異世界転生を果たした、おば、コホン、お姉さまは、お嬢様生活のために悪役回避、頑張ります!

渡 幸美

文字の大きさ
56 / 87
第三章 建国祭と学園と

48.顔合わせ 3

「それでも俺は、マリーが聖女だと思うが」

一瞬の沈黙を破って、そう言ったのはヒンターだった。ものすごく当たり前だって顔をして。

「何を、」
「根拠か?まずは、最初の茶会の件だな」

ゲホッと急にサーフィスが咳き込んだのを、イデアーレとテンダーが不思議そうに心配して、マークスがそんな二人に大丈夫とジェスチャーしている。

「あれは、リリーだって」
「誰よりも先に正確に気づいたのはマリーだ」

それはそう。

「それに魔力量だけでは測れないのは重々承知しているが、紺色魔力はそういない」
「リ、」
「リリーも素晴らしいが、精霊さまの愛し子としての上乗せ分みたいのもあるのだろう?いや、リリーを馬鹿にしている訳じゃないからな?愛し子もすごいと思ってるぞ?」
「ふふっ、分かってるよ、ヒンター」

普段クールなヒンターが、何となく必死でフォローしているのがくすぐったい。

「それに何より、マリーの魔力は温かい。他の誰とも違うと思う」
「あっ、それ、僕もわかる!癒しの授業の時思った!」
「あ~、確かに!」

ヒンターの言葉に、マークス、テンダーと続く。

「あの、僭越ながら、だけどっ。わたしもそう思うわ、マリー」
「イデア」
「マリーは、いつも無意識に周りの人を優先するよね?もちろん、それだけが聖女様の素質なのかなんて分からないけど、寄り添ってくれて、肯定してくれて。ダメなことはダメって言ってくれるし、でも、人を悪く言わないの。今回のグリッタ様のことだって、文句言ってもいいくらいなのに、全部自分が引き受けているよね?そんなこと、誰にもできることではないと思うの!」

仔猫みたいに必死で言い募るイデアがかわい。そしてそれにみんなも深く頷いている。

さすが、みんな姉さまを分かってるねっ!

「そうそう!さすがみんな、わかってるぅ~!わたしの自慢の姉さまよ!」
「でた、相互シスコン」

ヒンターの言葉にみんなで笑う。「もう、みんな……ありがとう」と、マリーアも泣き笑いだ。

「そうよね、くよくよなんてしていられないわ!わたしにはリリーを守る使命があるもの!あっ、みんなも!」
「ついででも、思い出してくれて良かった」

ヒンターとまた軽口を言い合って、それぞれとぎゅっとハグをするマリーア。

良かった、きっと私の心配なんて杞憂に終わる。

聖魔法の完全な目覚めだって、きっとできる。

「あの、それで、ですね。なかなか言い出せなかったのですが…実は、わたしもみなさんにプレゼントと言いますか、お渡ししたいものがございまして…」

みんなが落ち着いた頃、おずおずとイデアが手を挙げた。

「あら!嬉しいわ!始めに狭量な王太子がケチをつけてきたから言えなかったのね?」
「人を悪く言わない聖女はどうした」
「まあまあ、いつものマリーに戻って良かったよ」
「そうだね~」
「ある意味ほっとするな」
「……」

ヒンター、マークス、テンダーに立て続けに流され、サーフィスは無言になる。
まだ慣れないイデアーレがおろおろし始めたところで、声をかける。

「イデア、いつものことだから慣れてね~!それで何なに?楽しみなんだけどっ」
「慣れ…う、うん、頑張る。で、これなんただけど」

イデアーレが出したそれは、光の加減で何色にも見える美しい腕輪だった。「おお…」とみんなで息を飲む。

「わたしが作った魔道具なんだけど、少しでもみんなの役に立ちたくて。無毒化だったり、悪阻防止だったり、普段用みたいのはたくさん出てるけど、ほら、対魔王さんとかって普通にないから」

まあ、それはそう。魔王にさん付けかわいいな。

「でね、自分なりにいろいろ文献を読んだりしたの。そうしたら魔王さんは幻影・幻覚・麻痺・痺れ・眠らせる…みたいないわゆる状態異常の魔法が得意のようだったから」

うんうん。なるほど。

「全部を防ぐ、状態異常回避の腕輪です!あっ、もちろん毒も大丈夫!」

ほ、ほう……?

