[完結]サクリファイス~主従の契約

くみたろう

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プロローグ

サクリファイス

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「……………この子にする」

「いいのか?」

「………うん、 この子がいい」

薄暗く鉄格子で仕切られたその場所には、 黒い翼を小さく折りたたみ隅に座るまだ12歳のあどけない少女。
俯き体育座りしている少女は小さく顔を上げた。
紫の瞳が真っ直ぐ少女を見つめる。
金の髪に紫の瞳。そして、 少女とは正反対の純白の翼。
目が合い優しく微笑まれ、 少女は困惑した。


この人が………私のマスター………


「出なさい」

「…は、 …い」

ゆっくりと体を動かし立ち上がった少女は、 鉄格子で仕切られた冷たい部屋を出た。
先程の少年と、 その親だろう男性。
そしてここの建物の人だろう、 鉄格子の鍵を開けた男性に指示され少女は別の部屋へと連れられる。


「では、 契約書にサインをよろしいですか?」

「ああ………さぁ、 サインして」

「うん……」

テーブルに置かれた少し日焼けした紙が1枚。
少年は椅子に座りそれに署名する。
すると、 書いた紙は消え去り同じ模様の入った腕輪と首輪が現れた。
男は腕輪を取り少年の手首に付ける。
小さな針が一瞬飛び出て腕輪に血が付着した。

痛みに顔を一瞬歪めるが、 男は満足そうに笑って頷く。
次に首輪を手に取り、 腕輪に触れさせると強い光を放つ。
少年は目を細めてその様子を見ていた。

「………よし、 いいですね。」

首輪を確認した男は振り返り少女を見た。
手招きしてきた男に従い少女は傍に行く。
背中の中ほどまで伸びた茶色の髪を手で払った男は首に先程の首輪を付ける。

ガチン……と音を立てて付いた首輪からも針が出て少女の首に刺さった。

「いたっ……!」

「我慢なさい」

首輪から出た針から血液が流れ少女の首筋から体内に入っていく。
この血液は少年の物だ。


「………これでサクリファイス契約は終了です。ご成人おめでとうございます」

「ありがとう」

「では、 最後にもう一度サクリファイスの注意点をお話します。」









ここはファンフェイン。
2種族が存在する世界である。

白い翼を持つ天使族のリアルド
黒い翼を持つ悪魔族のジーヴス

リアルドが完全なる上位種でジーヴスはリアルドに従う存在。
リアルドとジーヴスが初めて生まれたその日から、 その均衡は崩れることは無い。
刷り込みのようにジーヴスはリアルドに従うのだと遺伝子がそう作られているのだ。

リアルドは15歳の誕生日を迎えた日に成人の儀式をする。
それがサクリファイスだ。
サクリファイスとは、 リアルドが1人のジーヴスを選び従僕にする儀式。
ジーヴスを選び契約する事により、 成人する。

この契約とは


「腕輪と首輪とが繋がり主人であるあなたの命令は絶対服従となります。命令に背いた場合は首輪から電流が流れます」

「はい」

「扱いはどの様になさっても構いません。これは任意ではありますが、 20歳を超えたら繁殖の協力をお願い致します。」

「………考えておきます」

「はい。………あとは…ジーヴスが死亡した時はなるべく早く、 次のジーヴスを受け取りに来てください。」

「………はい。」

「ジーヴスの教育は主人の勤めでございます。一切のジーヴスとしての教育は行っていません。よろしいですね?」

「はい。」


「………では、 お話は以上です。良き大人におなりください。」

「はい、 ありがとうございます」

少年は、 白い翼を持つ男に頭を下げてから少女を見た。
少女も黙って少年を見る。

「………行こう、 僕のジーヴス」

「………はい」








サクリファイス
それは、 ジーヴスにとって一生を仕える主人が決まる瞬間である。

世界は不平等だ。
常に笑う存在がいて、 常に付き従う存在がいるそんな世界。
絶望する者もいる、 泣きわめく者もいる。
全てに優しい世界ではない。

この優しくも厳しい世界で少女は初めて主人を得て命尽きるまで生きていく。






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