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しおりを挟む戻って来た護衛にヴィクトリアが、子爵家に行ったのを聞き、その後がどうなったかをヴァシーリーは知っていた。
見届けたくないが、今後に関わる。
母親はヴィクトリアを捨てて後妻となったのに呆れていた。
「……娘は、どうなった?」
「どうにかしてくれるのを待っているようです」
「……誰か、宛でもあるのか?」
「これまで、通りに母親や兄たちが、どうにかしてくれるのを待っているようです」
そんな報告を聞いて、ヴァシーリーは……。
「ある意味、幸せな頭をしているな」
ヴィクトリアは、兄の婚約を台無しにしてもなお、自分の手柄のようにしていたと聞いて、無表情になった。
王女の持っているものを奪うのに味をしめたのが、義妹になるなんて嫌に決まっている。
そんなのと縁を切ったと言われても、それまで味方していたことに変わりはない。その辺を調べ直して、やっぱり無理となったのだ。
ちゃんと調べていたら、そうはならなかっただろうが、王女は恋に恋していた。ティモフェイほど、素敵な人はいないと恋にのぼせて周りの言うことを聞かなかったのだ。
そのツケのように婚約破棄することになり、王女は物凄く落ち込んでしまったようだが、そのおかげで新しい婚約者を見つけて、今は相思相愛になっている。
ティモフェイの方も、父親に再教育されることになり、ちょっとはマシになって、次に婚約した令嬢はとても良さげだと聞いて、ヴァシーリーは落ち着いたなと思っていた。
従兄まで、勘当それることになれば、アナスタシアが気にしていた。仲はいまいちでも、アナスタシアが気にすることになるのは困る。
「まぁ、どうあがいても、もう、こちらには来れないだろうが」
ヴィクトリアは、その日、食べるものにも困る生活をしていた。そのため、働き続けなければならない状況になって、周りをあてにできないと、ようやく悟ったようだ。
そんな生活が続いて、もう誰かを頼ったところで助けてくれないとわかるのにかなりかかって、アナスタシアから奪えばいいなんて発想には至ることはなかった。
そうなっても、そうなるのなら、ヴァシーリーがもっと遠くに追いやっていただろうが、そこまでになることはなかった。
アナスタシアに少しでも申し訳なかったと思えば、まだしも何もなかったことにできるのに腹が立ったが、その仕返しは母親の方にしておいた。
すぐに後妻となった彼女は、ただのお飾りでにこにこと立っていればいい。余計なことはするな。考える必要もないと再婚相手に言われて、幸せな結婚生活とは無縁の毎日を過ごすことになった。
最後まで、娘を見捨てずにいたら、公爵がそれなりのところで雇ってもらえるようにしようとしていたが、そうはならなかった。
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