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しおりを挟む次に新人たちが向かった研修先は、お菓子の開発部門だった。ユズカも、新人たちにまじってそこにいた。
(悪戯用とこれは別の部門なんだ。なんか、わかるような。わからないような。あ、他人に悪戯する用と自分が楽しむ用ってことかな?)
そう考えるとユズカでも納得できそうだった。
色んなパターンというか。種族別というか。それぞれのなりきっている仮装の好みにあうお菓子の開発をするところのようだ。ユズカからしたら、超のつく偏食の人用から、ちょっと偏食の人用という感じに思えるお菓子があった。
虫入りや血液入りのキャンディーやケーキ、クッキーなどをおどろおどろしくデコレーションしたりするのだ。中身はともかく、美味しそうなデザインにするのは楽しいが、気味悪くデコレーションするのにはユズカは抵抗が大きかった。
だから、素晴らしく気味悪いデザインではなくて、美味しそうなのに気味悪い感じが残るものばかりにとどめた。
(私は、食欲がわかなくなるけど。ハロウィンって、こういうお菓子が流行ってたんだっけ??)
幼い頃に仮装してお菓子を貰いに家々に行った時は、もっと普通のお菓子が貰えた気がするが、時代は変わったようだ。
ユズカは首を傾げつつ、企画案にイメージ画を描いたのを見てもらっていた。
前回の猫娘の状態が1ヶ月も続いたこともあり、ユズカはそこであれこれ試食をしろと言われなかったのだ。……というか。食べるなと言われて、喜んでいいところのはずが、貢献できないことに凹んでしまったのは内緒だ。
でも、それにホッとしているのも大きかった。ユズカの視線の先には……。
(流石に虫入りのは食べたいとは思わないけど)
そう。本物の虫が入ったお菓子を、食べたいとは思わなかった。虫のように見せるお菓子なら、まだ良かったが、でもお金を出してまで食べたいかと言うとユズカにはなかったが。
「君の作るのは、みんな可愛くなるな」
「……」
(可愛い……?)
ここの責任者のカラウ・スティパは、カリアの双子の片割れらしい。雰囲気も似ているが、カラウは頬が、ちょっとこけていて顔色もあまりよくない。寝る間も惜しんで仕事をしているようで、そんなに仕事が好きなのかと思いきや裏事情があったようだ。
ここに寝泊まりして開発しているらしいのだが、そうなったのは、ここ数ヶ月のことのようだ。どうやら、カラウの奥さんが子供たちを連れて出て行ってしまってから、家に帰らずに仕事に没頭しているようだ。
その辺はカリアからの情報だ。猫娘の期間が長くなりすぎて、聞いてもいない情報を色々聞かされてしまったユズカだけが、その辺にすっかり詳しくなってしまっていた。
(身内の話題をされても、リアクションに困るものばかりだったな。……かといって、誰かに言いふらせるような話ではなかったし)
それこそ、あそこの研修が長引いたのも、ユズカが戻らなくなったのも大きかったりする。
それについて、研修生たちはユズカを心配してくれる者の方が多かったが、中には嫌味を言う者もいた。ユズカは、そういうのに慣れっこになっていたが、そういう人たちは、悪戯お菓子のとんでもない試食品を食べることになってしまい、最後らへんはそんなことを言う者もいなくなっていた。
カリアや部署の人たちとしては、自分たちが食べさせたもので戻らなくなったことに思うところがあったからかも知れない。
ユズカのようなのは稀だったようで、そういう特殊なケースにも瞬時に対応できてこそだと思っているようだった。
「猫耳と尻尾のまま、ここに来てくれたら、もっと可愛かっただろうに」
「……」
カラウの言葉にユズカは、なんて言っても見ようもない顔をしてしまった。
新人なこともあり、下手なことを言えずに黙っていると思われたようだ。
「カラウさん、それ、セクハラっすよ。キモいっす」
「何だと!?」
「ユズカちゃん。あっちで、作業しましょ」
この部門の人たちは、カラウから研修中の女子を何かと遠ざけようとしてくれていた。その度にカラウが、しゃがみこんで、メソメソしていた。
特にユズカに何度となく、同じようなセクハラのようなことを口にして、カラウから遠ざけられたのは、一度や二度ではなかった。
何となくだが、こういうところが奥さんが出て行った原因な気がしなくもなかった。
その辺のことにユズカは、気づかないふりをしてやり過ごした。
ここでの研修は、前の研修よりも、とても楽しかった。まぁ、試食している面々はユズカとは真逆だったようだが。中にはタダで食べれると喜んでいたのもいたが、そんなにたくさんはいなかった。
カラウはやたらと可愛いのにどこか気持ち悪い物が好きらしく、ユズカがデザインしたお菓子を眺め続けて、試食が出来ないほどだった。
それこそ、デザインが気に入ったからであって、ユズカがデザインしたからではないと思っているのは、ユズカだけだったようだが、特にそれ以上の被害はなかったため、ユズカが困り果てることはなかった。
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