異世界転生を果たした、おば、コホン、お姉さまは、お嬢様生活のために悪役回避、頑張ります!

渡 幸美

文字の大きさ
81 / 87
第四章 聖女と勇者と精霊と

67.エルのお披露目会!と

ファーブル王国は日本のような四季があり、今はまだまだ冬の季節。

それでも、我がサバンズ家は毎日が小春日和だ。

「エルぅ~、今日もかわいいねぇ」とは私。
「世界一だよねぇ」とはマリーア。
「きゃっきゃっきゃっ」

なぜなら!天使がいるから!!

「は~ヤバい、本当にヤバい。語彙力なくなる。可愛いって言葉しか思いつかない」
「ね~!」

もうエルしか勝たん。優勝!ですが、何か?

いや、わかっている。わかっているのよ。子どもは天使じゃないのよ。いずれ生意気になるのよ、それが成長、当たり前!

だけどさ~、この赤ちゃんオーラには勝てないよねぇ。もうずっとふくふくほっぺを触っていたいもの。ふくふく~!

「お嬢様方。本日はご友人の皆さまがいらっしゃるのでしょう?エル様を着替えさせていただきます。お二人も、侍女さんがお待ちですよ?」
「そうだった!」
「名残惜しいけど、エル、またね」

乳母さんに優しく窘められ、私とマリーもお着替えへと急ぐ。今日はいつもの仲間たちにエルの御披露の日だ。




「はわわわわ……かわっ、かわいい……!」

イデアーレがエルを見て、身悶えする。そうだろう、そうだろう!

「マリーとリリーの色を持ってるのね」
「そうなの~!いいでしょ」
「侯爵に似てるね」とは、マークス。
「そうなの!でも可愛いの!」
「リリー、でもって言うのは止めてあげて」

思わず出た本音をマリーアに窘められた。相変わらずヘタレパパに優しいなあ。

「きゃっきゃっ」
「おっ、この人数に囲まれてもご機嫌だな」
「さすが、マリーとリリーの兄弟ってとこか」
「それ、褒めてるのよね?ヒンター」
「もっ、もちろんだ」

マリーアのツッコミに慌てるヒンター。「肝が据わってそうだよな」と、サーフィスはどこ吹く風だ。

「エルランサ。これは俺たちからの贈り物だ」

そう言ってテンダーがたくさんのタオルにブランケット、スタイやらくつ下まで、たくさんの小物を広げて見せてくれた。全てに刺繍まで入っている。

「わあっ、かわいい!刺繍はもしかして」
「うん、俺が。マリーとリリーと、間にエルランサをイメージして。あ!でも、元のタオルとかは全部みんなが用意してくれたんだ。俺は刺繍しただけだから」
「うん、だからその手数料で十分だからよ、テンダー」

イデアーレの言葉に、全員が頷く。

「サバンズ家だから、大抵のものはたくさんあるだろうと思ったけど、小物はたくさんあっても困らないかとみんなで考えたんだ」
「ありがとう、フィス。みんな」
「みんなありがとう。それにしてもテンダーの刺繍は繊細よね。悔しいくらいよ」

そう言ってブランケットを広げながら、マリーアがしみじみと言う。
みんなも釣られるようにそれぞれを手にしながら、改めて感心するのであった。

「本当にすごいよね、テンダーって。これで剣も強いんだもんなあ。完璧だよね!」

スタイを広げながら笑顔でテンダーを見ると、「うぐっ」と唸って顔を背けられた。
よく見ると、耳が赤い。熱?熱か?それはテンダーも心配だけど、エルがもっと心配に!

「テンダー、大丈夫?なんか耳が赤いけど、体調悪いの?」
「~!ちがっ、た、いちょう悪いのに赤ちゃんに会いに来たりしないよ。だ、大丈夫だから、ちょっと離れて、リリー」

後ろから覗き込むように声をかけたら拒否られた。なんかちょっと悲しい。

「えっ、ごめん」
「ごめん、違う。何言ってんだ、俺」

ちょっとしゅんとして離れようとしたら、軽く手を取られてじっと見つめられる。目元も仄かに赤い。

「…テンダー?やっぱり具合が」
「本当に違うから。体調はいいよ。リリーに褒められて嬉しくて恥ずかしかっただけ。……だってものすごくかわいい笑顔で言ってくれたから」
「……へっ?」

つい口から出た間抜けな言葉が出た。
だってテンダーはいつもギャップ萌えのカッコかわいい男の子だけど、なんだかいつもより真剣さがあって。

何だろう、視線を外せない。

「あの、テンダー…」
「リリー、俺ね。俺もリリーのこと好きだって気づいたんだ。この前の、魔獣騒ぎの時もフィスじゃなくて俺が助けたかったなって。リリーが怪我がなくてそれが一番だったけど、次々、そんな思いが浮かんで来ちゃって……」

沈黙に耐えきれずに声を出すと、被せるようにテンダーが話し出した。
えっ、でっ、それで今、私はこ、告白をされていますか?えっ?

