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しおりを挟むリュドミラは、イリーナを見つけて、こう言った。アナスタシアの友達でもあるが、彼女はリュドミラとも仲良くしていた。
「色々あって気分が優れないから、少し休むわ」
「大丈夫ですか?」
「次の授業を休めば、治るわ。アナスタシア、付き合ってくれる?」
「もちろんです」
そこから、リュドミラが休ませようとしたのが、アナスタシアだったと気づいた。
リュドミラにつけられている護衛にこう言った。
「人払いをして」
「わかりました」
そして、使われていない教室でアナスタシアがしたのは、誠心誠意、謝罪することだった。
王太子は、ヴァシーリーと別の授業を受けている。その後の授業は、一緒のため、このタイミングしかなかった。
「アナスタシア。頭を上げて」
「……」
アナスタシアは、それでも少ししか頭を上げなかった。
「あの方、わざわざ、あなたの従姉って言っていたけど、それ以外に何もなさすぎたわね」
「……」
リュドミラは、そう言いながら、席に座った。そして、隣をポンポンと叩いた。
アナスタシアは、それに従って座った。
「王太子の婚約者になるのは、自分だと言っていたけど。あなたの婚約者と思っていたにしても、奪う気だったのよね。あんな、何もないのに。あなたから、とれるって自信があるのにびっくりだわ」
「……あの人は、叔母にそう言われ続けていたみたいです」
「あなたに勝てるって?」
「私のものは、もらってもいいもの」
「え?」
アナスタシアは、従姉に会った時にいつも、いいと思ったものを取られていた。その話をリュドミラにした。
「従姉に会うたび、色んなものを取られました」
「……」
「それに文句を言うと従兄が出てきたり、叔母が出てきて、母にまで当たり散らすんです」
思い出して、アナスタシアは暗い顔をした。膝の上に置かれた手にリュドミラが、そっと手を置いてくれた。
「無理して話すことないわ」
「……」
「でも、吐き出したいなら、全部聞くわ」
それを聞いて、アナスタシアは溜め込んでいたことを話すことにした。
「だから、幼なじみにも会わせたくなかった。なのにヴァシーリーは会わせないことに何かあると思ったみたいで、着いて来たんです。あの頃は、絶縁してなかだたから、こっちに何かあると遊びに来ていて、私や母の予定なんてお構いなしでした」
「ふふっ、ヴァシーリー様のことだもの。密会していると思ったのかも」
「密会……?」
「だって、アナスタシアが内緒にすることなんてあまりないでしょう?」
「内緒ごとがバレないことはないかも」
「でしょうね。あなたたち、昔から仲良しだもの」
「っ、」
そこから、ヴィクトリアにあの頃、取られなかったのは、ヴィクトリアが欲しいものでないようにヴァシーリーが見せていたことにアナスタシアは、リュドミラと話すうちに気づいた。
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