異世界転生を果たした、おば、コホン、お姉さまは、お嬢様生活のために悪役回避、頑張ります!

渡 幸美

文字の大きさ
1 / 84
第一章 サバンズ侯爵家

1.これが噂の異世界転生

しおりを挟む
「リリアンナ、今日から君の姉になるマリーアだ。仲良くしなさい」

ある日突然、サバンズ侯爵である父が、自分と同じ鮮やかな金色の髪色でサファイアのような瞳を持つ美しい少女を我が家へと連れてきた。
その少女は、緊張した面持ちで挨拶をする。

「マリーアともうします。どうぞよろしくお願いいたします」

「お姉さま…?」

まだ9歳のかわいい私は、こてんと首を横に傾げ…た瞬間、前世の記憶が急に頭に流れ込んで来た。



あ~。
ここって前世の私が子どもの頃大好きだった、『サファイアの君と共に』って、ジュニア向け小説の世界だわ!
これ、あれね?!噂の異世界転生ってやつね?!やだー、本当にあるのねぇ。

そうか、このマリーアを引き取る話が出ていたから、最近お母様の機嫌が悪かったのね。納得しました。

『サファイアの君と共に』は、ファーブル王国を舞台にした夢と魔法がいっぱいの、ちょっとバトルもある、いわゆるシンデレラストーリーだ。

主人公のマリーアは市井で母と二人で慎ましく暮らしていたが、ある日母親が馬車に轢かれて亡くなってしまう。その時一緒にいたマリーアが、母親を助ける為に暴走させた魔力が平民のそれより大きかったことで国の精査が入り、サバンズ侯爵の娘であることが判明する。この世界は魔力で親子鑑定ができるのだ。ちなみに、魔力は遺伝が強く、貴族が多い傾向にある。もちろん例外もあるが。
あ、あと、指輪!お父様は別れの際に、自分の瞳の色のお互いのイニシャル入りのサファイアの指輪を渡していたのだ。別れの指輪はテッパンだよね。

そう、お察しの通り、彼女の母と父は、父が私の母と結婚する前の恋人同士だったのだ。

マリーアの母も元は子爵令嬢で、父の幼馴染みで婚約者だったのだが、子爵家が事業の失敗で没落し市井へ下り、当たり前のように侯爵家との婚約は解消。その後にマリーアの母は妊娠に気づいたが、伯爵家の私の母との結婚が決まった父に、平民となった彼女はもちろんそんなことは言い出せず、出産に反対の家族を押し切りマリーアを出産し、ほぼ勘当状態で女手一つで育てたのだ。いや、すごいと思うよ。

そして親父。こんな時代に婚前交渉したのなら(別れる前に盛り上がっちゃったんだろうなあ………はっ、ダメダメ、ワタシ、まだ9歳!!)、ちゃんと確認くらい取れよ。大事な大事なかわいい恋人だったくせに。あ、でもあれか、バレてたら侯爵家のお祖父様あたりにマリーア共々消されていた可能性もあるか。そう考えたら、良かったのかしらね。

ともかく、そんな偶然と奇跡が重なって、マリーアは侯爵家に娘として引き取られることになる。
そして当然のように、私と母の嫌がらせが始まるのだ。そんな嫌がらせを乗り越え、聖女の力にも目覚め、嫌々妹の婚約者になっていた王太子からの愛も勝ち取り、幸せに暮らしましたとさ。だ。

ええ、ええ、大好きでした、子どもの頃は。

いいよね、勧善懲悪、ハッピーエンド。清く正しく美しく生きていれば、王子様と出会えると本気で思っていましたよ。汚い大人になんかナリタクネ~!の大熱唱ですよ。

でも、結婚したり、子どもを持ったりとすると、いろんな見方が見えてくるもので。

例えば幼い兄妹の亡くなる様が苦しくて、1度しか観られなかった有名スタジオの戦争アニメ映画。昔は意地悪な伯母さんをクソババアとか思っていたけど、自分の子どもにさえ食べ物を用意するのが困難な環境の中、甥っ子や姪っ子の面倒まで甲斐甲斐しくみてくれる人なんて、どれだけいるだろう。理想としてはそうありたいけれど、私には自信がない。きっと無理。絶対にコイツらさえいなければと思っただろう。

この物語だって、親の事情なんて、子どもには関係ないじゃん、侯爵の奥さん心狭っ!!と思っていたが、そうではない、そうではないのだ。いや、狭いな、狭いと思うよ?確かにマリーアは関係ないよ。不倫でもないしな?でも、そんなに簡単に割り切れることではないのだ。

政略ではありつつも、なんやかんやで父を愛している母。貴族は婚前交渉がよしとされないこの世界で、前の恋人との子ども、しかも色味は愛する旦那様と同じ上に、形はその恋人と瓜二つ。しかも、まだまだ憶測だけれど、ここがまんま物語だとすると、私よりも華やかで優秀なのだ。これがやっかまずにいられようか。分かる、分かるよ、お母様。そして物語の中の私。

