フェリーチェの世界

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僕たちの存在①

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あれから少しして僕は750番からここで何をしているかの話を色々聞いた。
なんでもここは沢山の実験体達を育てていて、僕が生まれたのもこの部屋らしい。
「750番、どうして『ヒト』はあんなにも実験体を作ってるの?」
「さぁ、私には見当もつきませんね。…ただひとつ判る事は僕達は失敗作で、君は成功作と言うことだけです」
「僕と皆で何が違うの?」
「私には分かりません」
「ふぅん…」
物知りな750番でも知らないと言う事は僕達実験体にはきっと教えられていないのだろう。
(今度レオが来たら聞いてみようかな…)
レオはあれから本当に僕達の姿を見に来るようになった。
色々な事を教えてくれるのでレオとの話は凄く楽しい。
「またあの『ヒト』に聞くつもりなんですか?」
不意に750番が聞いてきた。
「うん、それがどうしたの?」
「………」
750番は俯いたまま続きを話そうとしない。
「750番?」
「…どうしては私の台詞です」
少し強めに言われて思わず固まってしまう。
「777番、776番を殺したのは誰ですか?人ですよね。貴方が話しているレオも人なんですよ。もしかしたら裏があるかもしれないのにどうしてそこまで信用できるのですか?」
「それは…」
750番の言っている事はもっともだ。
『ヒト』は、怖い。
776番を殺したのも、他の実験体を殺したのも間違いなく『ヒト』なのだ。
750番はその事を僕よりも理解している。
だけど…
「でも…レオはあの時僕達を助けてくれた。それに『ヒト』が僕達より上の存在なら、僕達を騙してまで近づく必要なんてないはずだよ。だから…」
じっと僕の方を見る750番の視線に思わず言葉が詰まってしまう。
「…だから……僕は信じたいんだ」
そこまで言い終わると750番は「はぁ…」と溜息をつき、ただ一言「そうですか」とだけ言った。

2日後、レオが僕達の様子を見にまた管理場へ来てくれた。
「レオ!」
「久し振りだな2人とも」
「………」
750番はやっぱり少し警戒しているのか話す事はせずただ見つめているだけだ。
「ぁ、僕ね、レオに聞きたいことがあったんだ」
「ん?どうした?」
チラッと750番の方を見る。
750番は僕の方を見ず目線を逸らしている。
「……あの…」
レオに聞こうと思っていたのに躊躇してしまう。
750番の言う通り、レオも『ヒト』なのだ。
これを聞いたらもう僕達に優しくしてくれなくなるかもしれない。
もしかしたら、これは僕たちが知ってはいけないことなのかもしれない。
だってレオはここの『研究員』だから…僕達を作った『ヒト』だから…。
僕達に優しくしているのもただの気まぐれかもしれない。
僕がぐるぐると考えていると、750番が口を開いた。
「何故、貴方達人は私達を作るのですか」
僕は驚いて750番とレオの顔を交互に見た。
レオは凄く驚いた顔をしていたがやがて険しい顔になっていく。
(あぁ…やっぱり聞いてはいけなかったのかもしれない…750番が僕のせいで罰を受けてしまったら…)
そう考えているとレオが口を開いた。
「………それを知ってどうする?」
「………」
750番は口を開かない。
重い空気が流れる。
沈黙が5分くらい続いただろうか…不意にレオが話し出した。
「…まぁ…お前達からしたら気になる事ではあるよな」
そう言ってレオは思い口を開いてくれた。
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