訳あり少女は、転生先でも散々な目に合う道を自ら選び続けて、みんなの幸せを願わずにはいられない性分のようです

珠宮さくら

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そんなことが、その女の子にあったのが数週間前のこととなっていた。ふと、その子が思ったことといえば、絶叫系が苦手な理由は、あの落下を毎回とは言わないが、不意打ちのように何度となく経験していたからのように思えてならない。

今回は生まれ変わっても、今までの記憶があるため色々と照らし合わせて、辻褄があうことばかりで、それを暇を持て余した赤ちゃんとなった彼女は思い返しては、毎回遠い目をしてしまっていた。


(まぁ、年齢制限やら身長が足りないやらで、絶叫系に乗ったことはなかったけど。あれのせいで、乗ろうって気も起きなかったってことよね。ノーロープバンジーなんて数年おきに経験してたら、そうなるわよね。あれで落下するか。ブラックホールみたいなのに吸い込まれるか。一瞬で
意識をもってかれたこともあったっけ。……どれも、最後に神様が楽しそうに笑ってる顔を見た気がするのよね。……嫌われてるわけじゃないわよね?)


そんなことを思い出して、トラウマとなっているようで身体が震えながら、嫌われてるからこそ、散々な目に合っていたのでは?なんて思い始めてすらいた。ちょっと、ネガティブになってしまっているようだ。

だが、それならば忙しいはずの神様が毎回わざわざ会ってくれていたのだ。嫌われてのことだとしたら、余程の暇人でしかない。


(人生をやり直してるようなものだから、仕方がないとしても、記憶があったままって、こういう時に辛いとまでは思ってなかったな。これは、精神力をごっそりもっていかれるわ。病院に入院していた時より、精神的に辛いかも……)


赤ちゃん時代なんて記憶がなくてもよかった気がしてならない。精神をすり減らして大変だったが、仕方がない。自分で、頼んでしまったことなのだから、今更誰に文句言うわけにもいかない。

記憶のことしか思いつかず、それを頼んだのは、自分なのだ。……もっと良く考えてからにすればよかった。だが、それ以上に良いことを思いつくわけでもなかった。むしろ、あの短時間でよく出てきたものだと思ってすらいた。


(それにしても、前の世界とは全然違うみたいだな。まぁ、別の世界っていうくらいだから、そっくりなところなわけがないけど。そっくりなら、私がここに来ることもなかっただろうし)


生まれ変わって、まだ日が浅いこともあり、目はおぼろげにしか見えてはいないが、耳はばっちり聞こえていた。

ここは、祝福と呼ばれる神様から最初に与えられる贈り物を持って生まれることが、当たり前のようになっているユヴェーレンという世界らしい。

平民でも一つ以上、貴族では複数持っている者がちらほらといて、それこそが貴族の中でそんな人が一族に現れると恩恵に預かろうとする者が馬鹿騒ぎするのが、当たり前のようになっていた。

更に貴族は、みんなが普通に魔力を持っていることが当たり前となっていて、魔力なしは貴族の恥晒しとまで呼ばれるほど、稀な存在となっているようだ。

まぁ、中には魔力はあっても魔法が使えない人間もいるようだ。逆に魔力が有り余っていて魔法が上手く使えないなんて人間もいるようだが、後者は殆どいないようだ。


(普通がいいって言おうとしてたのにお詫びと餞別だからって、与えられすぎてるわよね)


そんなことを思って、げんなりしていた。彼女は、祝福も、魔力も、この世界でぶっちぎりの1番になりそうなほど持っていた。まだ、そんなにたくさん持っていることがバレてはいない。これがバレたら、どうなることやらと思っていた。

それこそ、神様はよかれと思って与えてくれたのだろう。もしくは、心底不憫に思ってくれていたのか。すぐに戻って来られたら困ると思ってのことかも知れないが、いずれにしろ。大騒ぎされることは間違いなさそうだ。


(何となく、すぐさま戻って来ないようにしているのが、1番ありそうに思えてならないな。それと不憫がられたのもありそうだし)


それにこの世界へ来るための最初の贈り物が、その祝福なのだとしたら、直接受け取っておいて物申すのも失礼なのかも知れないが……。


(私としては、申し訳ない気持ちで毎回、対面していたんだけど。あんな短期間に行ったり来たりするのなんて、私くらいよね。絶対にそうに決まってるわ。私みたいなのが、他にもいたら……、ぜひ、お茶してみたいものだ。愚痴りたい)


覚えているだけでも、両手に余るほど早死していたのだ。最初と最後が、印象に色濃く残っていて、その間が全部思い出せないから正確に何回だったかを覚えてはいないが、神様が持っていた資料の分厚さからして覚えている倍はあったかも知れない。

それこそ、その時の家族のことや周りのことを全員覚えていないが、家族から大なり小なり愛されていたのは覚えている。


(まぁ、中には意地悪する兄弟や姉妹もいたけど。私ばかり親が構っていると思っていたんだろうな。あの時の私は病弱すぎたから、親を独占してるって思われても仕方がないよね)


そんなことを思って、転生してから色々と考えさせられることが多々あった。

そんなことを考えながら、彼女は……。


(早く自分でできるようになりたいな)


ミルクをメイドに飲ませてもらっていた。先は長そうだ。


(流石に胎内にいる時からじゃなくてよかったな。あそこに数ヶ月いたら、寝てるしかなさそうだもの。……そもそも、胎児の時期ってどうやって過ごすのが正解なんだろ?)


そんなことを思いながら、背中をトントンされて、ゲフッとゲップをしていた。何かを考え続けながらも、ミルクを飲むのをやめないくらい、この環境には慣れていた。そのうち、心地よくなりすぎて眠ってしまっていた。それが、彼女の日課になって、数週間が経っていた。

やりたいことはたくさんあるのにままならない日々を送っていたが、色々と慣れてしまっていることで、受け入れてしまっている自分の順応力の高さにも驚いていた。

もっとも、贖ったところで、どうしようもないのだから仕方がないとも思っていたのも大きかったのかも知れない。

そんなことを思っているなんて、周りの誰もが気づいてはいなかったことだろう。それこそ、そんなことを思っていることを知っていたら、大人たちは自分が疲れていると思うのが先かも知れない。

そんな赤ん坊が、そこかしこにいたらたまったものではないだろうことは明らかだ。


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