世界は節目を迎えました

零時

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第一章 箱庭

九話 暗い部屋

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 内側にぶっ飛んだ扉、部屋の中へ進むポカリ、僕も後に続く、部屋の中はガランとしている、とても人が住んでいるとは思えない、部屋には家具がないどころか、僕たちが入って来た入り口を除いて明かりになるものが全くないのだ。
  まるで牢屋だ。
  生活感がまるで無い、本当にこんなところに人がいるのだろうか、いたとしても生きていられるのだろうか。

  嫌な予感が脳裏をかすめる。

  「なあ、ポカリ」

  ポカリがいるであろう方向に目を向けると、ポカリの陰に人にものだと認識できる鎖につながれた足があった。一瞬バラバラかとも思ったが近づいてみると、ちゃんと胴体にくっついているという事が分かる。 驚くことに体つきからしてポカリの証言通り女の人だ年齢は10代後半くらいに見える、顔は整っているがどこかで見たことがある気がした。
  バラバラ死体じゃないのは多少安心したが、女性は床に横になっていて微動だにしない、あの爆音で起きていないのも考えると、まさかとは思ったが...。

  「ふぁぁぁぁぁ」
  「!?!?」

  僕の中でブルーになっていた思考は、女性が寝返りをうったことの衝撃で真っ白になった。
  あーびっくりした。

  だが起きない、なんで起きてない?あの爆音で起きないなんて絶対におかしいと思うのだけれど、ぐっすり眠りすぎでしょう。
  僕も女性の部屋に入るという目的を達成したわけだから、まあ部屋なんて呼べる代物じゃなかったわけだけれど、ここはポカリにこう提案しよう。
  ≪一旦扉直して夜になってからまた来た方がいいんじゃないか?≫こう発言することで僕はもうこの件にかかわらなくてもよくなるはずだ、そもそも手伝う事なんてなかったわけで、それでも一緒に来てくれなんて言われたら。
  ≪もう扉なんてものは無いんだから一人で行けるだろ頑張れ!≫できっと済む、そうだそうしよう。

  「ポカリ一旦扉な」

  僕の言葉はことごとくこいつの行動に邪魔されていると思う、一体お前は何をしようとしているんだ!?

  僕の目には足と床を繋ぐ鎖を切断し終わり女性を担ぎ上げる誘拐犯みたいな男の姿が映っていた。

  そのあとのことは予想がつくこのままその女性を連れて行く気だろう、こいつは戦闘以外の事に関しては頭が全然働かないがこの状況はだれがどう見てもわかる、明らかに閉じ込められている、監禁されているのだ。それが何を意味するか分からないが、元に化け物扱いされていたわけだし本当にヤバい奴なのかもしれない、いや訂正する、今現在起きていないことからこいつはそういう意味でやばい奴だ。

  けれど誰かの悪意によって監禁されていることも考えられる...。僕たちが壁の中に閉じ込められたのは何か月も前の話だしかし壁の内側で女を見たことがないし女がいると聞いたこともないこの女性を監禁したのはおそらく僕らを壁の内側に閉じ込めたやつらだ。だとするとこの女性を連れ出すことは何かまずい気がする。それを含めての一時撤退案だったのに、こいつは女性を担ぎながら早く帰るぞとか言いそうな顔をしている。

  「不死身早く帰るぞ!」

  ほら言った。
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