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12.ファータ=マレッサにて その3
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アンドレイが私を好き。姉としてではなく。
言われた言葉が頭をぐるぐる回る。
いつもと違い過ぎる雰囲気に、私は言葉が出てこない。
「…すまない。今、言っても困らせるとは思ったが」
この沈黙に、アンドレイが泣きそうな顔で言ってくる。
「ちが、違うの!困ると言うか、驚いてしまって。だって本当に、きょうだいと思われてると思っていたから」
また初めて見る顔に、思わずフォローを入れてしまう。
「じゃあ、まだ俺にもチャンスはある?」
「うっ……チャンスって、そんな……」
わあん、アンドレイがぐいぐい来る!やっぱり免疫のない私は、みっともないくらいに動揺する。
その、捨て犬みたいな上目遣いは止めてー!そうだ、小さい頃からこのアンドレイのお願いポーズには、私、弱かったんだ!!
「……兄上、二人きりにはさせられないので僕、まだいるけれど……一旦、仕切り直さない?姉様動揺してるし、僕もいたたまれないし」
サージュの助け船がありがたいと同時に、人前でのこんな展開に、ますます羞恥心が煽られる。思い出したように、アンドレイが赤面している。私も赤いに違いない。
「と、いう訳で、兄上のことも考えてやって。ダリシア姉様」
そんな私達を華麗にスルーしつつ、サージュは続ける。
「か、考えるって……」
「まあね?あれだけ一緒にやんちゃして、姉様のやるこことなすことに反発して、研究の邪魔をしたり暴言に近いことをしていたりしたから、気持ちは追い付かないと思うけど。なかなかの反動形成っぷりだし」
「サージュ……」
力無く項垂れて、アンドレイがぼやく。
……反動形成については、私も何だかいたたまれないけれど。
「ダリシア姉様もかなり鈍感だからね?毎回兄上のパートナーになるの、不思議じゃなかった?あれ、兄上の周りに対するかなりの牽制だからね?だから姉様に声をかけられる人が少なかったんだよ」
「え、私一人っ子で兄弟がいないからだとばかり……それに、牽制?」
不思議な単語に、首を傾げる私。
「普通に考えて、侯爵家の跡取りで優秀で、美人で。多少のクセがあっても、ここまで姉様に婚約話が来ないわけないでしょ?兄上のせいですよ。そりゃ、幼馴染みで喧嘩しながらもいつも一緒で、婚約者の第一候補だと思われるよねぇ」
「「そうなの?か?」」
「やれやれ無意識とか……まあ、父上たちが動きたくなった気持ちも分かるよ……」
「「えっ、何?」」
「何でもないです。今回はお付き合いしましたけれど、兄弟の逢瀬を見ているのも辛いので……姉様も少しは意識してくれたみたいだし、後はまた後日にでも二人で話してください。今日はお開きにしましょう?」
両親よりも、叔父である公爵寄りの性格をしていると評判の弟殿下が、笑顔で話す。だから、この含みのある笑顔がね、ちょっといろいろ思いますけれど。
確かに、これ以上サージュの前では恥ずかしい。いや、前でなくとも恥ずかしいけれど!
「それもそうだな。ーーダリシア、今週末の学園の休暇の時は城に来てくれないか?きちんと、話がしたい」
「う、あ、…はい、分かり、ました」
アンドレイの真剣な顔に断ることもできずに頷く私。週末まで落ち着かない日々を過ごすことになりそうだ。
私の返事に、ホッとしたような表情を浮かべて、はにかんだ笑顔を向けるアンドレイ。いつもと違いすぎてドキドキする。
このドキドキは何だろう。驚いたから?嬉しいから?…嬉しくない訳はない、昔からの可愛い幼馴染みに好意を持たれているのだから。ルーエン様といる時とはまた違う、ドキドキだ。
そして私は今、何でルーエン様を思い出したの?初恋の人だから?お見合いしたから?
ああ、もう!経験不足過ぎて、大混乱よ!
