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しおりを挟む結局、姉さんは家出したまま、どこに行ったかわからなかったが、パパたちは一応探すふりはしていたようだ。
見つからないことにホッとしているようですらあったが、パパが新しい奥さんと息子に愛想をつかされるまで大して時間はかからなかった。
ママが再婚して幸せにしているのが、どうにも気になって仕方がなかったようだ。
そんなことを気にしてイライラしてばかりいれば、姉さんがいなくなっても新しい家族と幸せになれるはずもないと思うが、そもそもママと同じようにあちらの祖父母の教育方針に何かと言われていたのも、のらりくらりとかわしていて、改善しようとしなかったことも致命的になったようだ。
私としては、腹違いの弟がどんな子かと気にはなったが、会いに行くことはなかった。それこそ、あの祖父母が姉の時のように甘やかしていたら、姉のようにわがまま放題に育っているに違いないと思ってしまったのだ。
決めつけはよくないが、あちらの祖父母やパパは、子育てには向いていないと思う。
でも、腹違いの弟くんはパパたちには似なかったようで、私が大学生になった頃にママ経由で手紙がきて、そこから古風な文通を始めることになった。
子供特有の文字と共にその子の母親の手紙も添えられていた。それと写真も。
「この子が、腹違いの私の弟なんだ」
その写真に姉の面影はなかった。どちらかと言えば、自分に似ているようにしか見えないこともあり、文通することにしたのだ。まだ、あちらがスマホを持っていないこともあり、古風なことをすることになったのだ。
文通をしながら、年に一度会うようになったのは、私が大学生になって一人暮らしをするようになってからだった。
弟くんの誕生日にプレゼントを持って行くのだ。そのサプライズに物凄く喜んでくれて、そのはしゃぎように彼の母親も嬉しそうにしていた。
「本当の姉弟みたいね」
「そう見えますか?」
「えぇ、見えるわ。今日は、ありがとう。あんなに喜んでるのを初めて見たわ」
どうやら、父方の祖父母の甘やかしやパパの我かんせずな感じで拒否していたが、姉さんが母親に意地悪いことばかりするのに姉という存在にすら絶望していたようだ。
無理はないな。姉さんも、パパたちも、酷いから。その上、母親を蔑ろにされたら、おかしくならない方がおかしいもの。
双子のもう一人のお姉さんを、そんなことないと思わせたのは、この母親のようだ。ママが子供たちは、腹違いでも姉弟なのに変わりはないからと会いたいようなら、連絡取ると伝えていたようだ。
それによって、私は双子の片割れに夢も希望も持てなかったが、弟くんには無償の愛を注ぐことになった。
そんな私は今日も片思いを続けている。
「よぉ! 馬子にも衣装だな」
「……それ、褒め言葉じゃないわよ」
成人式で再会することになった第一声が、それだった。
龍介は、益々格好よくなっていて、内心でびっくりしていたが、顔には出ていないようだ。
「おねえちゃん!!」
「え?」
「おめでとうございます! いつも、きれいだけど、今日はとっても、きれいです!!」
「ありがとう。わざわざ来てくれたの?」
「はい!」
「……誰?」
「腹違いの弟」
「だれですか?」
「幼なじみ」
バチバチと見つめ合っている2人をよそに私は、キョロキョロした。すると少し離れたところで、パパの再婚相手だった人が立っていた。
「おねえちゃん、これ」
「私に?」
「はい。ぼくが、えらびました」
「ありがとう。凄く嬉しい」
「えへへ」
ミニブーケをもらって、私は笑顔になって弟くんを抱きしめていた。
なんて、可愛いの! 姉さんは、この子と暮らしてたんだよね? ずるいな~。
そんなことを思っていたが、弟くんと龍介が睨み合っていることには全く気づいていなかった。
龍介の方も、同じように片思いを拗らせていることに私は気づくことはなく、腹違いの弟くんの登場で、ちょっとづつ私たちの関係が変化していくとは思いもしなかった。
片思いに未練があるのは、私だけになりそうだが、ここからこの2人が競い合うようになる原因が、私にあることを知りもしないまま、人生初の異性からのミニブーケに笑顔が溢れたのは言うまでもない。
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