私だけの王子様を待ち望んでいるのですが、問題だらけで困っています

珠宮さくら

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学園でのことは、ルシアは全く知らなかった。そこを知っていたら、嫌なことしかない毎日だと思う反面、そこを好きになるために姉がなぜ、何もしないままなのかとルシアは不思議がっていただろう。

つまり、7歳でも、とりあえずは頑張ろうとするところなのにバレリアは、そういうことを頑張ろうとは決してしなかったのだ。

彼女のやることなすことといったら、人と違いすぎていたのだ。それこそ、なぜ、そっちを頑張るんだろうかと思うことをやるのだ。

それこそ、無駄な努力でしかないのだが、彼女がそれに気づくことはなかったのだ。

学園で、その日もバレリアが話題にのぼっていた。とある令嬢たちが、こんな会話をしていた。


「今回も、ここに名前がないわね」
「載るわけないわよ。どうせ、今回も最下位は彼女だもの」


バレリアが通っている学園で成績の良い者たちの名前が掲示されるが、バレリアはそこに載ったことは一度としてなかった。


「それもそうね」
「それにしたも、毎回よくもまぁ最下位なんて成績を取れるわよね」
「私なら、恥ずかしくて死ぬ気で勉強するけど」
「私もよ」


そんな風に話していた。そんなことをよく言われるようになったのも、彼女の弟が大きく関係していた。

アドルフィトは留学しているが、この学園に通うには年齢を満たしていなかったが、隣国を真似して家庭教師の推薦を得られれば、受験することが許されるようになっていた。合格すれば通えることにはなっているが、その当時の担当者や学園長が、年齢からしても合格するわけがないと思ったようで、時間の無駄でしかないとして受験すらさせようとしなかったのだ。

そのため、アドルフィトはその学園ではなくて、隣国の学園の方を受けることにしたのだ。

そちらは受け入れる年齢よりも幼かろうとも、受験したい者は受けられるようになっていて、毎年アドルフィト以外にも、色んな国からそこを受ける者がいたのは、合格さえすれば寮生活で過ごせて、最高の環境で勉強ができるからに他ならなかった。

優秀な先生たちが、そこに揃っているのも、受験を年齢の枠で捉えないからだった。

それでも、アドルフィトは突然の隣国へ行っての受験だというのにそんなこと微塵も感じさせないほどの成績で見事合格してみせたのだ。しかも、その年の一番で入ったのだから、驚くことばかりだった。

クラベル国から入学する年齢では最年少となって、その時は留学ではなかったこともあり、隣国で目立つことになったのだ。

それに焦ったのは、アドルフィトたちがいる国の学園の関係者だ。そんな逸材だと知らずに受験したいと言ったのに受けさせもせずに袖にしてしまったのだ。

学園長は、アドルフィトを自分の学園の生徒として、あちらに留学させるというていを取ることにしたのだ。そうでなければ、クラベル国から初めて最年少で入学したと騒がれることになってしまい、せっかくの素晴らしい人材がこの国にもいるのだとひけらかすことができなくなってしまう。それこそ、自慢できることであり、来年以降も留学したがる生徒が増えるかも知れないのだ。

アドルフィトと両親は必死に頭を下げて、頼み込む学園長や先生やら嫌味なことしか言わなかった受験を担当していた者に呆れた顔をしたが、アドルフィトは……。


「留学生扱いで、特別な補助金がでるなら考えなくもないです」


そんなことを言い、学園から出るお金で留学することになったのだ。

その際の交渉ごとに両親は、特に参加してはいなかった。息子が、見事な手腕を披露したことで、トントン拍子に和解することになったのだ。

そもそも、和解というのは違っていたかも知れない。アドルフィトが、クラベル国で早期の受験をさせてもらえないことに何ら怒っているようには見えなかったのだ。何を言っても受けさせる気がない大人に呆れた顔すらしていたが。粘って受験させてくれと言うこともなかったのだ。

そんな息子が、すぐさま隣国で行われる早期の受験を受けてみたいと言うのには、物凄く驚かされた。アドルフィトはギリギリになって受験を受けることになってしまっても、特に緊張しているようには見えなかった。

そんなアドルフィトが、ケロッとした顔で、学園の関係者に頭を下げられながら、頭の中でお金を出してもらおうとしていたのかと思うと末恐ろしいものを感じずにはいられなかった。


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