でも、ダメなのだ。感情に任せて行動すれば、身の破滅はお約束。

ジュニア向け小説だったから、ざまあも生臭くはなかったけれど、シンデレラの継母継姉よろしく二人で散々イビり、王太子との婚約を取り消されそうになって、封印されている魔王を解放してマリーアに呪いをかけようとしたのがバレて、島流し的なものに遭うはずだ。
魔王を解放ってなかなかだと思うけど、島流しでいいのね、とは思ったなぁ……ではなくて。

せっかく上げ膳据え膳のお嬢様に転生出来たのに、この生活を棒に振りたくはないわ!!今の私なら庶民生活もできるだろうけれど!人生初?のお嬢様生活を満喫したい!「ここからここまで全部くださる?」って、セレブ買いをしてみたい!!だって、次とか分からないじゃない?

それに、貴族生活どっぷりのお母様だって、追放された生活は厳しいだろう。子どもの私の言葉がどれだけ届くかは分からないし、どうやらチートもなさそうだし、前世も覚えているだけで、何の変哲もないオバチャンだったけど!頑張るからね!

「初めまして、お姉さま。リリアンナ=サバンズです。これから仲良くしてくださいませ!」

前世の記憶が50オーバーまである私は、記憶を取り戻して頭痛を起こすような繊細さもなく、ここまでの脳内考察をコンマ何秒かでこなし、満面の笑顔で挨拶をした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

お妃さま誕生物語

すみれ
ファンタジー
シーリアは公爵令嬢で王太子の婚約者だったが、婚約破棄をされる。それは、シーリアを見染めた商人リヒトール・マクレンジーが裏で糸をひくものだった。リヒトールはシーリアを手に入れるために貴族を没落させ、爵位を得るだけでなく、国さえも手に入れようとする。そしてシーリアもお妃教育で、世界はきれいごとだけではないと知っていた。 小説家になろうサイトで連載していたものを漢字等微修正して公開しております。

クゥクーの娘

章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。 愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。 しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。 フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。 そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。 何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。 本編全24話、予約投稿済み。 『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

【完結】異世界に召喚されて勇者だと思ったのに【改訂版】

七地潮
ファンタジー
インターハイで敗退し、その帰宅途中、 「異世界に行って無双とかしてみたいよ」 などと考えながら帰宅しようとしたところ、トラックに跳ねられ本当に異世界へ召喚される。 勇者か?と思ったのに、魔王になってくれだと? 王様に頼まれ、顕現して間もない子供女神様に泣き落とされ、魔族を統べる魔王になる事に。 残念女神が作った残念世界で、何度も何度も凹みながら、何とかやって行ってる、男子高校生の異世界残念ファンタジー。 ********** この作品は、2018年に小説家になろうさんでアップしたお話を、加筆修正したものです。 それまで二次制作しかした事なかった作者の、初めてのオリジナル作品で、ノリと勢いだけで書き上げた物です。 拙すぎて、辻褄の合わないことや、説明不足が多く、今回沢山修正したり、書き足したりしていますけど、修正しても分かりづらいところや、なんか変、ってところもあるでしょうが、生暖かい目で見逃してやってください。 ご都合主義のゆるふわ設定です。 誤字脱字は気をつけて推敲していますが、出てくると思います。すみません。 毎日0時に一話ずつアップしていきますので、宜しくお願いします。

俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。

ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。 俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。 そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。 こんな女とは婚約解消だ。 この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。

婚約破棄された公爵令嬢は数理魔法の天才

希羽
ファンタジー
この世界では、魔法は神への祈りとされる神聖な詠唱によって発動する。しかし、数学者だった前世の記憶を持つ公爵令嬢のリディアは、魔法の本質が「数式による世界の法則への干渉」であることを見抜いてしまう。 ​彼女が編み出した、微分積分や幾何学を応用した「数理魔法」は、従来の魔法を遥かに凌駕する威力と効率を誇った。しかし、その革新的な理論は神への冒涜とされ、彼女を妬む宮廷魔術師と婚約者の王子によって「異端の悪女」の烙印を押され、婚約破棄と国外追放を宣告される。 ​追放されたリディアは、魔物が蔓延る未開の地へ。しかし、そこは彼女にとって理想の研究場所だった。放物線を描く最適な角度で岩を射出する攻撃魔法、最小の魔力で最大範囲をカバーする結界術など、前世の数学・物理知識を駆使して、あっという間に安全な拠点と豊かな生活を確立する。 ​そんな中、彼女の「数理魔法」に唯一興味を示した、一人の傭兵が現れる。感覚で魔法を操る天才だった彼は、リディアの理論に触れることで、自身の能力を飛躍的に開花させていく。 ​やがて、リディアを追放した王国が、前例のない規模の魔物の大群に襲われる。神聖な祈りの魔法では全く歯が立たず、国が滅亡の危機に瀕した時、彼らが頼れるのは追放したはずの「異端の魔女」ただ一人だった。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

処理中です...