……ともかく、自分の気持ちを見つめて、みよう
言われた言葉が頭をぐるぐる回る。
いつもと違い過ぎる雰囲気に、私は言葉が出てこない。
「…すまない。今、言っても困らせるとは思ったが」
この沈黙に、アンドレイが泣きそうな顔で言ってくる。
「ちが、違うの!困ると言うか、驚いてしまって。だって本当に、きょうだいと思われてると思っていたから」
また初めて見る顔に、思わずフォローを入れてしまう。
「じゃあ、まだ俺にもチャンスはある?」
「うっ……チャンスって、そんな……」
わあん、アンドレイがぐいぐい来る!やっぱり免疫のない私は、みっともないくらいに動揺する。
その、捨て犬みたいな上目遣いは止めてー!そうだ、小さい頃からこのアンドレイのお願いポーズには、私、弱かったんだ!!
「……兄上、二人きりにはさせられないので僕、まだいるけれど……一旦、仕切り直さない?姉様動揺してるし、僕もいたたまれないし」
サージュの助け船がありがたいと同時に、人前でのこんな展開に、ますます羞恥心が煽られる。思い出したように、アンドレイが赤面している。私も赤いに違いない。
「と、いう訳で、兄上のことも考えてやって。ダリシア姉様」
そんな私達を華麗にスルーしつつ、サージュは続ける。
「か、考えるって……」
「まあね?あれだけ一緒にやんちゃして、姉様のやるこことなすことに反発して、研究の邪魔をしたり暴言に近いことをしていたりしたから、気持ちは追い付かないと思うけど。なかなかの反動形成っぷりだし」
「サージュ……」
力無く項垂れて、アンドレイがぼやく。
……反動形成については、私も何だかいたたまれないけれど。
「ダリシア姉様もかなり鈍感だからね?毎回兄上のパートナーになるの、不思議じゃなかった?あれ、兄上の周りに対するかなりの牽制だからね?だから姉様に声をかけられる人が少なかったんだよ」
「え、私一人っ子で兄弟がいないからだとばかり……それに、牽制?」
不思議な単語に、首を傾げる私。
「普通に考えて、侯爵家の跡取りで優秀で、美人で。多少のクセがあっても、ここまで姉様に婚約話が来ないわけないでしょ?兄上のせいですよ。そりゃ、幼馴染みで喧嘩しながらもいつも一緒で、婚約者の第一候補だと思われるよねぇ」
「「そうなの?か?」」
「やれやれ無意識とか……まあ、父上たちが動きたくなった気持ちも分かるよ……」
「「えっ、何?」」
「何でもないです。今回はお付き合いしましたけれど、兄弟の逢瀬を見ているのも辛いので……姉様も少しは意識してくれたみたいだし、後はまた後日にでも二人で話してください。今日はお開きにしましょう?」
両親よりも、叔父である公爵寄りの性格をしていると評判の弟殿下が、笑顔で話す。だから、この含みのある笑顔がね、ちょっといろいろ思いますけれど。
確かに、これ以上サージュの前では恥ずかしい。いや、前でなくとも恥ずかしいけれど!
「それもそうだな。ーーダリシア、今週末の学園の休暇の時は城に来てくれないか?きちんと、話がしたい」
「う、あ、…はい、分かり、ました」
アンドレイの真剣な顔に断ることもできずに頷く私。週末まで落ち着かない日々を過ごすことになりそうだ。
私の返事に、ホッとしたような表情を浮かべて、はにかんだ笑顔を向けるアンドレイ。いつもと違いすぎてドキドキする。
このドキドキは何だろう。驚いたから?嬉しいから?…嬉しくない訳はない、昔からの可愛い幼馴染みに好意を持たれているのだから。ルーエン様といる時とはまた違う、ドキドキだ。
そして私は今、何でルーエン様を思い出したの?初恋の人だから?お見合いしたから?
ああ、もう!経験不足過ぎて、大混乱よ!
……ともかく、自分の気持ちを見つめて、みよう
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