミシアとイオアンナだったはずだ。そんな2人が、エウフェシアたちのように同じような対応をしたとは考えにくいところがあった。


(出来損ないと言われて、どう反応するかもポイントだったのかもしれないわね。お姉様たちは、言われ慣れていなかった言葉なはずだけど……)


「でも、アルテミシア様が一番早く目覚めたとお聞きしましたわ」
「あら、私はイオアンナ様が一番だとお聞きしましたわ」
「「……」」


どちらも、出来損ないと言われて頭にきてしまったようだ。言った人たちに仕返しまでして、二度とそんなことを言い出さないようにしたところまて追い詰めて、何食わぬ顔で婚約者の横に立っていた間に目が覚めたことが真相だったが、それを2人が話すことはなかった。

雰囲気的にそんな話をしたら、この中でもっとも相応しくないと言っているようなものと思ったようだ。


「私も、皆さん同じよ」
「私も、そうだったわ」


アルテミシアとイオアンナは、自分たちが何をしたかを話す気はないとわかって、何とも言えない空気のままになった。

そもそも、エウフェシアが受けていた壮絶な試験の内容に狡いなんて言える者は、その場にはいなかった。

でも、声にしないだけでしかないことにこの時のエウフェシアは気づいていなかった。

試練の場となっている世界が歪んでしまっていた理由が、ここにいる人たち全てに関係していることに誰も気づいてはいなかった。

それどころか。この話をしたことがまずかったことを思い知ることになるとは、この時のエウフェシアは思いもしなかった。


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