歴史から消された皇女〜2人の皇女の願いが叶うまで終われない〜

珠宮さくら

文字の大きさ
34 / 50
『隠された皇女』

10

しおりを挟む

ご飯を頼んで怪我の手当てをされようとしているハオランは、武官を目指している若者だ。

父と兄は文官をしていて、そっちの家系で初めて武官を目指している。

だからといって頭が悪いわけではないが、最初の頃は女心どころか。脳筋と呼ばれるような子息だった。成長したものだ。その頃は、武官になるのに頭脳は、そんなに必要ないみたいだったが、それではよい武官になれないとわかったようだ。

リーシーが何か言ったわけではない。


(私は特になにもしてないけど)


特に普通に接していた。むしろ、彼にちょっと面差しが似ている彼の兄とのやり合いの方が、面白いことになっているか、この調子だと……。


(お兄さんが来てるのは、知らなさそうなのよね)


そんなことを思ってみていた。特に内緒にしてくれと言われていないから、あちらも知らないのか。


(いや、あれは、バレるまで楽しむタイプよね)


弟でも遊べるものは、おもちゃにするような男だが、それでいて……。


(どうにかしたいことには、情熱的なのよね)


そんなことを考えていたら、ちょっと考え込んでしまったようだ。


「薬箱貸してくれれば、自分でやる」
「なら、訓練場に薬箱を置いたら、どうですか?」
「……」
「そこで、怪我した人たちで手当てしあったら、いいと思うんですけど」


リーシーは、前々からそう思っていた。それを聞いて、ハオランは眉を顰めた。そして、こう言った。


「それは、絵面が悪いだろ」
「絵面??」


(いや、そこで、絵面って何よ。良からぬことをするわけでもないのに。……いや、待てよ。むさ苦しいのが、寄り添って訓練上がりに手当てしあっていたら……)


想像して、腐女子が喜びそうだと思ってしまった。リーシーは、そこまでの腐女子ではない。そこまでは、というところを強調しておく


「それにあらぬ誤解をされて噂になったら、立ち直れなくなる」


ハオランは思わず、そんなことを言ってしまった顔をした。すると店のそこかしこで想像したのか吹き出していた。


「??」


リーシーだけがわからない顔をしていた。


(うん。わからない。私は、わかりません)


吹き出す中に身なりのよい若者のお付きもいた。

彼は手からして、武官を目指しているはずだ。だから、そういうことになったら、嫁をもらう時に困るのとかも、よく知ってそうだ。


(年齢からして、ハオラン様より、あちらが上っぽいけど)


「リーシー、運んでくれ」
「はーい。ちょっと待っててくださいね」


パタパタと小腹が空いたと言っていた人のところにそれを出した。


「お待たせしました」
「あの、お茶を頼めるか?」
「え? あ、すみません! すぐにお持ちしませね」


お付きの方が、お茶というのは珍しかった。いつもは、リーシーから話しかけないと答えてくれないのだ。


(しまった。お茶を忘れてた。早く帰ってほしいのが出てた)


だが、あちらは忙しいと思ってくれたようだ。


「おい」
「っ、すみません」


お付きが茶を頼んだことに若様に謝罪していた。


「お待たせしました。どうぞ」
「あぁ」
「どうも」
「いいえ」


そう言いながら、リーシーはハオランにもお茶を出した。


「ハオラン様、どうぞ」
「あぁ、ありがとう」


ハオランは、ギロッと睨まれたことに気づいて、そちらを見た。そういうのに鋭くないとやってはいられないのだろう。


「じゃあ、手当てしちゃいますね」
「あぁ、頼む」


言いながら、ハオランはリーシーの方を見ずに、若様の方と睨み合いをしていた。

それにリーシーが気づくことはないように見えて……。


(もっとわからないようにしてくれないかな)


バッチリバレていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました

ねむ太朗
恋愛
伯爵令嬢のリリアーナは、小さい頃から、妹のエルーシアにネックレスや髪飾りなどのお気に入りの物を奪われてきた。 とうとう、婚約者のルシアンまでも妹に奪われてしまい……

【完結】先に求めたのは、

たまこ
恋愛
 ペルジーニ伯爵の娘、レティは変わり者である。  伯爵令嬢でありながら、学園には通わずスタマーズ公爵家で料理人として働いている。  ミゲル=スタマーズ公爵令息は、扱いづらい子どもである。  頑固者で拘りが強い。愛想は無く、いつも不機嫌そうにしている。  互いを想い合う二人が長い間すれ違ってしまっているお話。 ※初日と二日目は六話公開、その後は一日一話公開予定です。 ※恋愛小説大賞エントリー中です。

