4 / 10
4
しおりを挟むアンリエットは、ようやくマンディアルグ侯爵家らしくなってきたと言った。
「ルイーザ。これ、よかったら私に預けてくれないかしら?」
「……これを?」
「えぇ、直してもらえるかあたってみるわ」
「っ、」
「元通りにするのは難しいだろうけど。せっかくの思い出の品をこんなままにしておけないわ」
「……直るでしょうか」
呆然として、何度も踏まれてしまった。それを思い出しただけでも悲しくなる。欲しい、欲しいと言いながら、それを大事にしないのだ。そういう風にさせてしまったのはルイーザだが、あんな風に癇癪を起こすとは思いもしなかった。
(それこそ、自業自得って、こういうのを言うのよね)
ルイーザは、そんなことを思いながら壊れた形見を見つめた。
「わからないわ。でも、この色合いより、少し違う色を加えたら、ルイーザにもっと似合うと思うわ。ルイーザのお母様の髪色より、あなたの髪色は明るめだから」
「っ、お母様を知っているの?」
アンリエットは、にっこりと笑った。それは兄に見せる笑顔とも違っていた。
「もちろん。私のお母様ととても仲良しで、私もあなたが赤ちゃんの頃に抱っこさせてもらったことがあるのよ」
「っ、」
「おば様、本当の姉妹みたいだって笑っていたわ。もう1人女の子が欲しいって、出産してすぐに言っていて、お母様が気が早いって言っていたのをよく覚えているわ」
どうやら、ルイーザが姉妹に憧れていたのは、あの光景を見ていたからだけではなかったようだ。
(私が欲しかったのは、本当に欲しかったのは、妹だと思っていたけど、姉妹だったのかも知れないわ)
姉妹を微笑ましそうに見ている母親を羨んでいたことにルイーザはようやく気づいた。そして、アンリエットに抱きしめられながら大泣きした。
アンリエットのことを義姉として認めたのは、こんな会話をした後からだった。
ルイーザは今まで自分がやらかしてきたことが、急に恥ずかしくなった。
変わらなかったのは、クレールだ。
「お義姉様!」
「だから、何度も言わせないで。そう呼ぶなって言ったわよね?」
「っ、そんなの他人行儀すぎるわ!」
「他人でしょ。だから、ルイーザの大切なものすら、新しく買えばいいと言って謝罪1つしないんでしょ。私たちが知るわけないわ」
「っ、煩いわ! 私は、お義姉様に……」
クレールは、ギャンギャンと色々言って来て煩くて仕方がなかったが、話が通じることはなかった。
(困ったわ。あの人が離婚した時に私を選んだのに喜んだりするんじゃなかった)
そんなことを思っても後の祭りでしかなかった。ルイーザは、このままでは自分だけでなくて兄やアンリエットに迷惑をかけると思って、頭を悩ませることになった。
65
あなたにおすすめの小説
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした
おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。
真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。
ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。
「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」
「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」
「…今度は、ちゃんと言葉にするから」
悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません
由香
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。
破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。
しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。
外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!?
さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、
静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。
「恋をすると破滅する」
そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、
断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました
雨宮羽那
恋愛
結婚して5年。リディアは悩んでいた。
夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。
ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。
どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。
そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。
すると、あら不思議。
いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。
「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」
(誰ですかあなた)
◇◇◇◇
※全3話。
※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜
待ち伏せされた悪役令嬢、幼馴染み騎士団長と初恋をやり直す。
待鳥園子
恋愛
悪役令嬢クラウディア・エズモンドとして転生し、前世の記憶が婚約破棄の夜会数日前に戻った。
もう婚約破棄されることは避けられない。覚悟を決めて夜会が開催される大広間に向かう途中、騎士団長であるオルランド・フィンリーに呼び止められ……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる