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静かの夜に

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 好きな人とセックスがしたくなる気持ちって、多分、男も女も関係ない。
「ん、……ん」
「すげえいい眺め」
 それは単純に快楽を求めている訳じゃなくて、心の奥底から湧き上がってくる「好き」の気持ちを、体で伝え合いたいからだ。
 裸で抱き合って、恥ずかしいところを見られて、触れ合って、口付ける。そんなことがしたいと思えるのは、心から好きになった相手だけだ。
 蒼汰だから、こんな気持ちになるんだ。
「は、あぁっ……、あ、ん……」
「翼、声」
「んっ、ん……出ちゃ、……」
 蒼汰の上で脚を開き、屹立したそれを扱かれる。甘い刺激が体中に広がり、声を我慢する代わりに涙が零れた。
「そう、た……」
「どうした。イきそうか?」
 ふるふると頭を横に振り、唇を噛む。
「この状態でイッたら俺の顔に全部かかりそうだな。せっかく風呂入ったけど」
「やっ、……」
 急に腕を引かれて抱き寄せられ、ぐるりと体勢が入れ替わる。蒼汰が上から俺の目を間近に覗き込み、何度も頬や口元にキスを繰り返した。弾くような、啄むような優しいキス。それは蒼汰の愛を感じられる柔らかなキスだった。
「蒼汰、……」
 お返しに俺も蒼汰の唇に軽く口付け、じれったそうに俺の体を押している蒼汰の男の証に指を絡ませた。
「……翼、エロい子になっちまって」
「そ、そういうこと言うなってば」
「でも凄げえ嬉しい。翼がしてくれることなら何でも嬉しいぜ」
 そう言って、蒼汰もまた俺を握りしめた。
「あっ……」
 お互い握り合った手の中のそれを愛撫し合い、見つめ合って息を弾ませる。場所が場所だけに、初めて蒼汰とホテルに行った時よりも俺の胸は高鳴っていた。だけどあの時とはまた違って、ゆっくりと、少しずつ確かめ合うように触れ合うことが出来るのは嬉しかった。
「あぁっ、……蒼汰、……」
「ん」
 昂って声が出てしまう度、蒼汰が俺の唇を軽いキスで塞いでくれた。しばらくそんなことを繰り返した後で離れた蒼汰の手が、俺の内腿をゆっくりと押し上げる──
「翼、息吐いて」
「う、ん……」
 蒼汰が目を伏せ、開いた俺のそこへと腰を入れてきた。蒼汰自身の体液を入口へ直接塗り付けられる。無理矢理に押し広げられる圧迫感は、初めての時よりダイレクトに伝わってくるようだった。
 あの時は余裕が無かったから蒼汰に任せきりだったけど、今はほんの少しだけ……力を抜いて受け入れる準備に集中することが出来る。
「ん、あ……、はぁ……」
 口から変な声が漏れ、思わず手で塞いだ。蒼汰はまだ俺を貫こうとせず、ゆっくり、ゆっくりと俺の中を押し進んでいる。
「そう、た……」
「っ……」
 声が、体が震える。蒼汰の眉間に皺が寄る。
 蒼汰と繋がれる悦び。心地好くて切なくて、……蒼汰が好きで堪らない。
「あ……」
 腹の中をグッと押される感覚に触れた瞬間、俺の頬を大粒の涙が伝った。
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