好き逃げ! = 好きですけど、逃げていいですか? × 俺の許容範囲は限界です!(連載版)

m.sei

文字の大きさ
111 / 117
好きじゃない

108 六章〈1〉③ 置いてけぼりと深呼吸


「譲を笑わせてくれる、吉田さんだっけ、なんか言ってた?」
「吉田さん? 別になにも……。心配そうな顔はしてたけど」

 というより、はぐらかされて聞いても教えてくれなかった。

「でも、変なことはあった」
「変?」
「うん。気づいたら、ポケットにお菓子がいろいろ入ってて」
「おかし? あめとかチョコとか?」
「そう、そのお菓子。不思議だろ? それ見たら、なんだか急におかしくなっちゃって」
「それで、笑ったのか」
「うん」
「へ~……。譲、それって……」
「それって?」

 聞き返した俺に、ちょっと待ってと言ったきり、充己はしばし黙った。

「充己? どう――」
「ふっ……、ふははははっ」

 沈黙を破り、弾けたように充己が笑い声を上げた。

「え? なんで充己が笑ってるんだよ」

 あのときの俺みたいにツボにでも入ったのか? そう思っていると、

「はぁ~、ウケる……。譲、面白すぎ」
「――ん? ぼく?」

(なんで?)

「でも譲、よかったな~」
「は? なにがいいんだよ。さっきから全然、意味分かんないよ」

 充己の話に、俺はずっと置いてけぼりだ。なんだかもう、疲れてきた。胸の奥がもやもやする。

「ごめんて。ちゃんと教えるから怒んなよ~。譲、最近カルシウム足りてないんじゃね? 牛乳飲んでないのかよ」
「飲ん、でるよ……。毎日じゃ、ないけど……」

 昼間も、そんな会話をした。

(なんで……牛乳の、話――)

「そうなのか? 譲の日課だったのにな~」
「――充己、もう……」

 呼吸がうまくできずに、俺は言いかけてやめた。胸を抑え、代わりに深呼吸をする。牛乳の話題で、頭を過ぎった顔に息苦しさを感じたせいだ。その話はしたくない、昼間の出来事を思い出しそうになる。

 飲んだ薬の効果はもう切れていた。意識したことで、さらに身体が重くなっていくようだった。

「譲? 大丈夫か?」
「……」

 乱れ始めた息づかいから、俺の感じているわずかな不安と疲れが伝わったのか、充己の声音がいつもより柔らかくなった。

「――譲。これから言うこと、よく聞いて?」
「……うん」
「俺がよかったなって言ったのはさ、今の職場が譲にとって、すごく優しくていい環境だと思ったからだぞ?」
「――やさ、しい?」

     
感想 0

あなたにおすすめの小説

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

バスケ部のイケメン先輩に誘惑されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 他にも書きたいのがいっぱいある。

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談?本気?二人の結末は? 美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。 ※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。