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『認められた皇女』
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しおりを挟む(他所から来たから、知らないことだらけなのでしょうけど、そんなのが母親だから皇帝が中々皇太子にできないなんて思わないみたいね。一番足を引っ張っているのは、彼女のやっていることだというのに)
そんなことを思いながら、その話を聞いて、こう言った。
「……そう、気を遣わせてしまったのね」
「皇子は、とても良い方ですよ。皇女殿下と同じく、何でも一生懸命で、ご自分も休みを取らずにいたようで、最近おやつを食べることを始めたのだとか。和気藹々としておられて、あちらの侍従が、そんなことを申しておりました」
ズールイは、そんなことを言った。きっと、母親とは全然違うと言いたいのだろう。
「そう、あちらの侍従とは、あなたはここに入った時からの仲だったわね」
「はい。あー、あれは、気を抜いて要領よく生きるのが上手いので、皇子が毒されないかが心配なのですが、良い面を引き出すのも上手いようです」
ズールイの言葉に心配しながらも褒めたが、ディェリンは……。
(皇子が、何かにそんなにすぐに染まるなら、それだけのことよ)
それを言葉にせずに別のことを言った。
「そう、面白そうね。わかった。休憩にするわ」
それにズールイは、言い過ぎたと思ったようだが、面白そうだと言うのに苦笑した。
ジュエランは、ディェリンが休憩することに喜んで、すぐにお茶を準備させるとはりきった。
物心ついた後から、皇子は朝と夕にきちんと挨拶にディェリンのところに来ている。でも、扉越しでの挨拶で、決して会おうとしなかった。
(てっきり会いたくないものと思っていたけど)
年も近いから、皇子はディェリンの顔を見るのを遠慮していたことを知って、そこから部屋に入っていいと言うようになった。
だが、対面を避けた挨拶のみにしたいと言われ、他に人がいても長居すれば、あらぬことを言われかねないと言うのだ。それを聞いて、母親越しに兄皇子を見てしまっていたとは思った。
そして、今回のことだ。周りの評判を地道に上げることにしたのかも知れない。
(母親があぁだから、そう見せることで見える景色を少しでも良くしようとしているのかしらね。それとも、ただ本当に兄妹だから気遣っているだけなのか。わからないわね)
ディェリンは対面した会ったことがないため、何を思ってやっているのかが、いまいちわからなかった。
疑いたくないが、彼の母親も上手く隠せばいいのだ。それをやる気がないのを利用している可能性がある。どんな粗悪なものでも、使い道はある。
ディェリンは、そんなことまで考えたくなかったが、皇子の母親とやり合うのにそれも必要になりそうで、これを活かすことにした。
「皇子のところに遣いを」
「皇女殿下?」
ズールイは、いきなりのことに驚いた。今まで、皇子のところに遣いなど出したことがないのだ。
「外で花見をしながら、頂いたお菓子を食すから、ご一緒したいとお伝えして」
「っ、」
「急だから、駄目ならいいの。断られたら別の日にする。そうね。丁度、私の庭は見頃だから、ここに呼んでみて」
「わかりました!」
いつも、見頃なのだが、丁度いいとばからにした。それを聞いて、ズールイが大慌てで皇子のところに行った。
ジュエランは、ディェリンの側にすぐに寄って来た。
「皇女殿下」
「花見の準備を庭にして」
「すぐに準備いたします」
「それと毒見をしておいて」
「済ませております。全てのものを確認をしましたが、毒の反応はありません。毒見も済ませてありますが、今のところ問題なさそうです」
皇子からしてジュエランも、それを気にしたようだ。
(全く、嫌なところよね。腹違いの兄のやることなすことに疑を持つなんて。でも、あの女の息子だし、いつそちらに落ちるかわからない。そんなのに巻き込まれたくないけど、今は仲良くしていて損はないでしょ。他に弟もいないんだし)
ディェリンは、側妃の何人かは、懐妊中だと聞いていた。全員、生まれるのは男だと思っていた。
だって、皇女は既にいるのだ。必要ない。
それに皇女が生まれたとわかったら、皇子の母のことは言えないほど暴れる自信しかなかった。
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