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『隠された皇女』
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しおりを挟むそれは、実家でもそうだった。嫁ぎたいところは決まっていたから、側妃となるのを回避したかったのにそれだけが上手くいかなかったのだ。
今更、色々言っても仕方がないことだが、その人の妻になることを夢見て生きてきたジンリーにとっては、皇帝の側妃なんて嬉しくもなかった。
ましてや大した力もないのに名声や地位や出世欲に駆られた父の道具として扱われたことで、こんなことになったことを許す気にはなれなかった。
そもそも、後宮を去る許しをもらえて、最後まで皇帝ら側妃としか呼ばれなかったから、その程度でしかなかった男と実父は似ていた。
そこが1番嫌いなところだったことに誰も気づいていない。
この後、ジンリーは預けていた我が子と再会して、街で静かに暮らし始めた。
ジンリーの実家に戻ったわけではない。いや、一度顔を出すことにはなったが、それも酷い話だった。
「せっかく授かった皇帝の子を殺してしまうとは、お前など私の娘ではない!」
「……」
一度、後宮に父がやって来て、そんなことを言った。元々大して期待されずに育ったが、懐妊の知らせを聞いて、大喜びで会いに来るようになった現金すぎる父に呆れていた。
それが、死産した娘にそんなことを言う父の娘でいたいわけがない。出産の日を誤魔化したから、そんなことを言われても耐えられた。
そうでなければ、耐えられはしなかった。あんなことを平気で言える人だ。
こんな男に娘の存在を知られたら、皇帝に知られるよりもまずいことになる。浮かれきった父に暴露されて、呆気なく一族郎党皆殺しにされるのがオチだ。
後宮を去る時は、あの子のところに行くことで頭がいっぱいだった。
でも、私の娘ではないと言っておきながら迎えを寄越していたのだ。それには、ジンリーは何とも言えない顔をしてしまった。
仕方なく一度、実家に戻った。
父は、後宮で娘ではないと言った癖に何事もなかったようにジンリーを歓迎してやると言わんばかりの態度だった。
母は、ジンリーを見るなり大泣きして抱きしめてくれた。
「大変だったわね」
「……」
ジンリーは、こんな母を知らない。覚えている母は……。
「また、本を読んでいるの?」
「……」
「歴史なんて、過去の遺物を読み漁るより、現実を見なさい。お父様が、あなたの嫁入り先を探すのにどれほど苦労していることか」
「……」
器量もそこそこ、愛想もない。だから、必死になって嫁ぎ先を探していると何度言われたことか。
既に将来を誓い合った人がいることを話していないから、言いたい放題されていた。
「また、本を読んでいるわ」
「あんなものばかり読むより、もっと身なりに気を使ってくれればいいのに。私たちが、旦那様や奥様に叱られるわ」
母も、使用人たちも、そんな感じだったのをよく覚えている。最低な人たちだったはずだ。
それが、全然違っていた。
後宮から去るのに実家にあれこれと送ってくれたもののせいだった。
それで、こうして掌返しのように歓迎されているのだ。
そんなもので、自分を娘として受け入れようとしている面々にこんな人間には、あの子を育てはしないと思うばかりだった。
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