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4.反動形成というらしい
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若干のもやもやしたような気持ちと、楽しかったと、そしてこれからも楽しみかも、と、複雑な気持ちを抱えて自宅に辿り着く。
「ルー様、かあ……」
「良かったですね、お嬢様。初恋の方ではないですか?」
リズは私の着替えを手伝いながら、私がポロリと溢した一言に食い付く。
「初こ……!…リズもルー様知っていたの?」
「直接お会いしたのは本日が初めてです。お城には私もお付き添いできませんでしたので。でも、ダリシアお嬢様から良く聞かされましたのよ。『今日ね、ルー様がね、ルー様がね』って。お可愛らしかったですわ。ルーエン様でしたのね」
「……そんなに?恥ずかしいわ」
どうやら五歳上の専属侍女は、私より私の事を覚えているらしい。仕方がないけれど、近くの人が自分の子ども時代を覚えているのって恥ずかしいわよね。
「ま、まあ、淡い初恋よね。憧れの優しいお兄ちゃんだったもの」
「またそのお気持ちを思い出したのではないですか?」
リズが少し楽しそうに聞いてくる。
「う、~ん、確かにますます素敵になられていたけど、ないかなあ」
「そんなものですか?いいじゃないですか、初恋の人との再会!ロマンスじゃないですか」
「盛り上げてくれている所申し訳ないけれど、やっぱり家格と年齢がこのお見合いの理由だと思うわ。あと、魔法研究もかしら。……小さい頃からのあんなやらかしを見ていて、女性扱いは難しいと思うわ……」
「そんなに何をやらかしたのですか……少し想像ができてしまいますけれど……」
「ははは……」
リズに呆れたような視線を受けながら、笑って誤魔化す私。
だって実際に……好きな子にいじわるをするような、小さい男の子まんま!とゆーか。まんま、猿!!とゆーか。
追い掛けて欲しくて、構って欲しくて、あれこれイタズラやらちょっかいやらをかけたな。何でしょうね、あの心理。……ともかく、今更取り繕える気がしない。
今日はちょっと頑張ってみたけど。
ん?いやいや、取り繕うなんて、私らしくないぞ。慣れないお見合いと初恋の人との再会で、動揺したからかしら。
「ともかく、ないわ……。あとは本当、魔法研究についてだと思う。また会う約束はしたけれど、お互いの研究の共通点を見つけて盛り上がった所で帰る時間になっちゃったから、続きは後日にってなっただけだし」
「……そうですか」
「うん、きっとそうよ。そんなものでしょ。で、でもあれよ!またお会いするのは楽しみよ!魔法研究の話のためでも何でも」
何か言いたそうなリズに、私は無理矢理のように言葉を重ねる。楽しみに違いないのは確かなのだし。
「……研究にも理解がありそうだし、いいご縁だとも思うわ」
「はい」
「でも……」
でも、何だろう。言葉が出てこない。
「さ、お着替えも済みましたし、少しお休みしましょう、お嬢様!慣れない神経をお使いになったので、お疲れでしょう?お茶でも淹れますわ」
「そうね、ありが……って、慣れない神経って何?!」
「ふふっ、言葉通りですけれど、お嬢様はそのお調子の方がお嬢様らしくて素敵ですわ。いろいろとまだこれからですし、考え過ぎずに参りましょう?」
ちょいちょい棘を入れながらも、リズの気遣いが伝わってくる。
「そうね。そうする。じゃあ、すっきりしたいから、ちょっと木に……」
「それはダメです」
「え~!私らしくってぇ!」
「木に登らなくとも、できることでございます」
そして、やいのやいの言いながら、大人しくリズの淹れてくれたお茶をいただく。
甘くて厳しい姉のような存在が近くにいてくれるって、幸せだな。
うん、ゆっくり私らしく行こう。
「ルー様、かあ……」
「良かったですね、お嬢様。初恋の方ではないですか?」
リズは私の着替えを手伝いながら、私がポロリと溢した一言に食い付く。
「初こ……!…リズもルー様知っていたの?」
「直接お会いしたのは本日が初めてです。お城には私もお付き添いできませんでしたので。でも、ダリシアお嬢様から良く聞かされましたのよ。『今日ね、ルー様がね、ルー様がね』って。お可愛らしかったですわ。ルーエン様でしたのね」
「……そんなに?恥ずかしいわ」
どうやら五歳上の専属侍女は、私より私の事を覚えているらしい。仕方がないけれど、近くの人が自分の子ども時代を覚えているのって恥ずかしいわよね。
「ま、まあ、淡い初恋よね。憧れの優しいお兄ちゃんだったもの」
「またそのお気持ちを思い出したのではないですか?」
リズが少し楽しそうに聞いてくる。
「う、~ん、確かにますます素敵になられていたけど、ないかなあ」
「そんなものですか?いいじゃないですか、初恋の人との再会!ロマンスじゃないですか」
「盛り上げてくれている所申し訳ないけれど、やっぱり家格と年齢がこのお見合いの理由だと思うわ。あと、魔法研究もかしら。……小さい頃からのあんなやらかしを見ていて、女性扱いは難しいと思うわ……」
「そんなに何をやらかしたのですか……少し想像ができてしまいますけれど……」
「ははは……」
リズに呆れたような視線を受けながら、笑って誤魔化す私。
だって実際に……好きな子にいじわるをするような、小さい男の子まんま!とゆーか。まんま、猿!!とゆーか。
追い掛けて欲しくて、構って欲しくて、あれこれイタズラやらちょっかいやらをかけたな。何でしょうね、あの心理。……ともかく、今更取り繕える気がしない。
今日はちょっと頑張ってみたけど。
ん?いやいや、取り繕うなんて、私らしくないぞ。慣れないお見合いと初恋の人との再会で、動揺したからかしら。
「ともかく、ないわ……。あとは本当、魔法研究についてだと思う。また会う約束はしたけれど、お互いの研究の共通点を見つけて盛り上がった所で帰る時間になっちゃったから、続きは後日にってなっただけだし」
「……そうですか」
「うん、きっとそうよ。そんなものでしょ。で、でもあれよ!またお会いするのは楽しみよ!魔法研究の話のためでも何でも」
何か言いたそうなリズに、私は無理矢理のように言葉を重ねる。楽しみに違いないのは確かなのだし。
「……研究にも理解がありそうだし、いいご縁だとも思うわ」
「はい」
「でも……」
でも、何だろう。言葉が出てこない。
「さ、お着替えも済みましたし、少しお休みしましょう、お嬢様!慣れない神経をお使いになったので、お疲れでしょう?お茶でも淹れますわ」
「そうね、ありが……って、慣れない神経って何?!」
「ふふっ、言葉通りですけれど、お嬢様はそのお調子の方がお嬢様らしくて素敵ですわ。いろいろとまだこれからですし、考え過ぎずに参りましょう?」
ちょいちょい棘を入れながらも、リズの気遣いが伝わってくる。
「そうね。そうする。じゃあ、すっきりしたいから、ちょっと木に……」
「それはダメです」
「え~!私らしくってぇ!」
「木に登らなくとも、できることでございます」
そして、やいのやいの言いながら、大人しくリズの淹れてくれたお茶をいただく。
甘くて厳しい姉のような存在が近くにいてくれるって、幸せだな。
うん、ゆっくり私らしく行こう。
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