婚約者のお姉さんには、悪意しかありません。それを身内だからと信じたあなたとは、婚約破棄するしかありませんよね?

珠宮さくら

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破棄をしてから、のんびりしていた。
すると釣書の中になぜか、あの公爵家からもあるとなり、家族で全員が驚いてしまった。

どうやら、マレシャルが修道院行きになった経緯をご存じなようで、一度会って話が出来ないかと言われて、会わないわけにはいかなくなった。

お会いするためにお屋敷へと向かう途中で、ふらふらと歩く令嬢を見つけた。1人で、しかも裸足なのが気になり、遅刻することは避けたいが、彼女が気になってしまい、馬車を停めて駆け寄った。


「あの、どうかされました?」
「……」
「その格好では、風邪をひいてしまいますよ?」


外を歩くには薄着の令嬢にブランケットを肩にかけてやると彼女は、にこっと笑った。


「ステラ!」
「?」
「こんなところまで、1人で来ては……。おや? 君は……」
「馬車から見えて、お声をかけていたところです。よかったですね。お迎えが来られましたよ」


立ち去ろうとするとステラと呼ぼれた令嬢に服を握りしめられてしまい、アリスは動くに動けなくなってしまった。


(困ったわ。約束の時間に遅刻してしまう。でも、このまま無理やり離させても可哀想な気もするし)


「珍しいな」
「え?」
「彼女が気に入ったのか?」


聞かれた令嬢は、こくりと頷いた。
その令嬢が、父が話してくれた心の病となって療養している女性だとわかったのは、屋敷に遅刻して到着した時だった。


(時間通りに着いても、彼女を探していたのだからお会いするのはあとになっていただろうけど。あんな出会い方をするなんて……)


公爵は、従妹がご機嫌でアリスにくっついているのを微笑ましそうに見ていた。他の使用人も、驚きつつ、笑顔になっていた。

彼女は話さない代わりにアリスを引っ張って案内を始めたのに困惑して、どうしたらよいのだろうと公爵を見たが、好きにさせてやってくれと頼まれて、そのようにした。

従妹はステラという名前で話すどころか、慣れた人間以外とは、触るのも触られるのも嫌がるらしい。


(つまり、相当気に入られたってこと……? どうしてかしら?)


わからないが、ステラが何かしたがることは何となくわかったアリスが、それに合わせて話をしていた。それにも周りに驚かれた。特に公爵のアイルは、従妹が気に入ったことがポイントが高かったようで、あっという間に婚約がなされて、半年もせずに結婚する日取りまで決まった。



結婚式の日にはステラの声を初めて聞けた。


「おめでとうございます」
「っ、ありがとう!」


感極まってアリスは、ステラを抱きしめて大泣きしてしまい、化粧直しに時間がかかって大変だったが、とても嬉しい驚きだった。

それから、少しづつステラの話すことが増えていき、公爵家は笑顔で溢れ続けた。



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