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■舞台は夢の世界編
【28】
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夢の北国の中、お城の前で悪魔との戦闘が始まった。
しかし、そのきっかけを作った勇者は現在──
「うおおお!」
お城から結構遠くにいたロゼンは、虹色の光を輝かせて全力ダッシュしていた。
まさか、挑発するために放った神龍が、城の一部をゾンビ化して叩き落してくるという過剰な反応を引き起こすとは夢にも思わなかった。
これで、あそこに悪魔がいることはわかったが、新たな問題も発生していた。
「やばい、俺の剣、大丈夫かな……」
魔法剣“神龍”は剣そのものを媒体にして発動する業のため、神龍が消えるとただの剣がその場に残される。
普段は視界の外にいくほど遠くに投げないため、すぐにロゼンの手元に戻ってくるよう魔法で引っ張るが、今回はさすがに遠すぎた。
「これで剣が壊れてたら……いや、ガイアとイデアがいるから心配ないけど……それでも、あとはただ見ているだけって役立たずすぎる。時間ロスだけど、まずは剣を探さないと──」
急いでいたロゼンだが、突如、地面が摩擦するほどの勢いで急停止した。
立ち止まったロゼンに向かって、漆黒のローブに身を包み、蛇を巻きつけた男が何かを引きずりながらゆっくりと歩いてくる。
「……タナトス」
ロゼンが名を呼ぶと、男──タナトスは、手を伸ばしても触れられないほどの距離で足を止めた。そして、引きずっていた一本の剣を無造作に放り投げてきた。
「おお……ありが」
『これで十分協力したことになるだろう。あとは勝手にしろ』
飛んできた剣を掴んでお礼を言おうとしたロゼンを、タナトスが遮った。
もちろんロゼンはぽかんとする。
「協力って俺の剣拾ってくるだけ!?」
『お前は困っていたはずだ』
「それは否定できずまったくもってその通りですけども!?」
『では十分だろう』
「それも否定できずまったくもってその通りだから困るんですけども!?」
タナトスはロゼンの叫びを無視し、ローブの中から大きな蛇を出現させ、その蛇を自分の体に巻きつかせていく。
「あー、待て待て、タナトス!」
慌てるロゼンの声に、蛇が動きを止めた。
「いや……結局、なんでついてきたんだ? 本当に他の悪魔を見たかっただけなのか?」
タナトスは一瞬だけ答えに間を開ける。
『その通りだ』
「へー、で、感想は?」
『お前は私と話している時間はないはずだ。ナイトメアと他の勇者との戦いは始まっているんだぞ』
「ああ……もうぶつかってんのか」
忘れていたわけではないが、タナトスと会える時間は限られており、こんなに近くで条件もなく話せる機会はもうないかもしれないと感じていた。
「やっぱり感想ぐらいは聞いておきたいな。どうなんだ?」
数秒間、目が合ったまま沈黙が続いたが、タナトスは顔をそらし、巻きつかれた蛇の中に消えていった。
『奴は臆病だ。どれだけ吠えても、最も遠くにいる』
そう言い残すと、蛇がぼとりと落ち、タナトスは姿を消していた。
「ありがとう!」
ロゼンは剣を握りしめ、再びお城に向かって駆け出した。
しかし、そのきっかけを作った勇者は現在──
「うおおお!」
お城から結構遠くにいたロゼンは、虹色の光を輝かせて全力ダッシュしていた。
まさか、挑発するために放った神龍が、城の一部をゾンビ化して叩き落してくるという過剰な反応を引き起こすとは夢にも思わなかった。
これで、あそこに悪魔がいることはわかったが、新たな問題も発生していた。
「やばい、俺の剣、大丈夫かな……」
魔法剣“神龍”は剣そのものを媒体にして発動する業のため、神龍が消えるとただの剣がその場に残される。
普段は視界の外にいくほど遠くに投げないため、すぐにロゼンの手元に戻ってくるよう魔法で引っ張るが、今回はさすがに遠すぎた。
「これで剣が壊れてたら……いや、ガイアとイデアがいるから心配ないけど……それでも、あとはただ見ているだけって役立たずすぎる。時間ロスだけど、まずは剣を探さないと──」
急いでいたロゼンだが、突如、地面が摩擦するほどの勢いで急停止した。
立ち止まったロゼンに向かって、漆黒のローブに身を包み、蛇を巻きつけた男が何かを引きずりながらゆっくりと歩いてくる。
「……タナトス」
ロゼンが名を呼ぶと、男──タナトスは、手を伸ばしても触れられないほどの距離で足を止めた。そして、引きずっていた一本の剣を無造作に放り投げてきた。
「おお……ありが」
『これで十分協力したことになるだろう。あとは勝手にしろ』
飛んできた剣を掴んでお礼を言おうとしたロゼンを、タナトスが遮った。
もちろんロゼンはぽかんとする。
「協力って俺の剣拾ってくるだけ!?」
『お前は困っていたはずだ』
「それは否定できずまったくもってその通りですけども!?」
『では十分だろう』
「それも否定できずまったくもってその通りだから困るんですけども!?」
タナトスはロゼンの叫びを無視し、ローブの中から大きな蛇を出現させ、その蛇を自分の体に巻きつかせていく。
「あー、待て待て、タナトス!」
慌てるロゼンの声に、蛇が動きを止めた。
「いや……結局、なんでついてきたんだ? 本当に他の悪魔を見たかっただけなのか?」
タナトスは一瞬だけ答えに間を開ける。
『その通りだ』
「へー、で、感想は?」
『お前は私と話している時間はないはずだ。ナイトメアと他の勇者との戦いは始まっているんだぞ』
「ああ……もうぶつかってんのか」
忘れていたわけではないが、タナトスと会える時間は限られており、こんなに近くで条件もなく話せる機会はもうないかもしれないと感じていた。
「やっぱり感想ぐらいは聞いておきたいな。どうなんだ?」
数秒間、目が合ったまま沈黙が続いたが、タナトスは顔をそらし、巻きつかれた蛇の中に消えていった。
『奴は臆病だ。どれだけ吠えても、最も遠くにいる』
そう言い残すと、蛇がぼとりと落ち、タナトスは姿を消していた。
「ありがとう!」
ロゼンは剣を握りしめ、再びお城に向かって駆け出した。
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