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好きじゃない
108 六章〈1〉③ 置いてけぼりと深呼吸
「譲を笑わせてくれる、吉田さんだっけ、なんか言ってた?」
「吉田さん? 別になにも……。心配そうな顔はしてたけど」
というより、はぐらかされて聞いても教えてくれなかった。
「でも、変なことはあった」
「変?」
「うん。気づいたら、ポケットにお菓子がいろいろ入ってて」
「おかし? あめとかチョコとか?」
「そう、そのお菓子。不思議だろ? それ見たら、なんだか急におかしくなっちゃって」
「それで、笑ったのか」
「うん」
「へ~……。譲、それって……」
「それって?」
聞き返した俺に、ちょっと待ってと言ったきり、充己はしばし黙った。
「充己? どう――」
「ふっ……、ふははははっ」
沈黙を破り、弾けたように充己が笑い声を上げた。
「え? なんで充己が笑ってるんだよ」
あのときの俺みたいにツボにでも入ったのか? そう思っていると、
「はぁ~、ウケる……。譲、面白すぎ」
「――ん? ぼく?」
(なんで?)
「でも譲、よかったな~」
「は? なにがいいんだよ。さっきから全然、意味分かんないよ」
充己の話に、俺はずっと置いてけぼりだ。なんだかもう、疲れてきた。胸の奥がもやもやする。
「ごめんて。ちゃんと教えるから怒んなよ~。譲、最近カルシウム足りてないんじゃね? 牛乳飲んでないのかよ」
「飲ん、でるよ……。毎日じゃ、ないけど……」
昼間も、そんな会話をした。
(なんで……牛乳の、話――)
「そうなのか? 譲の日課だったのにな~」
「――充己、もう……」
呼吸がうまくできずに、俺は言いかけてやめた。胸を抑え、代わりに深呼吸をする。牛乳の話題で、頭を過ぎった顔に息苦しさを感じたせいだ。その話はしたくない、昼間の出来事を思い出しそうになる。
飲んだ薬の効果はもう切れていた。意識したことで、さらに身体が重くなっていくようだった。
「譲? 大丈夫か?」
「……」
乱れ始めた息づかいから、俺の感じているわずかな不安と疲れが伝わったのか、充己の声音がいつもより柔らかくなった。
「――譲。これから言うこと、よく聞いて?」
「……うん」
「俺がよかったなって言ったのはさ、今の職場が譲にとって、すごく優しくていい環境だと思ったからだぞ?」
「――やさ、しい?」
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