「初めて会った時から、笑顔に元気がもらえるかわいい子だなって思ってた。こんな妹がいたらなと、思っているつもりだったけど……それとは違う感情だって、気づいた」

テンダーの、真剣な顔に声も出ない。
ただ、自分の顔が熱を持ったことは分かる。絶対私、今真っ赤だ!

だってこんな急に!ストレートに言われたら、誰だってそうなるよね?!

「フィスにも話した。リリーが婚約とかをまだ考えていないこともわかっている。たけどリリーが考えるようになった時、俺も候補に入れてもらいたいと、思って」
「~~~~~~っ!」

「……いい?」と大型犬の困ったような上目遣いで見られたらヤバいでしょ!もう思考が飛ぶ!私はカクカクと首を縦に振ることしかできなかった。

「よかった!ありがとう、リリー。これからもよろしくな」

ホッとしたふにゃりとした笑顔。
これも正しくギャップ萌え~!

「…なあ、そろそろいいよな?」

テンダーと二人でもしょもしょ照れ合っていたら、不機嫌そうだけど笑顔のサーフィスが間に入ってきた。

そこでハッと我に返る。
そうだよ、みんなの前じゃん!また頬がカーッと熱くなる。お湯を沸かせそうだよ!

「大人げないなあ、フィスは」
「うるさい!テンダーは同い年だろ。ちゃんと口を出さずに我慢しただろうが」
「そうだね、頑張ったね」

ヒンターとマークスにいつものようにイジられながら、サーフィスが少し憮然とした顔をしている。

「テンダー、手。リリーの手を離せ。ずっと握ってる」
「えっ、あっ?すまない、リリー!」
「だだだ、大丈夫っ」

少し睨むようにサーフィスに言われ、気づいていなかったのであろう、慌ててパッと離すテンダーがかわいい。

「テンダーもか…。まあ、仕方ないわね、わたしのリリーは世界一かわいいから。エルと共に。それにテンダーは悪くないわよね」
「やっぱり!!」
「あはは、そこは平等に頼むよ、マリー」
少しだけマリーアを窘める?マークス。
「まあ、二人とも頑張れ」
楽しそうに鼓舞するヒンター。
「はわわわわ、わた、わたしはどうすれば?」
オロオロかわいいイデアーレ。

私はすごく恥ずかしいけれど、みんな暖かい雰囲気で。
自然とテンダーと視線を合わせて微笑み合う。

「そこ!いつまでも見つめ合わない!」
「余裕のない王子も珍しいわよね」
「マリー!今日は少し甘くしてくれ」

何だかんだと言いながら、みんなの輪に戻る。かわいいかわいいエルもいて、夢心地に足元がふわふわしているよう。


まだまだ魔王は安心できなくて。
考えることはたくさんだけど。

こんなぬるま湯で優しくて大事な時間を、大切な人たちと過ごせる幸せ。

贅沢に、浸らせてもらっちゃおう。

……恥ずかしさには、慣れないけどねっ。


感想 3

あなたにおすすめの小説

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

本当に現実を生きていないのは?

朝樹 四季
恋愛
ある日、ヒロインと悪役令嬢が言い争っている場面を見た。ヒロインによる攻略はもう随分と進んでいるらしい。 だけど、その言い争いを見ている攻略対象者である王子の顔を見て、俺はヒロインの攻略をぶち壊す暗躍をすることを決意した。 だって、ここは現実だ。 ※番外編はリクエスト頂いたものです。もしかしたらまたひょっこり増えるかもしれません。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

私ですか?

庭にハニワ
ファンタジー
うわ。 本当にやらかしたよ、あのボンクラ公子。 長年積み上げた婚約者の絆、なんてモノはひとっかけらもなかったようだ。 良く知らんけど。 この婚約、破棄するってコトは……貴族階級は騒ぎになるな。 それによって迷惑被るのは私なんだが。 あ、申し遅れました。 私、今婚約破棄された令嬢の影武者です。

家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る

りーさん
ファンタジー
 アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。  その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。  そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。  その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。