27 / 30
27
しおりを挟む隣国にいる叔母のイライザが、従兄のアリスターと一緒になって、侯爵家にやって来た。
その頃には、エレインは着ていたのがユーフェミアのドレスだったことで、ユーフェミアとして階段から落ちて目が覚めてから、ずっと扱われていた。
そして、ユーフェミアの方は元王女である公爵夫人からもらったドレスを着ていたから、エレインだと思われていた。
その時を狙ったわけではないが、相手のドレスを着たくなったのは、双子ならではだったのかもしれない。
「全く、ユーフェミアも怪我したというのにエレインの見舞いをして、こっちに顔を見せないつもりかしらね」
「……」
母は、ユーフェミアだと思っているからこそ、ずっと側にいた。
見た目で判断していると思っていたが、似すぎていたので着ているもので判断したようだ。
そう、誰も彼も気づいていない。それに複雑なものがあった。
ユーフェミアが、あのドレスを着ていてくれたから、余計に誤解されることになったのだ。そして、ここまで気づかれないとも思わなかった。
それと頭を思いっきり打ち付けたようで、ユーフェミア、いや、もうあちらがエレインでいい。ややこしすぎる。
エレインの方は、遅れて目が覚めて自分がエレインなのだと言われて、そうなのだとすんなり思ったようだ。それは、エレインではないのだが、今はユーフェミアとなった双子の片割れとしては、嬉しい誤算でしかない。
記憶がある方は、叔母と従兄が偏っているところが母にそっくりだと思っていた。
あちらも、自分に似ているからエレインのことを心配してここまで来たのだ。従兄も、叔母に似ているから、エレインの方が好きなのは無理ないが、従兄に何かした覚えは特にない。叔母に感化されているかのように覚えている限り、前からこんな感じだった。
今はユーフェミアとなって、エレインしか姪も従妹もいないかのようにしてエレインの部屋から、こちらに来る気配がない。
そのせいで、母の愚痴が酷いかと言えば、ユーフェミアが気にしていないかと気にかけてくれているだけで、義姉たちの悪口をあまり言うことはなかった。
いつもは、ユーフェミアが酷かった。ずるいと騒ぐせいで、母なりに宥めていただけのように思えた。
しばらくして、ユーフェミアの部屋にも2人は来た。叔父にでも言われて寄ることにしたのかもしれない。
「……エレインよりも、大したことなさそうね」
「……」
それを聞いて、ユーフェミアだと思われている方は……。
(お見舞いに来てくれたのよね……?)
思わずそんなことを思ってしまった。その目は、エレインの時に見たものと全然違っていた。
(この目は、エレインのことを見ていたお母様の目にそっくりだわ)
そんなことをいきなり言うのに母が、隣でムッとした顔をしているのが見えた。手を骨折して足を捻挫しているユーフェミアを見て、そんなことを言うのだから怒らないわけがない。
エレインと思われている方は、頭を強く打っただけで、手足のどこも怪我してはいない。記憶がとんだだけだ。常識知らずなところがあるから、そんな記憶がなくなっても大した損害はないはずだ。
この時のユーフェミアとなった片割れが、そんなことを思っていたのは、一重に母の愛情を独占していたことを色々と思っていたからであった。
でも、次の言葉というか。叔母の言葉を聞くうちに段々と独占していた愛情が、違っていた気がしてきた。
「どうせ、大げさにしているだけでしょ」
「……」
そんな嫌味なことを叔母から言われたことがなかったが、その言い方は母にそっくりだった。
それに思わず眉を顰めそうになってしまったが、この叔母と従兄もまたどちらが本物のエレインなのかがわからないようだ。
(なんだ。この人たちも、そうなんだわ)
ずっと側にいた母があっさりと間違えたのだ。たまにしか会わないこの人たちにはわからなくても仕方がないのかもしれないが、一気に滅多に会えないだけでなく、この2人のことを元々あまり好きではなかったのが、あまりがつかないものに変わるのは、すぐだった。
そんなようなこと言って、どう見てもお見舞いなんて言えることをせずにエレインが、ここにいたままではまた殺されかけるのではないかと叔母が父に話して、父もそれを考えていたのか。あっさりとあちらのエレインを叔母夫妻の養子にすることにした。
そのあっさりとエレインの今後の安全のために動いたことに本物のエレインの方は複雑な思いしか抱けなかった。
(入れ替わった途端にこんなにもあっさりとこの家を出れるのね。何か、本当に馬鹿みたいだわ)
そんな風に思って、ぽつりと呟いた。
「エレインだって、ずるいところあるじゃない」
ユーフェミアとなって、よくわかったのは、ずるいと言う理由だった。それが、上手く伝えられなかっただけに思えたら、何とも言えない気持ちになってしまった。
その後、ユーフェミアとなって更にどんな環境にいたかを思い知ることになってからは、ストレスも溜まってわがままを言いたくなるのもわからなくはないと思うことになるとは、この時は思いもしなかった。
周りが、偏りすぎたのを正そうとして、すっかり偏りきってしまうとは誰も思わず、それをおかしいとおもわない方向に染まるとは思うわけがない。
30
あなたにおすすめの小説
王子様への置き手紙
あおた卵
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。
婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~
tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。
ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。
夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。
MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。
記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。
旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。
屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。
旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。
記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ?
それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…?
小説家になろう様に掲載済みです。
婚約者を義妹に奪われましたが貧しい方々への奉仕活動を怠らなかったおかげで、世界一大きな国の王子様と結婚できました
青空あかな
恋愛
アトリス王国の有名貴族ガーデニー家長女の私、ロミリアは亡きお母様の教えを守り、回復魔法で貧しい人を治療する日々を送っている。
しかしある日突然、この国の王子で婚約者のルドウェン様に婚約破棄された。
「ロミリア、君との婚約を破棄することにした。本当に申し訳ないと思っている」
そう言う(元)婚約者が新しく選んだ相手は、私の<義妹>ダーリー。さらには失意のどん底にいた私に、実家からの追放という仕打ちが襲い掛かる。
実家に別れを告げ、国境目指してトボトボ歩いていた私は、崖から足を踏み外してしまう。
落ちそうな私を助けてくれたのは、以前ケガを治した旅人で、彼はなんと世界一の超大国ハイデルベルク王国の王子だった。そのままの勢いで求婚され、私は彼と結婚することに。
一方、私がいなくなったガーデニー家やルドウェン様の評判はガタ落ちになる。そして、召使いがいなくなったガーデニー家に怪しい影が……。
※『小説家になろう』様と『カクヨム』様でも掲載しております
平凡な伯爵令嬢は平凡な結婚がしたいだけ……それすら贅沢なのですか!?
Hibah
恋愛
姉のソフィアは幼い頃から優秀で、両親から溺愛されていた。 一方で私エミリーは健康が取り柄なくらいで、伯爵令嬢なのに贅沢知らず……。 優秀な姉みたいになりたいと思ったこともあったけど、ならなくて正解だった。 姉の本性を知っているのは私だけ……。ある日、姉は王子様に婚約破棄された。 平凡な私は平凡な結婚をしてつつましく暮らしますよ……それすら贅沢なのですか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる