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しおりを挟む学園では、何かとバレリアは弟と比べられ続ける日々を送ることになった。
留学生となっても、特例の扱いとなっているため一度も、その学園には通ってはいない状態だったというのに思いの外、目立つことになったのはアドルフィトのせいではない。
彼が吹聴して回ったわけでもなければ、ましてや両親が、息子の偉業に浮かれて周りに話をしたわけでもない。更には、姉がそんな弟を自慢に思って話したわけでもなかった。バレリアがアドルフィトのことを自慢しようなどとすることは一度としてなかったが、つまりはこの家族の誰も広めてはいなかった。
そんなことになったきっかけを生み出したのは、学園長が全校生徒の前で話して聞かせたことが発端となっていた。特例中の特例として、アドルフィトがクラベル国から最年少で留学していることを鼻高々に語って聞かせたのだ。
「一度も通ってないのに……?」
「ここの留学生になれるもんなのか?」
「そもそも、ここの早期入学の受験なんて受けようと思っても、門前払いになって受けさせてもくれなかったって聞いたけどな」
「その生徒だけ受けられたってことか?」
「それなのにあの国に留学してるなんて変な話だな」
だが、そんなことになった経緯を知っている者が、物は言いようだと本当は何があったかを話したことで、あっという間に事実が広まってしまったのだ。
あちらにアドルフィトが留学することになり、あちらに親戚がいる者が、こちらで受験させてもらえずに通うことになった逸材がいることを耳にしたのだ。その際に、そちらの学園はとんでもないところのようだが大丈夫なのかと話したようだ。
その言い方に恥をかいたと思っていたようで、学園長の話を子供から聞いて、黙っていられなくなったようだ。
「この学園に通わせてることが、こんなにも心配になる日が来るとは思わなかったわ」
「本当にそうね。あんなのが学園長なんだと思うとこぞって、あちらを受験したがるのも無理ないわ」
夫人たちは、子供を通わせることに不安を持つことになり、そんなことを話すことで、アドルフィトの優秀さと学園の対応の差やらが際立つことになったのだ。
その上、アドルフィトは最年少で留学したことと未だに婚約者がいないため、そんな子息がいるのだとなり、それなのに留学することになったことに不安を持つ貴族も多くいた。
「あちらの令嬢を見初めてしまったら、どうするのかしらね」
「本当よね」
「逆に優秀な子息の婚約者がいないとわかれば、あちらの貴族が黙っていなさそうだわ」
そんな風に思われることになり、アドルフィトは本人の知らないところで話題となっていたようだ。
母も、お茶会に参加するたびに息子のことを聞かれて、最初は嬉しそうにしていたが、それに比べて一番上の娘さんはと残念がられることにもなり、そっちに婚約者がいないことでも色々言われるようになって、更にげんなりしたようだ。
できが良すぎる息子と真逆な娘のことで頭を悩ませられる日々を送ることになったのだ。前々からバレリアのことでは悩まされ続けたが、そこにアドルフィトも加わることになるのは両親たちも想定外だったが、そこは両親が何もせずとも、素敵な令嬢と婚約するのは間違いないだろう。
だが、その娘の方は、何もしないままではいられない。今までも、何もしなかったわけではないのだが、どうにも上手くいかないのだ。
できない理由を他人のせいにしているせいで、更に自分の頭の悪さを披露し続けているせいで、自業自得なことになっていた。
学園で悪口を言われない日がないほどだったようだが、それを言われたくないと奮起して勉強なり花嫁修業なりを頑張ればよかったのだ。
でも、そんなことを頑張ろうとするバレリアではなかった。彼女の頑張り始めたことといえば、一回り近く離れた妹のルシアをいびり倒すことだったのだ。
そんなことばかりをするバレリアに両親は頭を悩ませ続けていた。
「全く、あんなに性格が悪いとなると他に取り柄なんて何があるというんだ」
「本当に困ったものですわ。婚約者を探すのに娘の良さを話すところが思いつかないんですもの」
それこそ、周りもバレリアがどんな令嬢かを知っている者が多くいて、嘘をつけばすぐにバレてしまうだけなのだ。
「それでも、卒業までには何とかして婚約者を見つけてやらねばな」
「えぇ、卒業までには見つけてあげなくては。それが、できなくては親としても不十分ということになってしまいますもの」
「そうだな」
そんな風に両親がいつも頭を悩ませていたことも、バレリアは知らずにいた。
もちろん、ルシアも、両親がそんなことで悩んでいるとは知りもしなかった。
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