親しい友達が、みんな幼なじみみたいな厄介さをしっかり持っていたようです。私の安らげる場所は、あの方の側しかなくなりました

珠宮さくら

文字の大きさ
11 / 16

11


ラジェスが婚約した令嬢の祖国ではなく、別の国にヴィリディアンは留学していた。

色々ありすぎて、ヴィリディアンは人間不信気味になっていた。無理もないが、王太子のことを友達にもヴィリディアンはできなかったし、養父母にも、義兄にもできなかった。

みんな、病弱だったのが治ったと思っていて、ヴィリディアンが知ってしまったことを話しても、すぐに信じる人はいなかったのだ。

それに友達が、王太子と婚約したのに水をさせるわけがなかった。

……それを見越して、王太子がヴィリディアンの友達を選んだのではないかとすら思っている。


「ヴィリディアン様、ご一緒にお茶でもどうですか?」
「いえ、私……」


暗い顔をしているのか。留学してから、色んな人たちに声をかけられていた。

養子とは言え、ハーサン公爵家の令嬢とお近づきになりたいのもいるようだが、気にかけてくれている令嬢の誘いを断るのは大変だった。


「王女殿下が、ご気分がいいとおっしゃっているんです。あなたのことも、気にしておられたから、ぜひ紹介させてほしいの」
「王女殿下が?」


最近、婚約者を事故で突然亡くした王女は、部屋に閉じこもっていた。

幼なじみ同士で、相思相愛だったらしい。

そんな王女が、色々あったヴィリディアンのことを耳にしたようだ。確かに数カ月の間に目まぐるしいことがあった。でも、誰も死んではいない。

ヴィリディアンの心が壊れそうになっているだけだ。

そんな状態で、ヴィリディアンは王女に会った。お互い、壊れそうなことが手に取るようにわかった。

お互いに何があったのかをざっくり話すはずが、いつの間にか全部をさらけ出していた。

2人っきりで、お茶をしながら話すまでになるのは、すぐだった。


「ヴィシャ国の王太子って、病弱って聞いていたけど、最低すぎるわ。それにその弟も、2人して、ヴィリディアンを何だと思っているのかしら」


プンプンと王女は怒っていた。

幼なじみや男爵令嬢だったのやら、実家の跡継ぎになった子息のことやら、王女は自分のことのように怒っていた。

ヴィリディアンは、そこまで怒ってくれたのは初めてだなと見ていた。

逆に王女の話す亡き婚約者の話にヴィリディアンは、号泣した。


「ヴィリディアン。そんなに泣かないで」
「ううっ」


泣きすぎて、王女に慰められてしまったほどだ。あんなに泣いたことはない。

そこに王太子が、妹を心配して現れたのだが……。


「ど、どうした?」
「お兄様! ヴィリディアンが、泣きやんでくれないの」
「お前まで、つられて泣くな」
「……何をしているの?」
「は、母上。それが……」
「可哀想に王太子にいじめられたの?」
「なっ、」


違うんだとわたわたする王太子を面白がる王妃と王女と色んなことにびっくりして、泣きやんだヴィリディアンがいた。


「っ、あ、こ、これを」


泣きやんだヴィリディアンに王太子はハンカチを押し付けるように渡してきた。

これが、留学先で出会った王太子との初対面だった。


あなたにおすすめの小説

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

わたくしの婚約者が病弱な幼馴染に縋り付かれた…あれ?

ぼん@ぼおやっじ
恋愛
ある日私の婚約者に幼馴染から連絡が来ました。 病気にかかって心細いから会いたいというのです。 これって最近聞いた… 私たち死一体どうなってしまうのでしょう…

婚約破棄された悪役令嬢ですが、面倒なので全部放置します

かきんとう
恋愛
 王都の大広間に、どよめきが広がった。  天井から吊るされた巨大なシャンデリアが、何百もの蝋燭の光を反射し、きらきらと輝いている。その光の中心に立つ私は、妙に他人事のような気分で、その場の空気を眺めていた。 「エレノア・フォン・リーベルト! 私は貴様との婚約をここに破棄する!」  高らかに宣言したのは、第一王子であり私の婚約者でもあったアルベルト殿下だった。  周囲の貴族たちが一斉に息を呑み、次の瞬間には小声のざわめきが連鎖のように広がっていく。  ――ああ、ついに来たのね。

嘘からこうして婚約破棄は成された

桜梅花 空木
恋愛
自分だったらこうするなぁと。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

必要とされなくても、私はここにいます

あう
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスのもとへ嫁ぐことになったフィレ・バーナード。 けれど彼女は、理想の妻になろうとも、誰かの上に立とうともしなかった。 口出ししない。 判断を奪わない。 必要以上に関わらない。 ただ静かに、そこにいるだけ。 そんな彼女の在り方は、少しずつ屋敷の空気を変えていく。 張りつめていた人々の距離はやわらぎ、日々の営みは穏やかに整いはじめる。 何かを勝ち取る物語ではない。 誰かを打ち負かす物語でもない。 それでも確かに、彼女がいることで守られていくものがある。 これは、 声高に愛を叫ばなくても伝わる想いと、 何も奪わないからこそ育っていく信頼を描く、 静かでやさしい結婚生活の物語。

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。