19 / 55
19
しおりを挟む「全く、あんなのを雇っていたとはな。しかも、アンジェリーカの方ができるからと自分のできなさを棚にあげて言うに事欠いて、化け物扱いするとは信じられん!」
「本当にそうね。できがいい子が娘で鼻が高いわ」
「全くだ」
両親が、そんなことを言っているのをアンジェリーカは聞いて、げんなりしていた。全く懲りてはいないようだ。
厳選して先生を選ぶようになったが、選ぶだけ選んだ後は、両親は全てを丸投げしていた。
世話は使用人たちがするばかりで、アンジェリーカに用もないと両親とは会うこともなくなったのも、日常と化していた。
扱いやすい娘になるまでは、金に物を言って他人に世話させ続けて、自分たちは娘自慢を至るところですることが忙しくて仕方がないようだ。
両親も、アンジェリーカの恐ろしさをまだまだ完全に理解しきれてはいないだけで、知っていたら同じようなことを言い出すようになりそうだが、今は興味が他所に向いていることにアンジェリーカは、ホッとするばかりだった。
(私は、あの人たちを飾り立てるアクセサリーってことね。そのために頑張っているわけではないのだけど。まぁ、今は、自分のためにできることを増やしていかないと駄目よね。でも、私に理解できないと思って教えようとしてくれる先生はいないのよね。……仕方がないけど、ばっちり聞いているのに)
アンジェリーカは、言ってもわからないとばかりに授業をしっかりする者はいなかったのだ。
使用人も、一緒にいるようになったのだが、きちんと授業をやる気のない先生方に賄賂をもらっているらしく、そんな態度の悪い先生が長らくアンジェリーカの先生となることになった。
その先生のやる気のなさっぷりにアンジェリーカは何かすることはなかったのは、どうせ同じようなのしか来ないと思って、しばらくはそのままにしておくことにしたのだ。
その間にアンジェリーカは、1人で立ち上がる練習を密かに始めていた。そう、まだ、この段階なのだ。魔力を上手く使えるようになるうんねんよりも、体幹を鍛えるとかしてほしいところだが、あの両親の要望が安全に使えるようになることのせいで、こんなことになっていた。
だが、そんな先生が使用人とイチャつき始めるのも早かった。時間を有効に使う方向を完全に間違えているのは、確かだ。
(私がいるんですけど?!)
「やぁー!!」
そんなことを思って赤面してしまったことで、暴走することになり、その騒ぎを聞きつけて両親がやって来て、半裸の先生と使用人を見て怒鳴る声が聞こえて来たのは、すぐだった。
「アンジェリーカ。大丈夫だった?」
母親がアンジェリーカを覗き込みに来て、顔を真っ赤にしているのを見てぎょっとして、熱を出しているとわかって、慌てふためかれることになったのも、すぐのことだった。
(あんなの聞いてたせいかな? 見たくなかった。何か、物凄く気持ち悪い)
そう思っていると吐いてしまい、更に大騒ぎになるのも早かった。
アンジェリーカは、そのまま高熱を出して寝込むことになり、あの二人は解雇されたようだが、アンジェリーカの側で二人の話をする者は現れることはなかった。
使用人たちも、世話をしている子供の側で、しかも仕事中によそ事をするような面々は論外だと思ったようだ。
寝込んでから、ぐったりしているアンジェリーカに付き添い続けてくれていたのも、年若いメイドが1番多かった。
その間、両親は自分たちは医者でも何でもないからと専門家に任せっきりで、報告を聞くばかりでアンジェリーカのところに足繁く通って、どうしているかを顔を見て判断することもなかった。
(確かに医者の資格はないだろうけど、実の娘が具合悪くしていたのを知っていて、祝福にも魔力にも対して影響ないとわかると放置するって、最低な親がいたものだわ。これまで、我が子を放置して自分たちのことを優先する親に会ったことなかったけど、こんな親もいるのね。……知りたくもなかったわ)
アンジェリーカは、そんなことを思っていた。今世の両親は、これまで出会った親の中でも最低最悪なことは間違いない。
そして、この世界ではこれが貴族の普通のようになっているようだ。これでは、ろくな人間に成長するわけがない。もはや夢も希望もない気がしてきて、アンジェリーカの目は益々輝きを失い始めていくばかりだった。
2
あなたにおすすめの小説
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
【完結】私が誰だか、分かってますか?
美麗
恋愛
アスターテ皇国
時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった
出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。
皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。
そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。
以降の子は妾妃との娘のみであった。
表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。
ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。
残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。
また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。
そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか…
17話完結予定です。
完結まで書き終わっております。
よろしくお願いいたします。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる