あやかしの王子の婚約者に選ばれましたが、見初められるようなことをした記憶がなかったりします

珠宮さくら

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(結局、全部を一人で荷ほどきしたわ。……この人、いつ帰るんだろ?)


手伝いをしてくれる気は全くしないまま、天音がやること成すことを傍観し、二度手間どころか、要領悪く動くさまを見て一度や二度どころか、何度も笑っていた。その笑い方は明らかに天音を馬鹿にしたものだった。


(もう、隠すこともなくなったわね。まぁ、仕事にしてる本業の人からしたら、要領は物凄く悪いでしょうけど)


もう、怒る気力もなく、疲れた天音は休みたかったが、帰る気のない女性に困惑していた。

コンコンコン。


(……誰? というか、動く気はないみたいね)


天音は、ちらっと動く気のない女性を眺めて、何度目かになるため息を押し殺して、疲れきった身体を起こして、ドアを開けた。

そこにいたのは、あやかし王子こと八百万義仁の執事と名乗る青年がいた。


「初めまして、三觜天音様。私、八百万義仁様つきの執事、犬飼と申します」
「は、初めまして」
「……失礼ですが、お一人ですか?」
「え? いえ……」


犬飼は、部屋の隅にいた女性が天音の後ろに素早く控えてドアの影にあたかもずっといたかのように立っていた。


(早っ!?)


チラッと執事は、それを確認して、眉を顰めたが、すぐににこやかに天音を見た。


「天音様。こちらは、義仁様からです。お部屋に置かせていただいても?」
「あ、はい」

天音は持とうとしたが、それを良しとせず、更には天音の部屋にいた女性がさも当たり前のように持とうとするのを許さずに一緒に来た者に犬飼は目配せをした。


「お前は、いい」
「っ」
「失礼いたします」


天音に確認を取りながら、贈り物の花を飾ってくれた。


「とても綺麗。あの、殿下にお礼を伝えていただけますか?」
「それでしたら……」


そこに義仁の妹であるあやかし王女、八百万蓮加がやって来た。彼女もまた、姿を見せない一人と言われていたが、兄よりもメディアに出ていて天音も顔は知っていた。それでも、彼女の登場に驚いてしまった。


「これをお兄様が見初めたの?」
「……」


(これって、私のことよね?)


何やら不服そうにしていた王女だったが、天音がしているネックレスを見て驚いていた。


「?」


そこから、剣呑にしていたのが、突然和らぎ、別のことに目がいったのは、すぐだった。


「……ちょっと、その手、どうしたの?」
「え? あ、これは、荷物を開けた時に切ってしまって」
「は? 荷ほどきをあなた自身がしたの? ちょっと、犬飼!」
「申し訳ありません。こちらから、手伝いに使用人をつけたのですが、仕事をしていなかったようです」
「そんなのをつけるなんて、お前のミスよ! 怪我をさせたことが、お兄様に知られたら大変なことになるわ。すぐに手当てをしなさい」
「え? そんな、ちょっと切ってしまっただけですから」
「駄目よ。お兄様は、そういうのを許さないわ」


この時の天音は、何をそんなに慌てることがあるのかと思っていたが、そこに王子がやって来て、大変なことになるとは思いもしなかった。


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