私だけの王子様を待ち望んでいるのですが、問題だらけで困っています

珠宮さくら

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バレリアもバルトロメと似たりよったりなため、両親は相手の両親とお互い様だとやり過ごすしかないと思っていた。どちらにも、欠点と欠陥が、人として振り切れてしまっているのだ。どこかにいいところが辛うじてあればいいが、自分の娘にはその辛うじての部分すら両親は見つけられずにいるのだ。

そんな娘と婚約することになったのだから、子息の方になんの欠点や今まで婚約者が一人もいたことがない理由があるに決まっているのだ。

それが、思っていたよりも深刻で酷いなんてものではなかったとしても、婚約した者同士はそれで不満があるわけではないのだから、それはそれだ。

そんな問題ばかりを起こす二人よりも、ルシアが心配でならなかったのだが、それこそ、このタイミングで?と思っている者しかいなかった。バルトロメがお土産を渡そうとしてきたのだ。それにバレリアだけが大いに喜んではしゃいでいた。


「わぁ! ありがとうございます!」


本当によく似ているようだ。今の状況で喜べるのは、バレリアくらいしかいないだろう。他はみんな、そんな二人にイラッとしていた。


「……これは、ご丁寧に」
「わざわざ、ありがとうございます」
「いや、気にしないでください。たまたま、取り寄せたもので……」
「「……」」


そこから、手土産のうんちくを話し始めたバルトロメに
ルシアが部屋に行くのに付き添おうとする母は、メイドに目配せしてルシアを連れて行くように頼んだのも、すぐだった。

本当なら、母が付き添いたかっただろうが、バレリアの婚約者がこの家より格上なこともあり、下手なことができないと思ってのことだった。バルトロメは、公爵家なのだ。それをルシア以外は知ってはいたが、どうにもそうは見えない子息だった。

仕方がないと部屋に父親の方が案内を始めて移動することにしたようだ。それこそ、玄関先で自己紹介もせずに婚約者の妹が具合悪いのも本気にせずに手土産を渡して、聞いてもいないのに自慢を始めたのだから、怒る気力もなくなって、呆れるしかなかった。

ルシアの世話をよく見ているメイドのソフィアは、すぐに理解して頷くと心配そうにルシアに声をかけてきた。


「大丈夫ですか?」
「……」


ルシアは、気持ち悪くて返事はできなかった。それでも、部屋に戻ろうとよろよろとしながらも、ゆっくりと自力で歩いていたのだが……。


「ちょっと、手伝ってちょうだい」


姉が、珍しくソフィアを呼び止めて、ルシアに一人で部屋に行くように言ったのは、すぐだった。

そんなことをソフィアにわざわざ頼まなくとも、他にも使用人がいるというのにバレリアはわざと呼び止めたのだ。


「全く嫌になるわ。バルトロメ様が、初めて我が家に来てくれたっていうのに。気分を害したら、どうしてくれるのよ」
「……」


ルシアは、そんな嫌味に何も言えなかった。顔色は更に悪化していく一方となっていたのだ。その間も、頭痛がして、自分と別の誰かの記憶がいりまじっていて、それをどうにかするのに寝たら治る気がしたのだ。何の根拠もないのだが、寝たら今よりよくなると思えて、それを実行したかったのだ。

それを見かねたソフィアは……。


「バレリア様。あとでお手伝いします。まずは奥様に頼まれたので、ルシア様を部屋までお連れします」
「いいわよ。そんなことしなくても。どうせ、仮病だもの」
「私は医者ではありませんので、そこは何とも。現に顔色が悪いんですから、診察してもらっておいた方がいいかと……」
「煩いわよ。メイドの分際で、偉そうにしないで。さっさと私が頼んだことをして」
「……」


そんなやり取りがなされる間にルシアは、のろのろと階段を一人で必死になって上がっていた。一刻も早く部屋で休みたかったのだ。


(おへや、ねたら、げんきになれる。おとうさまとおかあさまと、……パパとママ。どうして、そんなことを覚えてるんだろ?)


そんなことを思って、ゆっくりとだが動いていた。だが、段々と意識が保てなくなってきていた。記憶が別の誰かのものとまじってしまって、走馬灯のようになっていた。

そのせいで、頭痛が酷くなっていくばかりとなっていた。ルシアの頭の中は自分ともう一人の記憶でいっぱいいっぱいになりすぎていて、限界が近づいていて、ルシアの意識が遠のき始めていた。


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