「あ~、イデア、確認なんだが、これは複数の効果が込められている腕輪ということで間違いないか……?」
「はい!フィス様!」

輝く笑顔のイデア。キラッキラで眩しいし、かわいい。かわいい、が。

「待て待て待て待て!やばいやばいやばいやばい!!」
「ヒンター、だっ、だよね?!えっ、これ僕ももらっていいの?」
「すごいなあ、イデア。俺のやつ先に出しておいて良かったわ」
「テンダーの方が芸術的よ。わたしのはただの魔道具だもの」

さらっと謙遜?するイデアに、全員で一度固まり。

「「「「「「ただの魔道具じゃないよねっっっ!?!?!?!?!?!?!?!?」」」」」」

と叫んだ。

「???ただの魔道具だよ?」

当の本人は、きょとんと首を傾げる。
そりゃ、魔道具だけれども。

天才怖い。



感想 3

あなたにおすすめの小説

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

本当に現実を生きていないのは?

朝樹 四季
恋愛
ある日、ヒロインと悪役令嬢が言い争っている場面を見た。ヒロインによる攻略はもう随分と進んでいるらしい。 だけど、その言い争いを見ている攻略対象者である王子の顔を見て、俺はヒロインの攻略をぶち壊す暗躍をすることを決意した。 だって、ここは現実だ。 ※番外編はリクエスト頂いたものです。もしかしたらまたひょっこり増えるかもしれません。

家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る

りーさん
ファンタジー
 アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。  その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。  そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。  その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

醜いと虐げられていた私を本当の家族が迎えに来ました

マチバリ
恋愛
家族とひとりだけ姿が違うことで醜いと虐げられていた女の子が本当の家族に見つけてもらう物語

戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました

志熊みゅう
恋愛
 十三歳の誕生日、侯爵令嬢エディット・ユングリングは、自分が死ぬ瞬間を"夢"に視た。  卒業舞踏会で、婚約者であるフィーラ帝国・第一皇子マティアス殿下から、身に覚えのない罪で断罪され、捕らえられる。傍らでは見知らぬピンクブロンドの令嬢が不敵に微笑む。貴族牢のある北の古城に連行される途中、馬車ごと“死の谷”へと落ちていった――そんな妙に生々しい夢。  マティアス殿下は聡明で優しく、エディットを大切にしているように見えた。だから誰もその"夢"のことを気に留めなかった。しかし、兄の怪我、愛猫の死、そして大干ばつ――エディットの"夢"は次々と現実になっていく。ある日、エディットは気づく。この"夢"が、母の祖国・トヴォー王国の建国の軍師と同じ異能――"未来視"であることに。  その頃、一年早く貴族学院に入学したマティアス殿下は、皇宮から解放され、つかの間の自由を知った。そして、子爵令嬢ライラに懸想するようになる。彼女は、"夢"の中で冷酷に微笑むあの令嬢に瓜二つ。エディットは自分が視た"夢"が少しずつ現実になっていくことに恐怖した。そんな時に視た、黒髪の令息が「愛しているよ」と優しくはにかむ、もう一つの『未来』。エディットは決心する。  ――断罪される未来を変えたい。もう一つの未来を自分で選び取る。  彼女は断罪される前に、家族と共に自らの死を偽装し、トヴォー王国へと身を隠す。選び取った未来の先で、エディットは『戦姫』として新たな運命の渦に飲まれていく――。  断罪の未来を捨て、愛する者のために戦う令嬢の恋愛ファンタジー!