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しおりを挟むアンジェリーカは、ずっと念願だった成人を果たすことができた。思っていたような成人ではなかったのは確かだが、それでも祝ってもらえた。
祝ってくれた人たちの恩人だったとは言え、今やアンジェリーカの恩人となっているシルヴィオやアリーチェの家族たちのアンジェリーカのことを好いてくれている面々にお祝いされた。それは誕生日をお祝いされるのとは違う嬉しさがあることをアンジェリーカは初めて身をもって知った。
(成人って、こんな感じなんだ。なんか、思っていたのと全然違うけど、嬉しいのは変わらないかな。今の私にお祝いしてくれる人がいてくれるだけで有り難いな)
思っていたものと違っていたが、全力でお祝いしてくれる人たちの気持ちがアンジェリーカは嬉しくてたまらなかった。
学園の卒業まで、あと少しだった。本当に少しのところだった。アンジェリーカは座学が1番でも、実技がどう頑張っても1番最下位となってしまうのだ。魔力がないものは仕方がない。順位は酷かったが、それでも留年することはなかったのは、留年された方が学園としては迷惑だと判断されたからのようだが、それでも卒業するのは決まっていた。
そう、卒業までカウントダウンが始まっていて、浮かれていたのかも知れない。いや、かもなんてではない。確実に浮かれていたのだ。成人もして、卒業もできると決まっているのだ。
更に病気で身体が不調をきたしているわけでもない。身体はピンピンしていて、風邪だって滅多に引かないほどだ。怪我は、毎日学園で大なり小なり負っていたが、大怪我ではなかったため、卒業式に出れないことになるなんてことをまるで考えていなかったのだ。
そのせいで、あんなことになって卒業式に出ることが叶わないことになるとは想像もしていなかった。
それに次の叶えたい願いごとなんて、アンジェリーカは考えていなかったのも大きかったのかも知れない。
大人になったら、ちゃんとした仕事をしたいと思ってはいたが、アリーチェの子供たちの家庭教師も楽しかった。あのまま、理解を得られた人たちの子供の勉強を見ている人生もいいかも知れないとは思っていた。
死んでしまえば、そんなこと思っていたところで虚しくなるだけでしかないが。
(変な気分。以前まで、ここまで長生きしたことがなかったのよね。これから、どうなるんだろう?)
アンジェリーカは、真っ白い世界にいた。前の世界と違う異世界に生まれたからか。前と同じようなところとは違っていた。
どこに行かなければならないのかを身をもって知っていたアンジェリーカは、ここに来たら必ず会う人のところに自然と向かっていた。
(この扉には、思いっきり見覚えがあるな。……1人でここに来たのは初めてだわ。何というか。慣れすぎよね)
そんなことを思ってしまったが、今回はその扉を開けて中に入ることを躊躇われてならなかった。入らなければ何も起こらないわけではないし、ここにいても埒が明かないのはよくわかるが、まだ心が追いついていなかった。こんなことは初めてだった。
「そこにいたら、顔を見て話すこともできない。さっさと入って来い。それとも、顔を見せてはくれないつもりか?」
「……失礼します」
聞き覚えのある懐かしい声がして、アンジェリーカは意を決して部屋に入ることにした。泣きたくなるのをグッと堪えながら、思ったことといえば……。
(ここにいるってことは、そういうことだよね)
アンジェリーカは、ユヴェーレンの世界で初めて成人した姿で神様に会うことになった。あの世界でお気に入りの服が真っ白にしたものを着ていたのを見て口を真一文字にした。
成人してからここに来たが、全く喜べないアンジェリーカが気にしていたのは、恩人たちとエルフたちがどうなったかだった。
(祝福と魔力って、私がいなくなったら意味をなさないってことになるのかな……?)
生まれて初めて、まだ死ねないとアンジェリーカは思ってしまった。ここにいる時点で、死んでいるはずなのになぜか、まだ死ねない。死ぬわけにはいかないとアンジェリーカは思ってしまうまで早かった。
「そんな顔で、ここに来たのは初めてだな」
「神様」
アンジェリーカは、懐かしい人物に会って、色んな意味でいっぱいいっぱいになってしまい、彼を見るなり大泣きしてしまった。
「大人になって来たかと思えば、前より子供のようだな」
「っ、」
そんなことを相変わらず同じ姿をしている彼に言われて、涙は中々止まることはなかった。
アンジェリーカは、部屋に入るなり崩れ落ちるように泣きじゃくっていた。
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