醜くなった私をあっさり捨てた王太子と彼と婚約するために一番美しくなろうとした双子の妹と頼りない両親に復讐します

珠宮さくら

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そして、城に着くなり医者に彼女を見せた。知らせを聞いた王宮では、殿下と呼ばれた青年が怪我をしたのかと思ったようだが、ぐったりした女性を抱きかかえて現れたことで違うとわかって、ホッとされたのにイラッとせずにはいられなかった。

医者は、ホッとなどしていなかった。すぐに部屋に運んでほしいと言われて、そこに寝かせた。


「これは、縫わないといけないな」


部屋を出ようとした殿下の耳に聞こえたが、足を止めることなく退出した。もう、殿下にできることはない。

国王に報告して、他にもやるべきことを済ませて、戻って来ることにして足早に移動した。そうでなければ、やることがないと気が変になりそうだった。

凄い形相だったようだ。国王には、危険なことをするなと怒られてしまったが、護衛に命じたところで竦んでいたのだ。さっさと動いた方がよかったのは確かだが、王太子としてやるべきことではないと王妃にも言われて謝罪した。


「それで、その令嬢の具合は?」
「……まだわかりませんが、顔の傷は縫わねばならないようです」
「まぁ、顔に怪我をしたの?」
「はい」
「見ず知らずの少女を庇うのに自分のことをかばえなかったのだろうな」
「……」


国王の言葉に眉を顰めずにはいられなかった。2人共、物凄く心配していた。

あれだけの馬車の事故だ。死人が出なかったのも奇跡と言えるだろう。

大広間から移動していると弟に遭遇したが、相変わらず嫌味というか。女のことだけにしか興味なさげで、顔に怪我をしたと聞いた途端に興味が失せたようでいなくなったのを見て、腹が立って仕方がなかったが、逆にそれで煩わしくならないと思えば、それでいいかと思うことにした。

弟の後に医者に会った。処置を終えていたが、付き添っていた。


「できる限りのことはしましたが……」
「跡が残るのか?」
「……はい」
「そうか。……他に傷跡は?」
「他ですか? 全身打撲はありますが、傷跡として残るものは、縫った傷だけですが」
「……そうか」


殿下と呼ばれた青年は、あの時の光景を思い返していた。仮面を付けていたらしい令嬢は、顔から血を流していたが、とても美しかった。

あまりの美しさから、色々あって仮面を付けて隠しているのだと思った。でも、先ほどの国王たちや弟には、仮面の話をしてはいない。

仮面と聞いて誤解しかねないと思ってのことだ。特に弟は、エイベル国のかつてあの国どころか。この世界でも一番美しい令嬢と騒がれていたが、醜い顔となって仮面をつけるようになったと知っているのだ。

その令嬢とは思えないが、変な誤解をされるのも面倒になると思って誰にも言ってはいない。証拠は谷底に落ちた。見つかりはしないだろう。

エイベル国に顔を醜くした公爵令嬢がいると聞いたのは、いつのことだったか。

その令嬢とは別だろう。あの事故の時以外の顔の傷はなかった。

腕の良い医者だ。治った跡があれば気づかないわけがない。ならば、本当になかったのだ。

それが何を意味するのかを考えないことにした。


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