私だけの王子様を待ち望んでいるのですが、問題だらけで困っています

珠宮さくら

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ルシアの部屋をノックする音にルシアは目を開けて、返事をするとそろりと覗いて来たのは、ルシアが想像していた人たちの誰でもなかった。

そこにいたのは、久しぶりに会う少しだけ歳の離れた兄のアドルフィトだった。


「ルシア。起きてるんだな」
「おにいさま」
「入ってもいいか?」
「うん!」


留学していたアドルフィトは家に駆け込んで来たが、両親に妹がどんな様子なのかを聞いてから、そろりと様子を見に来たようだ。

ルシアが大怪我を負ってから半月以上は過ぎていたが、長期休暇になって隣国から戻って来たのだろう。もうというか。ルシアは、まだ、そんな時期なのかと思ってしまった。ルシアが怪我をして、思っているより月日は経っていなかったようだ。

入っていいと言われて、嬉しそうに入って来たが、痛々しい妹の姿にアドルフィトの顔はすぐに強張った。


「ごめんな。すぐに戻って来たかったんだが」
「いいの。おかえりなさい」
「ただいま、ルシア」


姉ほど歳は離れていないが、兄ともルシアは歳が少しだけ離れていた。その上、とても優秀でこの国では最年少で留学しているらしい。それに父親に似て美形な顔立ちをしているのだが、まだ子供っぽさがあって、女の子にも見えるほどだ。

そのせいか。婚約者は、まだいない。何なら、その辺の女の子よりも可愛い。本人はかなり気にしているようだが、以前までのルシアはそんなことに気づきもせずに兄を可愛いとやたら言っていた気がする。

そのたびに、兄が複雑な顔をよくしていたのを思い出して、今のルシアは反省しっぱなしとなっている。それこそ、そのくらいの男の子に可愛いは褒め言葉ではない。

頭をぶつけて以来、過去の何も知らないままの7歳児のやることなすことに反省することも多々あった。そこに悪気はないのだが、今のルシアには申し訳ない気持ちでいっぱいでしかなかった。


(優良物件だと思うけど。婚約者がいないのは、あの姉のせいもありそうよね)


そんなことをルシアは密かに思っていたが、口にしたことはない。動けなさすぎて、色んなことばかり考えてしまうことになっていて、とにかく暇なのだ。


「ルシアにお土産があるんだ」
「おみやげ……?」
「アドルフィト!」


そんなことを話していると突然、思ってもみたい人物がノックもなしに部屋に入って来た。ルシアの部屋にバレリアがやって来たのは、とても珍しいことだった。

やたらと周りに怒られるようになったのも、嫌味をことあるごとに言われ、そうでなければ無視されるようになったのも、ルシアが階段から不注意で落ちたからだと思っているようだ。そういう人なのだろう。

それとバルトロメと婚約したことを周りがやっかんでいるとも思っているようだ。僻みと妬みと嫉妬だと思っているようで、ルシアはそんな姉の思考回路に何とも都合のいい頭をしているものだと変な感心をしてしまってもいた。

そんなことを思うようになっても、ルシアが何か言うことはしないようにしていた。怖いとかではない。ただ、面倒くさいからに他ならなかった。

だが、周りはルシアは姉を怖がっていると思っているようだ。それか、まだ幼いのだから、言い返すのが難しいとでも思っているのかも知れない。

そんな面々にルシアの心の声を聞かせてやりたい。


(帰れ、帰れ、帰れ)


今回は、バレリアに帰れコールをしていた。全然、怖がっていない。しかも、日に日に元気になっていることは間違いない。

ちょっと前まで恋は盲目だからと姉の恋路を応援するのもいいかも知れないと思って、数分もせずにやっぱりそんなことするだけ無駄だなと思うほどとなっていたが、今日のルシアは久々に会った兄とお喋りを楽しんでいたこともあり、邪魔されたことで帰れコールに忙しかった。


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