私の欲する愛を独占している双子に嫉妬して入れ替わったら、妹への恨み辛みを一身に受けましたが、欲しかったものは手にできました

珠宮さくら

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「本当に美人だよな」
「見ているだけでも目の保養になるよな」


そんな風に婚約者がいる子息ですら、ユーフェミアのことを見つめていることが増えた。その美貌は化粧でそうなっているわけではない。内面から輝く美しさに心奪われ始めている者が増え始めていただけに過ぎないのだが、しみじみと言うが、ユーフェミアの婚約者になろうとする者は未だにいなかった。

遠くから眺めているだけでも十分な高嶺の花となっていた。見ているだけならいいが、ポカーンと口を開けて眺めていたり、つい言葉にしてしまう者がいるせいで、婚約している令嬢たちは気に入らないとばかりにユーフェミアが誘惑したと言って騒ぐのも、いつものことになっていた。

誰とも親しく話すことをしていないというのに酷い言われ方をしながら、ユーフェミアは勝手に馬鹿にされ、悪く言われることを聞かない日はない中で、気の休まらない日々を過ごしていた。

その頃には、みんなの思い出の中のエレインは、すっかり崇拝対象となっているように思えた。

ユーフェミアは、そんなおかしな環境の中で過ごしていた。


(こんなのにいちいち付き合っていたら、こっちが変になりそうだわ。みんな誰も気づいていないのね。どうして、これが普通になってしまったんだろうか。エレインが、そうしてくれと言ったわけでも、そこまでのことをユーフェミアがしていたにしては根に持ちすぎだわ)


深く考えれば気が滅入ってしまうかと思いきやそんなことはなかった。しばらく経ってしまうとおかしくて仕方がなくなっていた。

おかしいと思う理由というか。正気でいられる理由は単純明快だ。

自分が自分と戦っているだけなのだ。どういうことかというとユーフェミアは、しばらく前までエレインと呼ばれていた。

つまり、双子の片割れと揉み合った末にお互い階段から落ちたことで、入れ替わっているだけとなっているのだが、周りはそれを知らないため、本物のエレインが本気になってここにいるだけなのに養子にいった方は、もっと凄いのだと勝手に言っている似すぎないのだ。

おかしく思うのは無理はないはずだ。誰も彼もが、どちらがどちらなのかをわからずにいるのだ。

それは、赤の他人だけではない。両親も、同じだった。一番よくわかっているはずの母が、ユーフェミアとエレインの区別がついていなかったのだ。


(所詮は、ユーフェミアではなくて、次女としてしか見ていなかったってことになるのよね)


更に叔母も、エレインだと思ってあちらを養子にするのに連れて行ったが、ユーフェミアだとは思っていないようだ。わかっていたら、養子にはしていないはずだ。いや、養子にしてからわかっても、恥ずかしくて言えないだけなのかもしれないが。今のところ戻って来る気配はまるでない。

あちらも、同じように頑張っていたら、そっくりな見た目をして生まれたのだから、今のユーフェミアと並んでも引けはないかもしれない。でも、今のユーフェミアを超えさせる気はない。

そうなれば、面白いことになるはずだが、戻って来る気配も、知らせも今のところ何もないから並び立つなんて日が来るかはわからないが、今散々なことを言っている人たちが何と言うのかが気になるところだった。

そのためにお膳立てなんてする気はないが。拒むつもりもない。

隣国のグウィネス国で、この国の才女となったユーフェミアよりも優れた者がいるとは聞いたことはないが、そんなことどうでも良いかのようにユーフェミアだけに嫌味なことを言っていた。

本物のユーフェミアは、よく暴食していた。もしかするとあちらでストレスを感じて、暴食しているかもしれない。

それだけでも、本物ではないとわかるはずだが、それで騒がれることにはなっていないのは、叔母たちが認めていないからかもしれない。

いや、あちらではこちらでストレスを感じたら何をやるかを知らないから、記憶をなくしたことで思い通りにいかずに癇癪を起こす令嬢だと思われて終わりかもしれない。


(あの子が静かなのって、珍しいわよね。記憶が戻っていないから、叔母たちに言われるままにしているのかしらね。……それが幸せなら、いいけれど。私みたいに同じようになっていたら、代わっても代わらなくても一緒になるから、元に戻っても幸せになれるかは微妙なところよね。でも、この国に残るよりは、マシなはずだけど)


ユーフェミアは、そんな感じに思わずにはいられなかった。新しい場所でも同じになるのなら、どこにも夢も希望も持てなくなる。

周りに振り回されたせいで、今があるのだとしたら、片割れも被害者でしかない。母に溺愛されたことで、こうなったにしては説明がつかないことが起こっていた。

こんなことになってみてようやく、色々とわかってきたが、ユーフェミアではないのだと暴露する気はなかった。しても誰も信じてはくれないだろう。

だって、それが本当なら、自分たちの見る目のなさを露見することになり、認めることになってしまうのだ。

そんなことに行き着いたユーフェミアは、誰にも気付かれずにため息をつくことも増えた。

それから、ユーフェミアが悪いとばかりにもっと酷い目にあって、母にまで前のような目で見られ扱われることになったら、それこそ地獄でしかない。

誰も味方してくれない世界ほど恐ろしいものはないとユーフェミアは思っていた。

そんな中でユーフェミアは、ただ1人信じてくれる人がいればいいと思っていた。それが欲しくて、入れ替わったのだ。

それがなくなれば、もう頑張る意味すら見失うほどだった。今のユーフェミアが頑張っている理由は、自分のためではない。母のためだ。母の自慢の娘になりたくて、頑張っているにすぎない。

それを喜んでくれる母がいる限りやめる気はなかった。


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