星の糸

kudamonokozou

文字の大きさ
1 / 1

星の糸

しおりを挟む
昔々、まだ人間が神様と、面と向かってお話できていた頃の話です。

ナガスネヒコとノミノスクネという、とても力の強い男が二人、野原に寝っ転がって、夜空の星を見上げておりました。

夜空にはいっぱいの星が、満ち満ちておりました。

「なあ、ノミノスクネよ。わしにはどうしても分からんのだが、どうしてあの空の星は、宙に浮いたままで落ちてこんのだろうな。」
とナガスネヒコが聞きますと、ノミノスクネは笑って答えました。
「お主はそんなことも分からんのか。あの星は、目に見えぬ糸でつるしておるんだよ。」

ナガスネヒコは驚いて、
「お主はその糸に触れたことがあるのか。」
と聞きましたので、ノミノスクネはまた笑って答えました。
「わしもまだ触れたことは無いが、そうに決まっておるだろう。そうに決まっておる。」
「それなら、今から国中で一番高い山に登って、二人で見届けようではないか。」
と、ナガスネヒコがノミノスクネを誘って、二人は出かけて行きました。

それで二人は、国中で一番高い山に登って行きました。
二人は山の途中で、地面から見上げると、てっぺんが見えないほどものすごく高い木を選んで、「バキバキバキ」と切り倒し、それぞれ肩に担いで、また山に登って行きました。

山頂に辿り着くと、夜空にはもう、溢れんほどの星が輝いています。

「これだけたくさんの星があれば、いくらかは星の糸に触れることができるというものだ。」
と言って、二人は自分たちが担いでいた大木を両手で抱え持ち上げて、ぐるぐる星の回りを探って、星の糸に触れようとしました。
しかし、いっこうに触る気配がありません。空振りばかりです。

『どうもおかしい。ちょっと足りないようだ。』
疲れてきたナガスネヒコは、ノミノスクネに提案しました。
「悪いが、お主の持っている木の上に、わしを乗せてくれまいか。そうすれば届くというものだ。」
それでノミノスクネは、高く持ち上げていた大木を一度寝かしてやり、その上にナガスネヒコが大木を肩に担いで乗りました。
そして「よいしょ!」と、ノミノスクネが大木を再び持ち上げましたので、ナガスネヒコはずいぶん星の高さにまで近づいたと思いました。そして自分の担いでいる大木を両手で高く持ち上げました。

ですから、ノミノスクネがとても高い大木を持ち上げ、その上にナガスネヒコが乗って、これまた高い大木を持ち上げましたので、とてもとても高い木の塔が出来上がったのです。

ナガスネヒコが見上げると、空にはもう眩いほどの星が輝いています。
『あともう少しだ。』
ナガスネヒコは、わくわくしました。

ナガスネヒコは持っている大木をグルグル動かして、星の回りを探ってみます。
今にも星に届きそうな気がしました。
また、星をつついて見ようともしましたが、手応えがありません。

「おう、もう少しで届きそうなんだが。悪いが、もう少し左へ動いてくれまいか。そこなら届きそうな気がする。」
それで、ノミノスクネは少し左へ動いて、
「どうだ、届いたか。」
とナガスネヒコに尋ねましたが、ナガスネヒコは、
「いや、もうちょっとなんだがな。もう少し前に動いてくれまいか。」
と言いましたので、ノミノスクネは少し前に動いてまた尋ねました。
「どうだ、届いたか。」

こうして二人は、何度も右へ行ったり左へ行ったり、前へ行ったり後ろへ行ったりしましたが、星にも星の糸にもいっこうに触ることができません。
ふたりはもう、汗びっしょりです。

「おい、もうそこまで星が見えているではないか。しっかりしろよ。」
「いや、今触れたと思ったのだがなあ。おかしいな。」
「おい、わしと代れ。お主はどうも下手のようだ。」
二人は上と下で、大声で叫びあっています。

あまりにやかましいので、熊や鹿や鳥たちが『何をしているのだろう。』と、不思議そうに眺めておりました。

いつの間にか動物たちのそばに立っていた山の神様は、
「本当に人間って、おかしなことをするものね。」と言って、袂で口を隠してクスッとお笑いになりました。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

パンティージャムジャムおじさん

KOU/Vami
児童書・童話
夜の街に、歌いながら歩く奇妙なおじさんが現れる。 口癖は「パラダイス~☆♪♡」――名乗る名は「パンティージャムジャムおじさん」。 子供たちは笑いながら彼の後についていき、歌を真似し、踊り、列は少しずつ長くなる。 そして翌朝、街は初めて気づく。昨夜の歌が、ただの遊びではなかったことに。

緑色の友達

石河 翠
児童書・童話
むかしむかしあるところに、大きな森に囲まれた小さな村がありました。そこに住む女の子ララは、祭りの前日に不思議な男の子に出会います。ところが男の子にはある秘密があったのです……。 こちらは小説家になろうにも投稿しております。 表紙は、貴様 二太郎様に描いて頂きました。

雪の降る山荘で

主道 学
児童書・童話
正体は秘密です。 表紙画像はフリー素材をお借りしました。 ぱくたそ様。素敵な表紙をありがとうございました。

チョココロネなせかい

もちっぱち
児童書・童話
お子さん向けのお話です。 これを読んだらきっと チョココロネを食べたくなるかも⭐︎ 不思議な世界にようこそ。 読み聞かせにぜひご覧ください^_^ 表紙絵… 茶冬水 様 文… もちっぱち

かぐや

山碕田鶴
児童書・童話
山あいの小さな村に住む老夫婦の坂木さん。タケノコ掘りに行った竹林で、光り輝く筒に入った赤ちゃんを拾いました。 現代版「竹取物語」です。 (表紙写真/山碕田鶴)

ぼくのだいじなヒーラー

もちっぱち
絵本
台所でお母さんと喧嘩した。 遊んでほしくて駄々をこねただけなのに 怖い顔で怒っていたお母さん。 そんな時、不思議な空間に包まれてふわりと気持ちが軽くなった。 癒される謎の生き物に会えたゆうくんは楽しくなった。 お子様向けの作品です ひらがな表記です。 ぜひ読んでみてください。 イラスト:ChatGPT(OpenAI)生成

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

処理中です...