えっ、一ヶ月以内にエッチしないと死ぬ異世界転生!?

gulu

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"本物"の"主人公"

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《回想》

 あいつの生まれと育ちは特別だったわけではないでシ。
 だから虐待とかもされなかったでシ。
 ただまぁ少しばかり両親が馬鹿だったでシ。

 詐欺とかに遭ったわけじゃないでシよ?
 人に薦められるがままに株とか投資とかしていっただけでシ。

 最初はただの付き合いだったわけでシが、徐々にそのしがらみが鎖のように絡みついて離れなくなって、最後はその鎖共と一緒に沈んで首を吊ったでシ。
 自分の子供を道連れにしなかったのは後ろめたさなのか、それとも親としての最後の矜持だったのか、どっちでもいいでシ。

 だからあいつは乱数とか運を徹底的に排除してから物事に挑むんでシ。

 そして残されたのはあいつと妹の二人だったでシが、まぁそれなりに平和に暮らせてたでシ。
 一つ問題があったとすれば、あいつが望んだものがことごとく手に入らなかったことでシ。

 勉強していい学校に入ろうと頑張ったでシ。
だけど裕福な家で満足に勉強できるやつらには勝てなかったでシ。

 アルバイトで少しでもお金を稼ごうとしたでシ。
 両親を亡くした子供を働かせるとは何事かとクレームが入って辞めることになったでシ。

 友達がほしかったでシ。
 他のやつにはある時間がなかったせいでダメだったでシ。

 誰かに助けてほしかったでシ。
 だけど誰もあいつに何もしなかったでシ。

 だからあいつは人の痛みが分からないわけじゃないでシ。
 むしろ誰よりも痛みに慣れてしまっただけでシ。

 そのくせ、生涯で一度しか助けられなかったくせに、本気でヤバイ奴は助けるから、親の血をしっかり継いでるでシ。

 一度は助けられたから望みは一度叶っただろうでシか?
 違うでシ、あいつはその助けだけは絶対に受け取りたくなかったでシ。

 あいつには妹がいたって言ったでシ?
 あいつは自分の望みも夢も何もないまま”存在”をすり減らしながら妹の為に生きたでシ。
 自殺しなかったのも妹がいたからでシ。

 やるだけやって、残せるものを残して、バトンタッチして死ぬつもりだったでシ。
 こんな世界にひとり妹を残す自分は最低だとか思ってたみたいでシ。
 本当に最低だったらそんなことも考えてねぇでシ。
 けどこれが最悪の結果を招いたでシ。

 ある時、2人は火事に巻き込まれて重症を負ったでシ。
 あいつはこれでようやく死ねると思ったけど、そうはいかなかったでシ。

 瀕死の妹が最後に自分に残ってる無事な皮膚を兄に移植してくれって頼んだでシ。
 今までずっと貰い物で生きてきたからこそ、最後に返したかったんでシね。

 その結果、最後の最後にあいつは妹を守るという願いすら叶えられず、自分だけが生き残ったわけでシ。

 世の中プラスとマイナスがつりあってて、人生の帳尻は合うようになってるってほざくやつがいたら、そいつをミキサーに入れてバラバラにしても許されるのがあいつでシ。

 だからこそ、ニェにとっては都合がいい存在だったでシ。

 ニェは本物を探してるでシ。
 真実でも、綺麗でもない……”本物”の愛でシ。

 誰も彼もが愛を素晴らしいと称賛するでシ。
 だからニェもその素晴らしいものを見たかったでシ。

 なのに世界中のどこを見ても”本物”はなかったでシ。

 なぁなぁで愛を囁く有象無象、ただの偶然を運命だとうそぶく偽物、どれもこれもニェを震わせるものはなかったでシ。

 なら――――自分で”本物”を見つけるしかないでシ。
 あいつはその為の"主人公"なのでシ。

 誰かの特別になれず埋もれていったあいつが。
 世界に救いも希望もないと認めたあいつが。

 もしも……もしも、また人を信じて、誰か愛せるようになったとすれば。
 それこそがきっと、ニェが探し求めていた”本物”なのでシ。


《回想終了》

「とまぁ、こんな感じでシ。……泣くような話だったでシか?」
「ご、ごめん……な…さい……」

 凜音だけならまだしもダイヤまで泣いてるのは分からんでシ。
 これより不幸な出来事だって探せばあるでシ。

 ただ、選ばれたわけでもなく、特別でもないという意味では、あいつは逸材だったでシ。

「イェーイ! 見て見て! 車輪に剣をくっつけて回転させるとこれも剣判定でダメージが発生する! しかもこれ盾判定も入ってるから攻撃も防げる! これを並べて突っ込めばコンバインで耕すように魔王も――――あれ、なんか空気おかしくない?」

 肝心のこいつは、その場の雰囲気をブチ壊す勢いで入ってきたでシ。

 まぁこいつは最初、世界に救いがないのなら死後の世界という都合のいいもんもないと思ってたでシ。
 それが実際に死んだら、異世界転生を体験できたわけでシから、こうやってはっちゃるようになっても仕方ないでシ。

 だからこそ、こいつはハーレムやら愛やらに妥協しなくなったでシ。
 なにせ今まで存在していないと思っていたものが、在ると証明されたんでシから。
 だからこそニェはお前なら"本物"を見せてくれると期待してるんでシ。

「お前がどうしてモテないか語ったら皆泣いたでシ。よかったでシね、感動大作でシ」
「何してんだこの野郎! それは感動じゃなくて同情とか憐れみだよ! 何も嬉しくねぇよ!」

 それと、これは誰にも言ってないでシが、お前は妹の皮膚を移植されてから時間を無為に過ごしすぎたでシ。
 だからお前が無駄にした時間はどれほど価値あったのかを理解させる為に、わざと1ヶ月という期限を設けてるんでシ。

 さぁ死ぬ気で生きるでシ、妥協せずに追い縋るでシ。
 そしてニェに“本物”を見せるでシ!
 お前という主人公を見つけたニェは、たとえ百万回異世界転生するとしても、絶対にお前を逃がさんでシ。
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