命ある限り、真心を尽くすことを誓うと約束させた本人が、それをすっかり忘れていたようです。思い出した途端、周りに頭の心配をされました

珠宮さくら

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「え? どうしたんだ?」


次の日、学校で透哉にぎょっとされた。彼だけではない。芽衣子は、色んな人にそんな目を向けられ、声をかけてきたのは透哉が最初ではない。


「……捻挫です」
「え? ギブスしてるのに?」
「捻挫なの。酷いから、ギブスした方が治りが早いって言われて」
「何があったの?」
「……転んだの」
「あー、そう、なんだ」


透哉は、昨日のことを思い返していた。彼だけではない。クラスメイトたちも、天唯が芽衣子をおんぶして保健室に運んで行ったのだ。ギブスをして次の日やって来れば、妙に納得してしまう。


「っ」
「大丈夫?」
「えぇ、何とか」


芽衣子は席に座ろうとしただけで、ギブスした方に体重をかけてしまって、蹌踉めいてしまった。それを支えてくれたのが、透哉だった。

天唯は隣のクラスとはいえ、クラスが違うのだ。普通にしていても、転ぶような芽衣子だ。見かねた透哉が何かと手助けをしてくれた。移動教室になれば、荷物を持ってくれたりした。

色々してくれているが、やはり幼なじみとは違う。芽衣子は、申し訳なさが半端なかった。


(物凄く疲れたな)


色々よくしてくれているというのに芽衣子は、そんなことを思ってしまった。

帰りの時は、天唯が見計らったようにやって来た。


「もう、帰れるか?」
「あー、えっと、寄り道してもいい?」
「芽衣子。治ってからにしろ」
「予約してるのが来てるの」
「なら、来週でもいいだろ。1週間はそのままだ」
「……あー、それが、予約が来てる連絡が先週来てて」
「つまり、今日までだと?」
「ごめん。でも、何週間も待ったの」
「……わかった。なら、お前を家まで送ってから、取りに行ってやる」
「天唯」
「行くから、お前はしばらく大人しくしてろ。そのギブスが外れるまでは、特に大人しくしてるんだ。できないなら、図書館はなしだ」
「……」
「グダグダ言うなら、おばさんに言う」
「っ、」


天唯の言葉に芽衣子は、何とも言えない顔をした。だが、天唯はじっと芽衣子の目を見ているだけだった。


「……わかった。大人しくしてる」
「約束は絶対だからな」
「わかってる。約束破ったら、コレクションの本を売るって言うんでしょ? そんなことしなくていい。その本に誓う。だから、予約した本をお願いしてもいい?」
「なら、さっさと帰るぞ。その前に帰す本は?」


そう言った天唯に芽衣子は、あっという顔をした。それだけで、幼なじみは全てを悟ったのは早かった。


「家だな」
「……ごめん。借りることしか考えてなかった」
「いい。なおさら、早く帰ろう」
「あのさ。浅見さん、図書館って、駅の近くの?」
「えぇ、そこだけど」
「僕も、今日行くんだ。借りる余裕があるなら、僕が行って来るってのは、どうかな?」


透哉が、そんなことを言い始めて、芽衣子は困った顔をした。


「あー、でも、そんなの悪いから」
「芽衣子。返さないと借れられないのか?」
「そんなに借りても読み切れないから借りてない。でも、返却するのはある」
「それは、今日までか?」
「ううん。違う」
「芽衣子。早く帰って、チビ共に1人でまとわりつかれるのと2人でまとわれるのなら?」
「……」


天唯に言われて、芽衣子は視線を彷徨わせた。幼なじみに言われて、答えが見つかった顔をした。深く考えれば答えは、すぐそこにあったのだ。


「えっと、お願いしてもいい?」
「もちろん」


芽衣子は図書館に行くのを透哉に頼むことにしたのは早かった。


「芽衣子。図書館のカードは?」
「えっと、これ」
「預かる。君も、何か代わりに借りようか? あー、えっと」
「狩野だ。俺はいい」
「そうか。僕は、諏訪。じゃあ、また、明日」
「えぇ、諏訪くん、本当にありがとう」
「気にしなくていいよ」


芽衣子は、天唯に手を借りて帰宅した。

すると芽衣子は弟妹たちにまとわりつかれたが、それを天唯がどうにかしてくれた。


(諏訪くんに頼んでよかったわ。天唯が、本を借りに行ってたら、私が玩具にされてた。この子たい、私には容赦ないのよね。怪我してるのに容赦ないし、心の傷を抉るのも上手いし)


そんなことを思って、げんなりしていた。


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