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第9話 ウサギとネコのお泊まり会
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しおりを挟む「そうだよね、うんうん。分かるよー。……え? でも、どうだろう……」
昼過ぎからずっと長電話をしている炎珠さん。口調から察するに仲の良い友人と喋っているというのは分かるけれど、失礼ながらこれまで刹と二人で閉鎖的に暮らしていたと思っていた炎珠さんに、長電話するほどの友達がいたなんて何だか意外だ。
「あ、それなら安心かも。……でも悪くない? 迷惑かけちゃう気がするなぁ」
通販で山ほど買ってもらった駄菓子の一口チョコを頬張りながら、俺はキッチンカウンターの横で受話器を肩に挟んでいる炎珠さんを見ていた。
「ありがとう! それなら那由太も喜ぶよ!」
「っ……!」
そこへ突然俺の名前が出てきて、瞬間的に全身から冷や汗が噴き出る。
俺のことを知っている「友人」といえば、もうあの人──幸嶋栄治しかいない。
「うん、それじゃあまた詳しいことは後で。ありがとう幸嶋さん、またね!」
受話器を置いた炎珠さんが、「はぁ良かった」と心底から安堵したような溜息をつく。
「電話の相手、幸嶋さんだったんですね」
「ん? そうだよ。ちょっと相談乗ってもらいたいことがあったからさ」
「『俺も喜ぶ』……っていうのは?」
我慢できなくて訊ねると、炎珠さんが歯を見せて笑った。いつもの「ディヒヒ」な笑い方だ。
「それより、……刹~!」
リビングのドアから顔を出し、二階の自室にいる刹に向かって叫ぶ炎珠さん。
「那由太のことホテルに預けなくても良さそうだよ! 幸嶋さんがシッターしてくれるって! だからもうホテル探しは必要ないよ~!」
ホテルに預ける? シッター?
何が何だか分からず、俺は目を白黒させながら炎珠さんのシャツを引っ張った。
「どういうことですか? 二人、どっか出掛けるんですか?」
「へへ。ちゃんと説明するから可愛い顔であたふたしないで、那由太。ジュース出してソファで飲んでてよ」
妙にテンションの高い炎珠さんに疑問を感じつつも、俺は言われた通り冷蔵庫から炭酸水とオレンジジュースを取り出した。これを割って飲むのが最近のお気に入りだ。
「幸嶋さんが来るのか。一人で? んな訳ねえな、華深もか」
階段を下りてきた刹が真剣な声で炎珠さんに言っている。
「三日も任せちまうのは流石に甘え過ぎなんじゃねえのか。それならホテルの部屋取った方が」
「でも逆に、三日も那由太を一人にさせられる? いくらセキュリティ対策が万全なホテルの部屋でも、そこから一歩外に出ればどんな危険があるか分からないんだよ? だったら信頼できる人に見ててもらった方がいいと思うけど」
二人は小声で言い合っているが、俺には丸聞こえだ。
どうやら何かの理由で三日ほど家を留守にしなければならない炎珠さんと刹が、その間、俺をどうするかで揉めているらしい。幸嶋さんと華深が二人の代わりに泊まりに来るか、はたまたホテルに預けるか。二人はそれを「真剣に」話し合っているのだ。
……三日間の留守番を一人で出来ない二十歳の男がこの世に存在すると、二人は本気で思っているのだろうか。
本当に申し訳ないけれど正直言って、心配性とか過保護とかの領域ではないような気がする。二人は俺のことを本物の猫だと思っているのではと疑ってしまうレベルだ。
「………」
まあそうは思っていても結局、二人の気の済むようにさせるしかないんだけれど。
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