私だけの王子様を待ち望んでいるのですが、問題だらけで困っています

珠宮さくら

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「ルシア、どうした? 驚いたのか? 何だか顔色が、悪いようだが……」
「あら、本当だわ。大丈夫?」
「……」


両親だけでなくて、使用人たちもルシアを心配したのはすぐだった。

ソフィアは、ルシアの世話係を任せられているのにハッとした顔をして、ルシアを見た。気を取られ過ぎていて、ルシアのことをよく見ていなかったのだ。

両親は、そんなことを言いながらも、内心では驚かないわけがないと思っていた。泣き出さなかっただけは良かったと思うべきか。顔色の悪くなっている娘に無理に会わせたことを後悔し始めていた。

こんなことなら、ルシアを会わせるのは日を改めるるべきだったと両親は思い始めてもいた。ただ、今日だけでも会わせておけば、今後はそんなにわざわざ会わせようとしなくともいいかと思ってのことだっただけなのだが、両親が先にどんな子息なのかを見極めてからでもよかったようだ。

バレリア同様にこの時期まで婚約者の一人もいなかったような子息だ。一度は婚約して、破棄や解消になったわけではないのだ。それには、それなりの理由があることを両親はバレリアのことで嫌というほどに身をもって知っていたというのに。ついにバレリアの婚約者が見つかって、安堵したことも大きかったようだ。

何より、ルシアは人見知りもしたこともないせいで、普通に挨拶をして、サラッと顔合わせは終わるものと思っていたのだ。そんな簡単に思っていたことに配慮がなかったなと両親は、どちらも反省し始めてもいた。

ルシアならば大丈夫だと勝手に思い込んでしまったことで、こんなことになったのだ。落ち込まないわけがない。

そんな両親の心の葛藤など聞こえるわけもなく、ましてや心情を察することも、今のルシアにはできていなかった。そんな余裕、ルシアにはなかったのだ。


「おへやに、もどりたい」


ぽつりとそんなことを言うルシアにムッとした声を出したのは、バレリアだった。


「ルシア。せっかく、バルトロメ様が来てくれたのよ。そんなこと言うなんて……」
「まぁまぁ、相手は子供じゃないか。具合が悪いと言うなら、そうなんだろ。ゆっくり休んでくれればいいさ」
「……」


バレリアは、そんな妹に不満そうな顔をしていたが、婚約者の言葉にそれもそうかと思ったようだ。

バルトロメも、本当に具合が悪いとは思ってはいなさそうだが、子供だから仕方がないと無礼な態度も許すとばかりにルシアにそう言っているようだ。ルシアへの仕草は、姉と弟がいるとは思えないものだった。まるで、犬猫を追い出すかのようにしたのだ。

その態度から、7歳児のわがままに付き合ってられないから好きにすればいいと言うことのようだ。

そんなあからさまな二人に信じられない顔をする者や嫌そうにする者もいたが、両親はそれどころではなかった。

バルトロメへのイラつきも増す一方だが、そんなことよりも末娘のことだ。ルシアのことを心から心配していたが、そんなことをバルトロメが配慮することはなかったのだ。実の妹のことも、バレリアは気遣うこともしないのだ。……まぁ、それはいつものことで、そこは期待しすぎても無駄かも知れないが。

ルシアの心配をする両親にお土産を持って来たと言い、バルトロメは渡し始めたのだ。渡す前ですら、きっちりとバルトロメは自己紹介をする気がないようだ。いくら、彼が格上の家の子息だからといって、馬鹿にし過ぎでいるのだが、そもそも名乗る気はないように思えてならなかった。自分を知らない者なんていないとでも思っているのかも知れない。

だが、知っていようと知らなかろうとも、面と向かって初めて会うのだから、自己紹介は必要だと思うが、バルトロメはそう思う子息ではないようだ。

それこそ、これまでの態度や言動からもよくわかることだが、この子息にこれまで婚約者がいない理由がこの短時間にも凝縮されていた。こんなに凝縮されていたが、それがまだ僅かな気がしてならない。

バレリアと同じく、卒業が間近に迫っているというのに未だに婚約者がいなかったのも、このせいだろうと思うような子息で、つい最近になってようやくバレリアの婚約者となった人物だ。あちらの親も、やっと息子の婚約者が決まってバレリアの両親のように安堵していることだろう。

姉妹の両親がやっと婚約者を見つけられたと肩の荷を下ろせると思っていたが、婚約者となった子息を間のあまりににして、それはまだまだ早かったようだと思い始めて、これが不安の始まのようになっていた。

だが、姉とその婚約者のことで、そんなことになっていることを全く知らなかったルシアは、頭の中で色んな記憶がぐるぐると回っているのが、止まる気配がなかった。

自分に今、話しかけてくれている人たちが両親なのはわかる。でも、記憶の中に別の両親の顔がチラついて、別の名前でルシアのことを呼ぶのだ。

目の前にいる両親にルシアと呼ばれるのも嬉しいが、その記憶の中で別の名前を呼ばれても嬉しいのだ。

それが、続いているせいでルシアは、混乱していた。おかしなことになっていることを誰にも説明できずにいたのは、ルシアが今の状況を誰かに説明してほしくて仕方がなかったからだ。


(あたま、いたい)


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