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一方のルシアの兄であるアドルフィトは、あれから姉の時は二度目の婚約はできなかったが、何とかギリギリになって婚約することになったようだ。
そんなことになるとは、両親は思いもしなかった。それこそ、最年少で留学することになったのだ。とても優秀なのだから、真逆な姉のようなことにはなるわけがないと思っていたのに。それよりも、大変なことになってしまったのだ。
元婚約者たちをくっつけることに奔走しても、婚約解消した時期がよろしくなかったようだ。どんなにアドルフィトの株が回復しても、みんな婚約者がいたことで、アドルフィトにあいそうな令嬢が中々いなかったのだろう。
「まさか、アドルフィトの婚約の方が、本当にギリギリになるとはな」
「えぇ、本当ね」
両親は、親としての務めだからと卒業パーティーでダンスを踊れるようにと婚約者を探すのに躍起になって、ぐったりしていた。
そんなことになっているとも知らず、ルシアは留学先にいて、婚約者と勉強のみならず、彼と一緒にいる時間を満喫していた。
そのため、そんなことになっていることを知らないままだった。
(まぁ、前よりはマシだといいけれど)
婚約したことも、何とか間に合って卒業パーティーにも出たことは、両親から知らせがきて知っていた。
だから、長期休暇に戻った時に兄の婚約者とそこで挨拶したら会えると思っていたのだが……。
「え? 婚約破棄になったんですか?」
「そうなのよ」
「……」
「あちらも、卒業パーティーで相手がいないまま、出席したくなかったんだろう。だが、それももう終わったからと解消してくれと言って来てな」
「でも、破棄したんですよね?」
「アドルフィトが、激怒してな。でも、あちらの令嬢が、アドルフィトも相手がいなくて恥をかきたくなかったから婚約した癖にと言ったんだ」
(そんなこと言うような令嬢ってことなわけね)
ルシアは、最初の婚約者よりはマシなようだが、どちらも好きにはなれそうもないと思ってしまった。
「そこから、大喧嘩になって、結局は婚約破棄になったのよ」
「そう、だったんですか」
ルシアは、頭にきた兄がそんな令嬢とわかって腹いせに破棄したことを知って、遠い目をしてしまった。
(それで、私が帰って来ても部屋から出てこないってわけね。お兄様のプライドはズタボロもいいところね)
そこから、ルシアは姉と兄のようにはならなかった。
誰もが羨むようなまま、留学を無事に終えることになり、ルシアは兄よりも更に優秀な成績をおさめたことも考慮されることになり、婚約者のセレスティノと1年歳が違うが、一緒に卒業てきることになり、卒業パーティーにも一度出るだけで済んだのだ。そして、すぐに二人は結婚をした。
その時も、アドルフィトに婚約者はいなかった。
兄の最初の婚約者だったマルティーナは、幼なじみの伯爵子息であるクラウディオと既に結婚していた。
相変わらず、ずっとあのまま喧嘩し続けているようだが、周りはそれが二人の愛情の表れだと思っているようだ。
(前より酷くなっているわね。それにあんな顔してたかしら?)
つまりは、セレスティノの兄とその妻ということだ。喧嘩ばかりをしているせいか。彼の両親も、兄夫婦とは結婚式で挨拶してくれればいいと中々クラウディオたちと顔を会わせたがらなかったのも、このせいのようだ。
ルシアは、自分の結婚式で久々に会うことになったのだが、喧嘩ばかりをしているせいか。年齢よりも老けて見えるようになっていて、目つきも昔よりもキツくなっていた。最初、誰なのかがわからなくて、紹介されてようやくわかったが、それでも本人だとはどうしても、思えないくらいの変化だった。
そこで、アドルフィトもそんな喧嘩ばかりをしているマルティーナたちに会うことになったのだが、変わり果てた姿に誰だかルシアのようにわからなかったようだ。無理もないとは思うが、この時の対応も兄は酷かった。
「は? それ、嫌味?」
「? すみません。どこかで、お会いしたことがありますか? 私より年上の方ですよね?」
「同い年よ!」
だが、アドルフィトは冗談だと思ったようだ。婚約者が中々、できないままとなっているアドルフィトは、更に余計なことを言ってしまって、マルティーナたちと口論になるのもすぐのことだった。それでも、式が始まるからと席についてはもらったが、そこから夫妻はいつものように大喧嘩をすることになったのだ。
これから結婚式だというのに新郎新婦よりもこの二人が目立ちまくることになったのだ。
ルシアは、自分の結婚式の日に暴れ回られることになってしまい、とんでもない目に合うことになるとは想像もしてはいなかった。
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