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すると母親がやはり気になって仕方がなかったのか。それとも、バレリアが戻って来ないのを気にしたのかも知れないが、部屋から出て来たのは、それから間もないことだった。
まぁ、バルトロメを相手にするのに腹が立ってしまい、落ち着くために出て来たのもあるかも知れないが。ただですら、末娘のことが気になって仕方がない時に相手にしたくない分類なのは間違いないだろう。
彼女の夫も末娘を気にしていて、妻に見に行かせつつ、バレリアのやっとできた婚約者の相手をしていたが、内心ではイライラしっぱなしだったことは、その場にいなくとも大人たちはわかりきったことだった。
ルシアたちの母親は、バルトロメの相手をするために部屋に入ったが、前よりぐったりしているように見えた。だが、ソフィアを見つけて、すぐに近づいて来た。それだけ、末娘のことが気がかりだったのだろう。
その時は、バレリアが側にいることに母親は気づいていなかったことで、ソフィアが指示待ちをしているのかと思ったようだ。
「あら、ルシアを部屋まで連れて行ってくれたのではないの? 付き添ってくれていていいのよ? 何なら、すぐにでもお医者様を手配して診てもらって、ずっと付き添っていてちょうだい」
具合があまりにもよくないからと戻って来て医者を呼んだら、どうかと言いに来たと思ったようだ。
だが、そもそも部屋にまでたどり着いてすらいないとは思いもしなかったようだ。まぁ、普通の感覚なら、こんなところでわざわざソフィアを呼び止めたりはしないものだが、そもそも普通ではない人間が、ここにもいたのだ。
しかも、残念ながら身内にバルトロメのようなのがいて、昔から頭を悩ませないことはないような残念すぎるのがいるのだ。
「必要ないわ。どうせ、仮病よ。彼女には、バルトロメ様に頂いたお茶を淹れさせるわ」
「バレリア。そんなこと急がなくてもいいでしょ。それに仮病だなんて、ルシアはそんなことする子じゃないわ。ルシア!?」
母親が声を荒らげたのは、その時だった。彼女の視線の先には、ルシアがいた。
それに気づいて、そちらをすぐさま見たのはソフィアだった。
「っ!?」
母親の視線の先にいたのは、ふらついたルシアが手摺に掴まりそこねて、落ちて来るのが見えたところだった。
ソフィアは、それに気づいて駆け寄ろうとしていたが、間に合うような距離ではなかった。ルシアの世話係を任されているのも、お転婆な娘のやんちゃにすぐさま反応できる運動神経がソフィアにはあったからだ。
他の使用人たちよりも、ルシアと同じことをしても、怪我をしたこともないのだ。
だが、そんなソフィアでも瞬間移動は無理だったのだ。バレリアの相手をしていたことに気を取られて、こんなに距離が開いていることに気付けていなかったのだ。
「ルシア様!!」
「おい、どうした? ルシア?!」
そこに声を聞きつけて父親や他の使用人たちがやって来て、ルシアが階段を転げ落ちて来るのを見ているしかできなかったのだ。
悲鳴があちらこちらから響いた。
ルシアは頭痛がしていたが、更に別のところも痛くなって、泣きたいのに声も出なかった。
(ぜんしんがいたい。あのときみたい。……あれ? あの、とき……??)
ルシアの意識は、そこからぷつりと途切れることになった。
ルシアの思ったあの時がいつなのかを気にしている余裕はなかった。
ただ、意識を失ったことで痛みから解放されることになったが、ぐったりとするルシアを見て気が気でなくなる者が増えることになるのも、すぐだった。
そんな中で、のんびりとバルトロメは部屋から騒がしいなと出て来て、自分の自慢話が途中になっていることに不満げな顔をしていることに誰も気づいていなかった、
彼は、婚約者の家に顔合わせに来たというよりは、日頃は誰も自分のことを聞いてもくれないことの鬱憤を晴らすべく、自慢話を語りつくそうとして来ていたのだ。
もっとも、そんな自慢話の内容は自分のことではない。お土産の質や着てる服の良さや装飾品の素晴らしさ。こだわりの髪型などだった。
そんなことしか、彼に自慢できることはないのだが、それでも滅多にない自慢の機会を奪われることになったことにムスッとしていた。
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