兄が、姉の幼なじみと婚約破棄してから、家族がバラバラになったように見えていましたが、真実を知ると見え方が変わってきました

珠宮さくら

文字の大きさ
8 / 10

しおりを挟む

次の日。ドゥニーズは、アルレットを怒鳴り散らしていた。

それは、コンスタンスがエディットがしていたのと似ていたが、それより酷かった。


「婚約者の候補で、争っていたのをなかったことにするなんて、信じられないわ! あんまりよ!!」


人がいっぱいいるところで、さも悪いのはアルレットのようにして悲しんでいるようにしたのだ。


「争ってなんかないわ。あなた、そもそも候補ですらなかったもの」
「っ、嘘つかないでよ!!」


面倒くさそうにアルレットはそう返した。それにドゥニーズがカッとなっていた。それまで、言い返せずに肯定も否定もしなかったのに言い返したことにアルレットは驚いていた。


「嘘じゃないぞ」
「王太子殿下」


ドゥニーズは、王太子が来ても呆然としていた。

アルレットは、綺麗なカーテシーをしていた。周りも、何事かと集まっていたが、王太子の登場に礼を尽くしていた。


「本当のことだ。君は、何を勘違いしていたか知らないが、ありえない誤解していただけだ」
「っ、そんな、だってアルレットが」
「彼女は、肯定も否定もしていない。君が、勝手に言っていただけだ。わかっていて、そうしていたんだろ? アルレットの優しさに漬け込みすぎだ」
「っ、」


王太子がそう言っても、そんなわけない!とドゥニーズは認めようとしなかった。

それを見ていた周りは……。


「今更よね」
「えぇ、誰も、あの人が言ってるの信じてないわよね?」
「あら、一部が面白がって信じてるみたいにしてたじゃない」
「あれを真に受けてたってこと? おめでたいわね」
「っ!?」


どうやら、ドゥニーズのことを信じていたのは、わずかだったようだ。みんなアルレットが、何も言わずにそのままにしているから放置していただけのようだ。

それを遠目でコンスタンスは、エディットと見ていた。エディットは、王太子が居るのに怒鳴り散らしているのを見てぎょっとしていた。

それから、エディットは……。


「コンスタンス」
「何?」
「私、あなたに怒鳴り散らしたの謝ってなかったわ」
「いいのよ」
「でも」
「お姉さんのためでしょ? 私も、お姉様のためなら、頑張って怒鳴るわ。怒鳴ったことないけど」
「え? コンスタンス、怒ったことないの?」
「ない」
「……そんな感じね」
「?」


そんな話をしているとドゥニーズは、自分が悪くなったのを察知したのか。怒鳴り散らしていなくなっていた。

その後、ドゥニーズを見ることはなかった。侯爵家のみならず、王太子からも苦情と抗議がなされて何をしたかが両親に知られることになったのだ。


「謝罪するならまだしも、王太子もいるのに怒鳴り散らすなんて、何を考えているんだ!!」
「そうよ。謝罪すべきは、あなたなのに。どうして、更に酷いことをするのよ」


それでも、自分は何も間違ったことはしていないとばかりにドゥニーズはしていて、アルレットがハメたと言っていた。


「違う。全部悪いのは、アルレットよ」


だが、そんなことを言うドゥニーズを両親も信じることはなかった。

そんなのをどうにかして婚約させようとするのを両親はやめて、修道院に行けと言っても自分は悪くないと言って聞かず、この家に置いておけないと勘当したのはすぐだった。

エディットは、そのやり取りを見ていて、げんなりしていた。こんなのを庇って信じていたのかと思うと過去の自分の見る目のなさにため息しか出なかった。

それでも、勘当されることになってエディットにドゥニーズは……。


「エディット。あなたならわかるわよね? 私は、いい姉よね? アルレットなんかより上だったでしょ?」
「比べるまでもないわ」
「そうよね!」
「アルレット様と比べられるほどではないわ」
「っ、!?」


そんなことを妹が言うとは思っていなかったらしく、ドゥニーズは激昂していた。手をあげようとまでしていて、それを両親が見て怪我をさせかねないと使用人たちに追い出させながらも、凄い顔で暴れているのと自分が血の繋がりがあるのが、恥ずかしくて仕方がなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。

五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」 オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。 シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。 ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。 彼女には前世の記憶があった。 (どうなってるのよ?!)   ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。 (貧乏女王に転生するなんて、、、。) 婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。 (ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。) 幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。 最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。 (もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)

【短編版】憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜

降魔 鬼灯
恋愛
 コミカライズ化進行中。  連載版もあります。    ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。  幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。  月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。    義務的に続けられるお茶会。義務的に届く手紙や花束、ルートヴィッヒの色のドレスやアクセサリー。  でも、実は彼女はルートヴィッヒの番で。    彼女はルートヴィッヒの気持ちに気づくのか?ジレジレの二人のお茶会  三話完結

妹に婚約者を奪われたので、田舎暮らしを始めます

tartan321
恋愛
最後の結末は?????? 本編は完結いたしました。お読み頂きましてありがとうございます。一度完結といたします。これからは、後日談を書いていきます。

悪役令嬢の私が転校生をイジメたといわれて断罪されそうです

白雨あめ
恋愛
「君との婚約を破棄する! この学園から去れ!」 国の第一王子であるシルヴァの婚約者である伯爵令嬢アリン。彼女は転校生をイジメたという理由から、突然王子に婚約破棄を告げられてしまう。 目の前が真っ暗になり、立ち尽くす彼女の傍に歩み寄ってきたのは王子の側近、公爵令息クリスだった。 ※2話完結。

婚約破棄の夜の余韻~婚約者を奪った妹の高笑いを聞いて姉は旅に出る~

岡暁舟
恋愛
第一王子アンカロンは婚約者である公爵令嬢アンナの妹アリシアを陰で溺愛していた。そして、そのことに気が付いたアンナは二人の関係を糾弾した。 「ばれてしまっては仕方がないですわね?????」 開き直るアリシアの姿を見て、アンナはこれ以上、自分には何もできないことを悟った。そして……何か目的を見つけたアンナはそのまま旅に出るのだった……。

婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~

春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。 6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。 14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します! 前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。 【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】

婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~

ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された 「理由はどういったことなのでしょうか?」 「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」 悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。 腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。

妹に「あの男は危険」と注意するが、彼を溺愛する妹は結婚する「助けて!」嫁いだ妹から緊急の手紙が届いた。

ぱんだ
恋愛
クレア公爵令嬢にはローサという妹がいて婚約した。相手はリチャードという伯爵家の嫡男。 ローサから交際している彼だと初めて紹介された時に、この男はおかしい? とクレアは印象を抱いてローサに苦言を呈した。 リチャードは粗野な言葉遣いや無礼な態度で、始めから終わりまでクレアは行儀の悪い男だと呆れていたのです。 一見すると外見も整っていて格好良い感じですが、不意に下品な顔つきをする性格に問題ありそうな男だった。こんなのと結婚したらローサは苦労するだろうとクレアは心配していた。 「あんな男と結婚するの?」クレアが尋ねるとローサは「彼は勘違いされやすいけど本当は良い人だよ」と言う。 恋は盲目なんて申しますが、まさしくその通りだとクレアはしみじみ思う。度重なる説得に聞く耳を持たないローサはリチャードと結婚する。 妹が相手の家に嫁入りして五ヶ月後、便りがないのは元気な証拠だなぁと思っていたある日、助けてほしい! 命に関わる問題! と緊急を要する手紙が届いた。

処理中です...