見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら

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(キルペルク視点)


「は? あいつと婚約した?」
「シャルレーヌたっての希望だ」
「っ、」


国王の言葉に眉を顰めずにはいられなかった。オーギュストのやることなすことが気に入らなくて仕方がなかった。

双子の片割れが、あいつといると楽しそうにしているのを見るのがとにかく気に入らなかった。

引きこもっていたシャルレーヌを外に出したのは、私だ。

ずっと気にかけて来たのも、私だ。

双子の片割れで、何よりシャルレーヌを一番理解できておるのも、私だ。

なのに留学して戻って来るなり、あんなのに好かれて迷惑していると思っていたのに。婚約させるなんて、どうかしていると思えばたっての希望と言われて、わけがわからなくなった。


「シャルレーヌが……?」
「なんだ?」
「シャルレーヌに相応しい子息なら、他にもいます。あんなのを選ぶことは……」


絶対に絆されたのか。面倒くさくなったに違いない。

あいつは、そう言う王女だ。母と同じく、引きこもれるなら、引きこもりたいはずだ。


「聞いていなかったのか? シャルレーヌのたっての希望だ。このことは、王妃も承諾している。それより、自分のことをどうにかしろ」
「っ、」


父上は、まるでわかっていない。母上も、そうだ。シャルレーヌの双子の片割れは、私だ。私が一番、片割れのことをわかっている。

そう思って、今まで以上に邪魔をした。シャルレーヌは、私がアンリエットを選んで失敗した時のようなことになるに決まっているのをわかっていないのだ。

好きでもないのと婚約するとろくでもないこてになるだけなのだ。


「王太子殿下」
「シャルレーヌ。仰々しい呼び方はやめろ」
「いいえ。今後は、そう呼びます。王太子殿下、私の心配は無用です。私には頼り甲斐のある婚約者がいますから」
「だが」
「周りをよく見てください。執務を側近にやらせて、私の行く先々に着いて回っているのが、王太子殿下の仕事ではないはずです」
「っ、」

 
そこで、ハッとした。周りは何とも言えない目と顔をして私のことを見ていた。ひそひそと話すと言葉には棘しかなかった。

側近たちも、最近見かけないが、私がやるべきことを色々としてくれているようだ。それが側近の仕事だと思っていたが……。


「っ、」


これでは、シャルレーヌが姉のようではないか。急に恥ずかしくなってしまった。私は、妹離れできなかったようだ。


「本当に見た目だけね」
「あの方の方が弟みたいね」
「弟よりも質が悪いわ」
「この国の王太子があれでは……」


令嬢たちは、そんなことを言っていた。中には……。


「側近をしている婚約者が、王太子の代わりに色々していて、ちっとも一緒にいられないのよね」
「休み時間も、放課後も返上して忙しくしているのに。やるべき人が、シスコンをこじらせているだけっていうのが見ていられないわ」


これまで、シャルレーヌのことばかりを追いかけ回していた。その間に私の評価は、そこまでになっていたようだ。


「それにしても、王太子殿下やシャルレーヌ様以外の王子や王女が、一層されたのも、王太子殿下がしたみたいよね」
「シャルレーヌ様がしたにしては、酷すぎるものね」
「えぇ、酷すぎるわ。あの美しいお顔をわざわざ叩かれたりするのは、おかしすぎるもの」
「あんまりよね」
「そんな風に弟妹たちを切り捨てたのに。幸せになろうとする妹の邪魔をするなんて、最低な方よね」


シャルレーヌがしたことが、いつの間にか私がしたことのようになっていた。

それに今更、否定しても遅すぎると思って頭を抱えたくなってしまった。


「とりあえず、側近たちに謝ってから執務をこなすか」


そこから、婚約者を探さなくてはならないと思うと憂鬱でしかたなかった。

もう、シャルレーヌに“兄”とも名前を呼ばれることはなさそうな気がして、それが一番堪えてしまっていた。

シャルレーヌは、引きこもりに戻る気がないのも、やっとわかった。何もわかっていなかったのは、私の方なのだと。

母にそっくりな得体のしれないというか。底の見えないシャルレーヌに何とも言えない感情が残ったが、深く考えないようにした。


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