ユキトカミ

Natsu

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【4】

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 1匹の黒猫が静かな道の上を歩いていた。

 もうなにもなかった。
 なにも感じなかった。

 それでも、1匹の黒猫は道を歩いていた。
 白い妖精は足では感じるのに、なぜか見えなかった。

 静かだった。
 なにも見えなかった。

 黒猫は空を見上げた。
 もう、なにも見えなかった。

 風が吹いたような気がした。
 それに負けて、身体が倒れた気がした。

 黒猫は、白い妖精に埋もれたことを知った。

 もう手足が動かない。
 もうこれ以上歩けない。

 もうあきらめよう。
 もういいじゃないか。

 黒猫は揺れる視界のなかに見た。
 道の中央に、1人の人間が立っていたのだ。

 黒いコートを着て、大きな鎌を背負っている●●●だった。

 黒猫は助かったと思った。
 ●●●は人間ではなく、死神なのだから。

 白い妖精が支配する世界で、死神は手招きをした。

 死神に呼ばれた黒猫はゆっくりと立ち上がる。
 そして、●●●に近づいていく。

 でも、その足を止めた。

 行くな。

 黒猫が周りを見ると3匹の白猫がいた。

 みんなは泣いているようだった。
 みんなは悲しんでいるようだった。

 そんな顔しないで大丈夫だよ。
 僕についておいでよ。

 みんなは笑ってくれた。

 白い妖精がまた見えてきた。
 みんなと一緒なら、もう少しだけ歩けそうだった。

 ●●●の横を通り過ぎた。
 ●●●は不満そうだった。

 白い妖精が踊る世界を歩いた。

 歩いた。
 歩いた。
 歩いた。

 なにかが見えてきた。

 暖かそうな建物がたっていた。

 窓の向こうには、〇〇〇がいた。
 〇〇〇は天使だった。

 ドアが開き、頑張ったね、と言ってくれた。
 みんなが笑顔で出迎えてくれた。

 1匹の黒猫と3匹の白猫は、暖かい気持ちでなかに入っていった。


 ──THE END──
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