私だけの王子様を待ち望んでいるのですが、問題だらけで困っています

珠宮さくら

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色んな感情が入り交じる中で、幸せを感じていた。


(そう、この話よ! この話が大好きだったのよね。凄い。また、聞けるなんて……、幸せだわ)


ルシアは、祖母が読み聞かせてくれるのを聞きながら泣きそうになっていた。もう聞くことはできないと思っていたというか。思い出すことになったルシアは、泣き叫びたくなっていた。

生まれ変わってからも、ルシアは心のどこかで前世の祖母にされたこの話に憧れ続けてやまなかったようだ。王子様に必ず会えると信じて疑っていなかったのも、ここでの記憶が原因のようだ。

それこそ、前世の頃のルシアは、あんなに早く死ぬとは思っていなかったこともあり、初恋もまだだった。恋をするよりも、王子様の方が自分のところに来てくれると頑なに信じて、疑ってすらいなかったのだ。


(まさか、ここでのことが、生まれ変わった先でも記憶に残ったままになるとは思わなかったな。それだけ、叶ってないってことが心残りだったのかな?)


今、改めて聞いているとおかしな感じもなくはなかったが。あの頃のルシアは祖母の言うことが、前世のルシアにとっては世界の全てのようになっていたようだ。


「いい子にしているんだよ。お前のところに神様が相応しい王子様を寄越してくれるからね」
「うん!」
「約束は、絶対だからね。生半可な気持ちでしゃ駄目だよ」
「わかった」


そう返事をしている前世のルシアが満面の笑顔をしてそこにいた。それを見ている生まれ変わったはずのルシアも、思わず返事を仕掛けてしまっていて、条件反射とは恐ろしいものがあると苦笑していた。

約束のことも、祖母に刷り込まれていたようだ。それを聞いて、ルシアは苦笑してしまっていた。

思いの外、祖母に言われたことに対して、前世のルシアは本気で向き合っていたようだ。前世の祖母も、まさか孫が早死にして生まれ変わった先で約束を守っているとは思うまい。


(そういえば、この絵本の作者って、誰だっけ? なんか、友達も、この話を聞いたことないって言ってたんだよね)


ふとそんなことを思って、チラッと見えた絵本にルシアは、ん?と思ってしまった。

おかしな話だが、二度見してから目も擦ったが、それは目がおかしくなったせいではなかったようだ。


(あれ? なんか、書いてあることが違うような……?)


作者以前の問題が、そこにあったようだ。ルシアは、祖母の手元を覗きこんでいた。


(凄く絵が綺麗で、大きくなってからも、読んでもらってたからかな。全然、内容が違うことに気づかなかったみたいね。……そういえば、前世の私って、目が悪かったっけ)


ルシアは、全く別の物語が書かれているのを知って、遠い目をしてしまった。生まれ変わったルシアの目は良い方な気がする。そう考えると前世の記憶がいりまじっている今、前は物凄く悪かったことがよくわかってしまって、それじゃあ文字を見るより読んでもらった方が楽だと思っても無理はないと思ってしまって苦笑してしまった。

前世の子供の頃の光景を見ていたルシアは、そこから成長して、不慮の事故で死ぬことになったが。それでも死ぬには若いと言われる年齢だったのは、確かだ。

恋もしたことはなかった。誰かと付き合うこともしたことがなかった。

それ以前に王子様が、いい子にしていれば、神様が寄越してくれるものだと思っていて、それを信じて疑ってすらいなかったのだ。通りで前世の友達は、みんな生暖かい目で見ていたわけだ。


(夢を夢見る女の子だって思われていたのよね。きっと)


そもそも、色々とおかしなことになっていることに生まれ変わってから、ようやく気づくことになったわけだ。

それでも、ルシアは何でそんな嘘を教え込んだのかと思うことはなかった。全部が嘘だとはルシアは思ってはいなかった。


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