前世のことも好きな人を想うことも諦めて、母を恋しがる王女の世話係となって、彼女を救いたかっただけなのに運命は皮肉ですね

珠宮さくら

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サラッとどこぞの親子連れが困っているのを見て、その子供の世話をして、夫人を気遣い解決して颯爽と消えたという噂が流れた。

誰が、そんなことをしているのかと思えば、それはいつもジャファルだった


(ジャファルは一体、何をしているの? ……理由がなくて、するわけがない。ならば、目的があるはず)


アイシャは、それに思案した。率先して人助けをする男ではない。その夫人が好みだったのか。いや、夫人は、子連ればかりをねらって助けているようだ。

そうなれば、誰かが見ていたからか。噂を聞いて、好感を持ってほしい誰かがいるのではないかとアイシャは思った。

それか、こうして噂になれば、素敵な子息だと思われて婚約したい者がいるなら、悪いようにはならないはずだ。


(そう、よね。ジャファルに婚約者がいないのが、そもそもおかしいのだもの。…とっくにいると思っていたのに)


婚約者がいないと知って喜んでしまったが、アイシャは王女なのだ。今は貴族としてではなくて、王族として生きねばならない。

アイシャは、そんなことを思案しながらも、日常となった日々が変わらないようにしていた。


「素晴らしいな。お前の歳で、これを読破して、ここまで理解するとは」
「……」


国王は、勉強をするようになったアイシャの頭の良さに脱帽していた。

ファティマが死んでから、絶叫して以来、その声を発することはなくなった。だが、前のように何を求めているかを言葉にしてくれればわかりやすかった。

態度でもいいから、何がほしいのかを教えてくれたなら、国王は与えられるものならば与えようとした。

だが、アイシャは言葉にも、態度にも見せなくなった。その代わりのように知識を詰め込もうとしているように見えた。


「アイシャ。私は、まだ、お前の父か?」
「?」
「父だと思っているのなら、心を閉ざさず教えてくれ」
「……」


だが、アイシャは泣きそうな顔をするだけだった。

それを問うことすら、娘を苦しめることに繋がるのかと思い、国王は何に思い悩んでいるのかがわからなかった。

それも、そのはずだ。アイシャの中身はファティマなのだ。

前世で、記憶をなくしていたのが蘇り、自分が愛してやまなかった存在を思い出し、その人と添い遂げて幸せになったはずなのに。また、ここに戻って来て、王女になっているのだ。


(私が、ここで幸せになるなんて、許されるはずがない)


そう思って、アイシャとして生きようとすればするほど、国王も、2人の兄たちも、悲痛な顔をした。

王子たちは、ファティマにしたことをようやく理解していた。それをしたのも、ジャファルだ。姉が亡くなった時に何もわかっていないのにぶちギレたのは、彼だ。

それで目が覚めた双子は、本気になって婚約者を探して今は、それなりにしているが婚約者からは……。


「全然、頼りにならない」

「見た目に騙された」


双子の婚約者たちからは、婚約してから評価がだだ下がりになっているようだが、それすら気づいていない。その理由の殆どが、妹が心配だからと言っているせいだ。

ジャファルに説教されても、彼らは全く変わっていなかった。

婚約者への不満が、今度は王女に注がれることになったのだが、兄たちはそんなことをしている自覚がないままだった。


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