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しおりを挟む(ラウラの兄視点)
やっと厄介な妹がいなくなったと思って安堵していた。アデル国では、喜ばれることのない気味の悪い髪と瞳をした妹。誰もそんな暗い色をしていないせいで、見たこともなかった。
生まれる前まで楽しみにしていたというのに。生まれてから、両親が散々に言うのを聞いて、そういうものだと思って、次の妹に愛情を注いだ。
そんな末の妹が王太子と婚約した。その後で、私もようやく婚約できた。この国で美人の上位に位置する令嬢だ。
それもあって、周りから羨ましがられた。妹が王太子妃になることが確定して、私は美人な婚約者を得たのだ。順風満帆だと思っていたというのにそれは長くは続かなかった。
「は? また、それを買うのか?」
「また? これは、最新のものですけど」
「だが、先月も似たようなのを買っただろ」
「ですから、最新のものです」
「……」
色違いだと言われて買わされ、新しいものが出たからと買わされ……。出かける度に似たりよったりなものを買ってくれとせがまれて、すっかり疲れてしまった。
かと言って、出かけるのを先延ばしにすれば……。
「どこにも連れて行ってもらってないらしいわ」
「あんなに色々買ってもらっていたのを自慢していたのにね」
「でも、毎回似たりよったりなのを強請っていたら愛想もつかされるわよね」
そんなことを言われているのを悔しそうに聞いているのを見かけて、令嬢たちと付き合うのに見栄も必要なのかと思った。女の園は、あんなことで張り合っているのかと思っていたりもしたが、そうではなかったようだ。
「あら、知らないの?」
「? 何のこと?」
「彼女、似たりよったりなのを買わせるのは、いつものことよ。それを売り払って、本命の子息に貢いでいるのよ」
「え? 本命?!」
私は、立ち去ろうとしていたのをやめて全部聞いてしまった。彼女は、元から付き合っていた子息がいて婚約するなら、その子息としたかったらしいが、男爵子息のところに嫁ぐより、子爵家の方がまだマシだろうと両親に説得されて渋々婚約したらしい。
それを聞いた時に腸が煮えくり返りそうになった。それが事実なのかを確認する気にもなれずに放置して申し訳ないと思っていたのも綺麗さっぱりなくなって、そのままにしていた。
そんな時に妹が婚約破棄になったと聞いたが、関わりたくて部屋にいた。すると両親と妹が大喧嘩する声がしたが、それでも部屋から出ることはなかった。関わりたくなかった。
数日して、妹を見かけないと思っていたら……。
「……今、なんて?」
「だから、修道院に入れた」
「修道院……?」
あぁ、だから見かけないのかと思った。それだけだった。
王太子と婚約したのに勉強をやることになるなんて知らなかったかのようにしていて、頑張っていると言っても全然できていなかった。学園の成績も悪くなる一方で、これから先のことを考えれば妹に王太子の婚約者は荷が重すぎたのは明らかだった。
その上、大喧嘩していた理由が両親の学生時代は何でもできていたという嘘を妹が知っていたことで、一番腹を立てたことまでわかって、更に呆れるしかなかった。
「お前は、跡継ぎなんだ。しっかりしてくれ」
「そうですよ」
「……わかってます」
そう言いながら美人だけど、中身は屑な令嬢のご機嫌伺いなんてする気にはなれなかった。
すると向こうは、妹が王太子との婚約が破棄になったのを好機とでも思ったようだ。婚約を解消してほしいと言い出した。
それに腹が立って仕方がなかった。本命と婚約するのにチャンスだと思っていると思って、婚約している間に浮気をしていた証拠を調べ上げて、あちらの家に送りつけてやった。
すると婚約は破棄となり、元婚約者となった令嬢はそれでも本命の子息がいるからいいと開き直っていたが、その本命の子息にあっさりと捨てられたようだ。元より、本命の子息の方は貢ぐだけ貢がせていたようだが、それが滞った途端、別の令嬢と婚約していたらしく、それを知って元婚約者は大暴れしたようだ。
「全く、とんでもないのと婚約していたな」
「えぇ、本当ですよ」
婚約が破棄になってから、両親は元婚約者のことをボロクソに言っているのを聞かされ続けていた。
婚約破棄をしたいと言っても聞く耳を持たなかったというのに現金な人たちだ。相手の家に証拠を送りつけてから、証拠を見せても、まだグダグダ言っていたのが嘘のように今は、周りの言っているようにあの令嬢とその本命の子息のことを悪く言うのに忙しくしていた。
本命だった子息は、何食わぬ顔をして、知らぬ存ぜぬを貫いていた。
でも、その婚約者の方は全く知らなかったらしいが、婚約している令嬢はその貢いだもので色々と買ってもらっていたことを知り、何かと婚約者に買ってもらったものを自慢していたようで、周りからあれこれ言われていることに耐えかねたようだ。
婚約を解消しようとして、子息の方がしたくないと粘っているようだ。私には、どうでもいいことだが。
そんなことがあってから、次に婚約した令嬢と結婚することになったが、何とも思うことはなかった。
最低だが、妹たちが、どうなったかなんて気にもしなかった。
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