【完結】精霊姫は魔王陛下のかごの中~実家から独立して生きてこうと思ったら就職先の王子様にとろとろに甘やかされています~

吉武 止少
恋愛
ソフィアは小さい頃から孤独な生活を送ってきた。どれほど努力をしても妹ばかりが溺愛され、ないがしろにされる毎日。 ある日「修道院に入れ」と言われたソフィアはついに我慢の限界を迎え、実家を逃げ出す決意を固める。 幼い頃から精霊に愛されてきたソフィアは、祖母のような“精霊の御子”として監視下に置かれないよう身許を隠して王都へ向かう。 仕事を探す中で彼女が出会ったのは、卓越した剣技と鋭利な美貌によって『魔王』と恐れられる第二王子エルネストだった。 精霊に悪戯される体質のエルネストはそれが原因の不調に苦しんでいた。見かねたソフィアは自分がやったとバレないようこっそり精霊を追い払ってあげる。 ソフィアの正体に違和感を覚えたエルネストは監視の意味もかねて彼女に仕事を持ち掛ける。 侍女として雇われると思っていたのに、エルネストが意中の女性を射止めるための『練習相手』にされてしまう。 当て馬扱いかと思っていたが、恋人ごっこをしていくうちにお互いの距離がどんどん縮まっていってーー!? 本編は全42話。執筆を終えており、投稿予約も済ませています。完結保証。 +番外編があります。 11/17 HOTランキング女性向け第2位達成。 11/18~20 HOTランキング女性向け第1位達成。応援ありがとうございます。

『まて』をやめました【完結】

かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。 朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。 時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの? 超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌! 恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。 貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。 だから、もう縋って来ないでね。 本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます ※小説になろうさんにも、別名で載せています

変人令息は悪女を憎む

くきの助
恋愛
「ブリジット=バールトン。あなたを愛する事はない。」 ああ、ようやく言えた。 目の前の彼女は14歳にしてこれが二度目の結婚。 こんなあどけない顔をしてとんでもない悪女なのだ。 私もそのことを知った時には腹も立ったものだが、こちらにも利がある結婚だと割り切ることにした。 「当初話した通り2年間の契約婚だ。離婚後は十分な慰謝料も払おう。ただ、白い結婚などと主張されてはこちらも面倒だ。一晩だけ付き合ってもらうよ。」 初夜だというのに腹立たしい気持ちだ。 私だって悪女と知る前は契約なんて結ぶ気はなかった。 政略といえど大事にしようと思っていたんだ。 なのになぜこんな事になったのか。 それは半年ほど前に遡る。

悪役だから仕方がないなんて言わせない!

音無砂月
恋愛
マリア・フォン・オレスト オレスト国の第一王女として生まれた。 王女として政略結婚の為嫁いだのは隣国、シスタミナ帝国 政略結婚でも多少の期待をして嫁いだが夫には既に思い合う人が居た。 見下され、邪険にされ続けるマリアの運命は・・・・・。

【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく

たまこ
恋愛
 10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。  多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。  もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。

【完結】私の初恋の人に屈辱と絶望を与えたのは、大好きなお姉様でした

迦陵 れん
恋愛
「俺は君を愛さない。この結婚は政略結婚という名の契約結婚だ」 結婚式後の初夜のベッドで、私の夫となった彼は、開口一番そう告げた。 彼は元々の婚約者であった私の姉、アンジェラを誰よりも愛していたのに、私の姉はそうではなかった……。 見た目、性格、頭脳、運動神経とすべてが完璧なヘマタイト公爵令息に、グラディスは一目惚れをする。 けれど彼は大好きな姉の婚約者であり、容姿からなにから全て姉に敵わないグラディスは、瞬時に恋心を封印した。 筈だったのに、姉がいなくなったせいで彼の新しい婚約者になってしまい──。 人生イージーモードで生きてきた公爵令息が、初めての挫折を経験し、動く人形のようになってしまう。 彼のことが大好きな主人公は、冷たくされても彼一筋で思い続ける。 たとえ彼に好かれなくてもいい。 私は彼が好きだから! 大好きな人と幸せになるべく、メイドと二人三脚で頑張る健気令嬢のお話です。 ざまあされるような悪人は出ないので、ざまあはないです。 と思ったら、微ざまぁありになりました(汗)

処理中です...